大塚製薬株式会社

医療関連事業
2013年3月26日

大塚製薬とルンドベック社 グローバル中枢薬アライアンス事業を拡大
アルツハイマー病の新規化合物 選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗剤
Lu AE58054の共同開発・商業化を合意

  • Lu AE58054の臨床第II相試験の結果は、今年7月にボストンで開催されるAAIC(アルツハイマー病協会国際会議)において発表予定
  • 本年から、2,500人以上の患者さんが参加する臨床第III相試験を開始
  • 大塚製薬は契約一時金として150百万USドル(142.5億円)をルンドベック社に支払う
  • 大塚製薬とルンドベック社のグローバル中枢薬事業でルンドベック社側の3つの化合物を共同開発、共同販売する契約において初のプロジェクトとなる

大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岩本太郎、以下「大塚製薬」)とH.ルンドベックA/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、CEO:ウルフ・ウインバーグ、以下「ルンドベック社」)は、現在アルツハイマー病治療薬として開発中の選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗剤「Lu AE58054」の開発権および販売権について契約を締結しました。本契約に基づき、大塚製薬はルンドベック社より米国、カナダ、東アジア、欧州主要国、北欧における「Lu AE58054」共同開発および共同販売の権利を得ました。

ルンドベック社は、契約一時金として150百万USドル(142.5億円)を受け取ります。また、ルンドベック社は、開発・承認ならびに売上達成金として最大で675百万USドル(641.25億円)受け取ることができます。その他、詳細な条件に関しては開示していません。

大塚製薬 代表取締役社長 岩本太郎は「大塚製薬とルンドベック社のグローバル・コラボレーションは、Lu AE58054が加わることによってますます強固なものとなります。Lu AE58054の開発を進めることは、アルツハイマー病を始めとする非常に難しい中枢領域疾患の治療に希望をもたらします。この化合物に共に取り組むことにより、両社のシナジーはより強化され、我々が手を取り合って切磋琢磨し合うことでより良い健康への貢献が期待されます」と述べています。

ルンドベック社 最高経営責任者 ウルフ・ウインバーグは「アルツハイマー病には、世界的にも高齢化が進むなかで顕著なアンメット・メディカル・ニーズがあります。大塚製薬とルンドベック社が協力することで、両社の開発能力、販売経験、事業領域の面からLu AE58054の可能性を最大限高めていけると確信しています」と述べています。

2013年の半ばにはLu AE58054の重要な臨床プログラムが開始される予定です。この中には何本かのグローバル臨床試験が含まれ、2,500名以上の登録を予定しています。最初の臨床第III相試験では、欧州、北米、南米、オーストラリアの軽度から中等度のアルツハイマー病の930名の登録を予定しており、Lu AE58054はドネペジルと併用して行われます。後続する臨床試験も、2013年末までには開始する見込みです。

Lu AE58054は、2012年5月に278名を登録した24週間のランダム化プラセボ比較の臨床第II相試験において用量設定の主要評価項目を達成しました。この試験では、ドネペジルを服用している中等度のアルツハイマー病を対象にLu AE58054を併用しています。Lu AE58054群では、プラセボ群と比較してアルツハイマー病における認知機能の改善がADAS-cogスコアからみられました。また、試験で設定されたLu AE58054の設定用量で、総合的に忍容性の高さが認められました。この臨床第II相試験の結果は、2013年7月13日~18日にボストンで開催されるAAIC(アルツハイマー病協会の国際会議)にて発表される予定です。

大塚製薬とルンドベック社のグローバル・アライアンスにおける進捗状況
中枢神経領域における研究開発を断念する企業も少なくない中で大塚製薬とルンドベック社は、現在までに臨床第III相試験段階にあるBrexpiprazoleを含む5つの研究開発製剤など、精神疾患を抱え苦しむ患者さんへの貢献が期待される有望な治療薬の開発と投資を進めて参りました。
2011年11月のグローバル・アライアンス契約を締結後の進捗については次の通りです。

  • 2013年3月、セロトニン5-HT6受容体拮抗剤Lu AE58054の開発・販売権の契約締結
  • 欧州におけるエビリファイの共同プロモーションを2013年4月より開始
  • 2013年3月、米国でABILIFY MAINTENA(エビリファイ メンテナ)の発売
  • 2012年12月、欧州におけるエビリファイ持続性注射剤の承認申請
  • Brexpiprazoleの2つの臨床第III相試験の開始
  • ABILIFY MAINTENA(エビリファイ メンテナ)の2つの臨床第III相試験の開始
  • 2012年5月のAPA年次総会にてABILIFY MAINTENA(エビリファイ メンテナ)の臨床第III相試験の結果発表
  • 1USドル=95円換算

参考資料

Lu AE58054について

Lu AE58054は、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗剤です。セロトニン5-HT6受容体は、脳の認知機能に関わる領域に分布しています。セロトニン5-HT6受容体の拮抗は、アルツハイマー型認知症の治療に有益な可能性があるとの見解から、ルンドベック社は2009年12月より24週間の臨床第II相試験(アルツハイマー型認知症におけるLu AE58054の併用療法の検証)を実施していました。

アルツハイマー型認知症について

アルツハイマー型認知症は、進行性の脳疾患で、脳機能が次第に低下していきます。65~70歳以上の高齢者に一般的にみられる病気です。アルツハイマー病の患者さんは、記憶、思考、機能や行動が悲惨なほど変化して、時間の経過とともに悪化し進展していきます。この変化はだんだんと日常生活に強く影響を与え、1人で生活することができなくなり、最後には生活の全てに介護を要します。アルツハイマー病は、また介護者に大きな影響を与えます。大抵の介護者は、自宅で介護を家族から受けているのです。家族にとっては、精神的、身体的な負担となっています※1
アルツハイマー病は、脳の細胞障害や細胞死と関連しており、明らかに脳の萎縮と神経伝達のアンバランスがおきています。脳細胞が減少するときに、脳内の"プラーク"や"神経原線維変化"と呼ばれる特徴的な老廃物が蓄積します。
世界中に3,600万人の認知症の患者さんがいますが、その内の2,800万人もの患者さんが診断を受けておらず、治療、情報、介護が行き届いていていません。毎年、推定で460万人が新しく認知症と診断されています※2。高齢者の人口割合が増えることで、認知症となる患者数は20年ごとにほぼ2倍にとなり、1億1,500万人にもなる予測となっています※3
アルツハイマー病は、認知症として一般的な病気となっており、50~70%が罹る病となっています※4。世界の認知症に対する費用(2010年は6,040億USドル)は、国内総生産(GDP)の1%以上となっています。

  • ※1 Georges J, Jansen S, Jackson J, et al. Alzheimer's disease in real life -- the dementia carer's survey. Int J Geriatr Psychiatry 2008; 23 (5): 546--551.
  • ※2 Ferri CP, Prince M, Brayne C, et al. Global prevalence of dementia: a Delphi consensus study. Lancet 2005; 366 (9503): 2112--2117.
  • ※3 Alzheimer Disease International. World Alzheimer Report 2011. The benefits of early diagnosis and intervention. Published by Alzheimer's Disease International (ADI), September 2011.
  • ※4 Alzheimer's Association. Basics of Alzheimer's disease: what it is and what you can do. 2010. http://www.alz.org/national/documents/brochure_basicsofalz_low.pdf. Accessed 30/09/11.

会社概要

H. ルンドベック A/S (H.Lundbeck A/S)