大塚製薬株式会社

医療関連事業
2013年6月3日

治療薬の無い、希少疾病への取り組み
自社開発薬「トルバプタン」
常染色体優性多発性嚢胞腎の適応で国内初の承認申請

  • 自社創製した「トルバプタン(一般名)」1は、2012年に常染色体優性多発嚢胞腎(ADPKD2)の1,400名以上の患者さんを対象に世界15カ国で行われた国際共同試験結果として、主要評価としての腎臓の増大と腎機能の低下に対する抑制効果を世界の医学界で高く評価されているニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌で報告。2013年4月には米国食品医薬品局(FDA3)は、ADPKDの承認申請を受理し、完治が難しい疾患に対して高い治療効果が期待される新薬を優先的に審査するファストトラックレビューに認定。この度、日本では希少疾病用医薬品として承認申請
  • ADPKDは、腎臓に多数の嚢胞ができ腎臓が数倍にも大きくなる病気で、高血圧や腎臓の痛みなどの症状が特徴で、次第に腎機能が低下し腎不全、最終的には透析・腎移植に至る遺伝性の疾患
  • 遺伝性の疾患のなかでも患者さんが多く、1,000~4,000人に1人が患っていると推定され、日本には31,000人*4の患者さんがいる。これまでに有効な薬剤がなく、腎臓の嚢胞の増殖と増大を抑え、疾患の進行を遅らせる薬剤が求められている

大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岩本太郎)は、常染色体優性多発性嚢胞腎(以下、「ADPKD」)の治療薬として「トルバプタン(一般名)」の国内承認申請を5月に行いました。
2013年4月に行った米国FDAの新薬承認申請受理に続く2カ国目の申請となり、承認されれば、ADPKDに対する適応を持つ世界初の治療薬となります。米国FDAは、「トルバプタン」を希少疾病用医薬品に指定しADPKDの治療薬としてファストトラックレビューに認定しています。国内では、2006年に「多発性嚢胞腎の進行抑制」にて希少疾病用医薬品の指定を受けています。

「トルバプタン」は大塚製薬の研究部門統轄フェローの藪内洋一と多くの人の努力のもと26年をかけて開発した薬剤で、バソプレシンV2受容体拮抗作用により水だけを出す水利尿薬として世界各国で使用されている経口治療薬です。一方で、このトルバプタンがcAMP産生を抑制することによりADPKDの腎嚢胞の増殖・増大を抑制することが発見されて以来(2003年)、大塚製薬はもう一つの新しい挑戦として、希少疾病である常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の治療薬開発に米国メイヨー・クリニックのヴィセンテ E. トレス教授を中心とした世界の治験医師とともに取り組んでおり、世界15カ国で治療薬の同時開発を行ってきました。

ADPKDは、腎臓に多数の嚢胞ができ腎臓が大きくなる病気で、高血圧や腎臓の痛みなどを特徴として、次第に腎機能が低下し最終的に腎不全に至る遺伝性の疾患です。遺伝性の疾患のなかでも頻度が高く1,000~4,000人に1人が患っていると推定され、日本には31,000人※4の患者さんがいます。

ADPKDに対しては、高血圧や腎臓の痛みを抑えるなどの対処療法の薬剤以外に有効な治療薬がなく、ADPKDの進行を抑制する薬が求められています。
「トルバプタン」は、選択的にバソプレシンV2-受容体を阻害することによってcAMPの産生を抑制し、腎臓の嚢胞の増殖と増大を抑え、疾患の進行を遅らせると考えられています。

  • ※1 販売名は未定です
  • ※2 Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease
  • ※3 Food and Drug Administration
  • ※4 Higashihara E, et al. Prevalence and renal prognosis of diagnosed autosomal dominant polycystic kidney disease in Japan. Nephron.1998;80:421-7.

なお、今回申請されたデータには昨年11月にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載されたTEMPO試験の結果が含まれています。

TEMPO試験

この試験は、世界15カ国1,400名以上のADPKD患者さんを対象に3年間にわたりトルバプタンもしくはプラセボが投与された国際共同試験です。本試験では、ADPKDに対する有効性と安全性およびADPKDに伴う合併症の評価が行われました。その結果トルバプタンは、プラセボと比較し腎臓の容積の増加率を約50%有意に抑制することが示されました。トルバプタンは、選択的にバソプレシンV2-受容体を阻害することによって、腎臓の嚢胞の増殖と増大を抑え、疾患の進行を遅らせると考えられています。