大塚製薬株式会社

医療関連事業
2016年4月21日

平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞を2つ同時に受賞 新規結核治療薬および水利尿薬・ADPKD治療薬の開発

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、「多剤耐性結核菌に有効な新規抗結核薬デラマニドの研究開発」および「バソプレシンV2-受容体拮抗薬 トルバプタンの開発」に関し、平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。4月20日に文部科学省で行われた表彰式において、当社研究者に賞状が授与されました。

受賞者、受賞理由

多剤耐性結核菌に有効な新規抗結核薬デラマニドの研究開発

受賞者
松本 真   医薬品事業部 シニアディレクター
橋詰 博之  医薬営業本部 プロダクトマネージメントグループPMM
佐々木 博文 創薬化学研究所 副所長 兼 プロジェクトOPC
壷内 英継  Compliance & Ethics部 課長
川﨑 昌則  抗結核プロジェクト 次長
左から:壷内英継、佐々木博文、松本真、橋詰博之、川﨑昌則
左から:壷内英継、佐々木博文、松本真、橋詰博之、川﨑昌則

世界人口の約1/3が結核菌に感染し、毎年約960万人が発症しています。現在、年間48万人の多剤耐性結核患者が発症しており、超多剤耐性結核患者では治療成功率が22%となり、35%の患者が死亡しています。また、リファンピシンが開発されて以来、40年以上新規抗結核薬は開発されていませんでした。そのため、これらの耐性菌にも有効な新規治療薬の開発が望まれていました。
大塚製薬は、既存の抗結核薬にはない新規構造(ニトロイミダゾオキサゾール)を有し、既存の抗結核薬に耐性となった結核菌にも感受性の結核菌と同様に強い効力を示す新規抗結核薬を創製しました。本開発により、多剤耐性結核患者において、既存療法より早期に喀痰中の多剤耐性結核菌が陰性化し、死亡率が有意に低下することが確認されました。その結果、2014年に欧州、日本、韓国で成人の多剤耐性肺結核の治療薬としての承認を得ました。
本成果は、既存薬に耐性を獲得し、有効な治療法がなかった多剤・超多剤耐性結核患者に対して有効な新規治療選択肢の提供を可能にし、早期に菌が陰性化することから新たな感染を広げないことが期待できるなど、結核医療に寄与していることが評価され、今回の受賞となりました。

バソプレシンV2-受容体拮抗薬 トルバプタンの開発

受賞者
山村 由孝  医薬品事業部 首席研究員
小川 英則  創薬化学研究所
藤木 浩之  先端創薬研究所 薬理研究部 主任研究員
藪内 洋一  (株)大塚製薬工場 非常勤顧問
左から:藤木浩之、山村由孝、藪内洋一、小川英則
左から:藤木浩之、山村由孝、藪内洋一、小川英則

ナトリウム排泄型利尿薬は、心不全・肝硬変の体液貯留の基礎治療薬として広く使用されてきましたが、血清電解質や腎機能に与える影響から、異なる作用機序をもつ利尿薬が望まれていました。また、腎臓に多数ののう胞が進行性に発生・増大し、70 歳までに約半数の患者が末期腎不全に至る遺伝性腎疾患である常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)には、有効な治療薬がありませんでした。
大塚製薬は、腎臓での水再吸収を促進するバソプレシンに着目し、そのV2-受容体に選択的な拮抗薬であるトルバプタンを創製しました。本開発により、電解質排泄の増加を伴わず水のみを排泄させることが可能となりました。またバソプレシンがADPKDののう胞増大に大きく関与していることが明らかとなり、初めて多発性のう胞腎の腎増大を抑制、病態進行を抑制することも可能となりました。
本成果は、水利尿という新しい作用機序をもつトルバプタンを、心不全・肝硬変における体液貯留の治療に新たな選択肢を医療現場に提供するとともに、ADPKDに対して腎臓ののう胞増大を抑制する世界初の治療に寄与していることが評価され、今回の受賞となりました。

文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)について

文部科学大臣表彰は、「科学技術に関する研究開発、理解促進等において顕著な成果を収めたものについて、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする」もので、この中の科学技術賞(開発部門)は、「我が国の社会経済、国民生活の発展向上に寄与し、実際に活用されている(今後活用が期待されるものを含む)画期的な研究開発もしくは発明を行った者を対象とする」ものです。