ブリストル・マイヤーズ株式会社
大塚製薬株式会社

医療関連事業
2011年6月16日

抗悪性腫瘍剤 「スプリセル®錠20mg、スプリセル®錠50mg」
(一般名:ダサチニブ水和物)
慢性骨髄性白血病のファーストライン治療薬として承認
~未治療の慢性骨髄性白血病患者の、新たな治療選択肢~

ブリストル・マイヤーズ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:エマニュエル・ブリン)と大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岩本 太郎)は本日、2011年6月16日に、抗悪性腫瘍剤スプリセルについて、慢性骨髄性白血病のファーストライン治療薬としての新たな効能の承認を取得したことをお知らせします。また、用法・用量に関して、これまでの1日1回100mgの経口投与に加え、慢性期慢性骨髄性白血病患者においては、患者の症状に応じて1日1回140mgまで増量が可能となることも承認されています。

スプリセルは慢性期、移行期、急性期の「イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病」及び「再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」の治療薬として、2009年3月に日本で発売開始され、2011年1月よりブリストル・マイヤーズ株式会社と大塚製薬は、同剤の共同情報提供活動(コ・プロモーション)を行っています。スプリセルは発売以来、慢性骨髄性白血病のファーストライン治療薬として使用されているイマチニブに対し、効果が不十分、または副作用のために治療を継続できない(忍容性のない)慢性骨髄性白血病患者や、他に有効な治療法がほとんどないフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病患者に対し、医療上の必要性が高い薬剤として、使用されてきました。

今回取得した慢性骨髄性白血病のファーストライン治療における効能は、国際共同臨床試験として実施されたDASISION(Dasatinib versus Imatinib Study in Treatment-Naive CP-CML Patients)試験の結果に基づいています。DASISION試験は、初発の慢性期慢性骨髄性白血病患者を対象に、スプリセル100 mgの1日1回食事と服用の時間制限なしでの投与とイマチニブ400 mgの1日1回の投与を比較した非盲検、ランダム化、第III相国際共同臨床試験です。この試験には、519人(うち日本人49人)の患者が登録され、259人にスプリセルが、260人にイマチニブがランダムに割りつけられました。

DASISION試験では、イマチニブ投与群およびスプリセル投与群の両群での、試験開始から12カ月以内の確定した細胞遺伝学的完全寛解(CCyR*1)および分子遺伝学的寛解(MMR*2)を評価し、スプリセル群でより早期に高い寛解率が達成されました。主要評価項目である、12カ月以内の確定したCCyR(確定したCCyR: 28日間以上の間隔での連続したCCyR)を達成した患者の割合は、イマチニブ群の66%に対し、スプリセル群では77% (p=0.007)でした。また、時期を問わず、MMRを達成した患者の割合はスプリセル群で52% 、イマチニブ群で34%でした(p<0.0001)。確定したCCyRに到達するまでの期間の中央値は、スプリセル投与群(199人)で3.1カ月、イマチニブ投与群(177人)で5.6カ月でした。また、MMRに到達するまでの期間の中央値は、スプリセル投与群(135人)で6.3カ月、イマチニブ投与群(88人)で9.2カ月でした。

また、2010年12月に米国フロリダ州オーランドで開催された米国血液学会(American Society of Hematology)第52回年次総会では、同試験の日本人におけるサブ解析結果が発表されています。

今回のスプリセルの新効能の承認を受け、ブリストル・マイヤーズ株式会社代表取締役社長兼CEOエマニュエル・ブリンは、「これまで選択肢が限られていた初発の慢性骨髄性白血病の治療において、今回のスプリセルの承認により、患者さんにとって重要な治療の選択がさらに広がったことを非常に嬉しく思います。DASISION試験で示されたスプリセルの有効性と安全性の情報を基に、スプリセルが個々の患者さんの状態に合わせた治療に貢献すべく、当社と大塚製薬の2社で協力し、情報提供活動に尽力してまいります」と述べています。

また大塚製薬代表取締役社長岩本太郎は、「DASISION試験は、スプリセルが持つ薬剤としての価値を世界に示すとともに、今回日本における慢性骨髄性白血病の未治療の患者さんへの適応拡大の承認を得て、慢性骨髄性白血病の治療の進展へとつながりました。この新たな治療の選択肢を、両社で協力して伝えていくとともに、更なる価値の向上を目指し、継続した研究開発に努めてまいります」と述べています。

スプリセルに関しては、2009年に日本で発売されて以来、使用成績調査(全例調査)を実施しています。本調査が終了するまでの期間は、スプリセルの使用が可能となる初発の慢性骨髄性白血病患者に対しての症例登録も行われます。

スプリセルは、2006年6月に米国で承認されて以来、ヨーロッパ、日本を含む、60カ国以上で承認され、販売されています。ファーストライン治療に関しては、米国で2010年10月28日に、欧州では2010年12月6日に承認されています。


*スプリセルは、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社によって創薬、開発されました。スプリセルの概要に関しては、以下の「ご参考」をご確認ください。

  • *1:細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)とは、骨髄細胞の細胞遺伝学的評価で慢性骨髄性白血病に特異的なフィラデルフィア染色体陽性の分裂中期の細胞がない状態と定義されます。
  • *2:分子遺伝学的寛解(MMR)とは、末梢血の定量核酸増幅法(real-time PCR)で測定した、慢性骨髄性白血病の原因となるBCR-ABL遺伝子の発現レベルが0.1%以下(3 log以上の減少)と定義されます。

【ご参考:スプリセルについて】

スプリセルは、新規構造のチロシンキナーゼ阻害剤であり、がん細胞の増殖に関与する5種類のチロシンキナーゼ/キナーゼファミリー(BCR-ABL、SRCファミリーキナーゼ、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)受容体)に対するATPの結合を競合的に阻止し、がん細胞増殖シグナルの伝達を阻害することにより、抗腫瘍効果を発揮します。

【ご参考:スプリセルの概要(下線部追加・変更)