大塚製薬株式会社

医療関連事業
2015年7月16日

大塚製薬 多剤耐性肺結核治療薬「デラマニド」 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌(Letter to the Editor)に超多剤耐性結核に対する有効性データを掲載

  • 「デラマニド(一般名)(製品名:欧州、DELTYBA/日本、デルティバ®)」の臨床試験(フェーズ2b)のデータの解析から、WHO(世界保健機関)が推奨する多剤耐性結核の標準治療に上乗せして「デラマニド」を服用することにより、治療が複雑で根治が難しい超多剤耐性結核に有望であることが示された
  • 今回の解析では、WHOの標準治療に「デラマニド」を上乗せした群では、2カ月後の結核菌陰性化率が標準治療にプラセボを上乗せした群と比較して高く、さらに6カ月間上乗せした群では2カ月間のみ上乗せした群と比較して死亡率が低下した
  • WHOによると2014年までに、100カ国で超多剤耐性結核の感染例が報告されている

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口 達夫、以下「大塚製薬」)は、「デラマニド」の有効性を評価した臨床試験(フェーズ2b)後のサブセット解析で、超多剤耐性結核(XDR-TB)の治療に対するデータがニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌(Letter to the Editor)に掲載されましたのでお知らせします。

  • extensively drug-resistant tuberculosis

Letter to the Editorの内容

WHOが推奨する標準治療(optimized background regimen: OBR)に上乗せして「デラマニド」を2カ月間服用することで、喀痰中結核菌の消失(sputum culture conversion: SCC)がプラセボを上乗せした群と比較して向上していたことが確認されました。SCCはその患者から他の人への結核の感染性がなくなったことを示す指標です。また、その後のオープン試験での継続治療により、最終的に治療が成功する確率が2倍以上向上する可能性(7/16, 43.8% vs. 1/10, 10%, p=0.10)が示されました。さらに、「デラマニド」を6カ月以上服用した群では、服用期間が2カ月以下であった群と比較して、死亡率が低かったことも確認されました(0/17, 0% vs. 2/9, 22.2%, p=0.11)※1

本試験の治験責任医師の1人であり、リガ・イースト大学病院(ラトビア)の結核専門医のアンドラ・シールレ博士は、「超多剤耐性結核は、死亡率が非常に高く、治療が難しい結核なので、もっと多くの効果のある新薬が早急に必要です。今回の解析は、『デラマニド』が現在の治療を改善し得る可能性があることを示しています」と述べています。

大塚製薬 専務執行役員、抗結核グローバルプロジェクトリーダーの吉武益広は「大塚製薬は、40年以上の間、それがどんなに困難であろうとも、結核治療の新たな選択肢を生み出すことを優先してまいりました。今回の試験結果の重要な知見により、世界的な脅威である結核の研究を継続するという決意を新たにしました。致死性の高い超多剤耐性結核に対しても、今後一層の努力を続けていきます」と述べています。

大塚製薬が独自に創製した「デラマニド」は、多剤耐性結核をはじめとする結核菌を特異的に殺菌する新規薬効群(ニトロ-ジヒドロ-イミダゾオキサゾール)に分類される初の化合物です。欧州、日本、韓国で承認を取得しています。WHOは、2014年10月に「デラマニド」の多剤耐性結核に対する使用に関する指針を発表しました※2。また、2015年5月に、効果、安全性、費用対効果に関する科学的根拠に基づいて医薬品を収載する必須医薬品リストに「デラマニド」を追加しました※3
現在、小児の多剤耐性結核の適応取得に向けて開発を行っています。

参考資料

「デラマニド」フェーズ2b試験について※4

デラマニドの効果を評価するフェーズ2大規模無作為化プラセボ対照試験は、多剤耐性結核患者481名を対象に2カ月間治療を行った後、1カ月間の追跡調査を実施しました(204試験)。213名の患者さんには引き続き、6カ月間の非盲検治療試験を行い(208試験)、当初無作為化した481名中421名については、24カ月にわたって追跡調査を実施しました(116試験)。WHOが推奨する標準治療に加え、デラマニド 100mg を1日2回併用した患者群では、2カ月後のSCC(喀痰中結核菌消失)達成率が、プラセボを併用した群と比較して統計学的有意に53%高かったことが確認されました(デラマニド群 45.4%、プラセボ群 29.6%、P=0.008)。
有害事象の発現率は、心電図QT延長を除き、デラマニド投与群、プラセボ投与群で同等でした。心電図QT延長は、デラマニド投与群で若干多く(デラマニド投与群で9.9%、プラセボ投与群で3.8%)みられましたが、立ちくらみや不整脈といった臨床症状は認められませんでした。

結核について

WHOによると、結核は単一の感染性病原体として、HIV/AIDSに次いで世界で2番目に多い死亡原因となっています。2013年には、推定900万人が結核を発症し、150万人が結核を原因として亡くなっています※5。多剤耐性結核に対する現在の治療レジメンでは、複数の薬剤を少なくとも2年間、更なる薬剤耐性がある場合はより長期間服用する必要があります※6。2013年には、約48万人が多剤耐性結核を発症しています※5
なおWHOが定義する超多剤耐性結核とは、結核治療の第一選択薬であるイソニアジドとリファンピシンに対して耐性を獲得しており、同時に第二選択薬であるフルオロキノロンと注射剤にも耐性示す結核菌で、治療の選択肢が大幅に限られます。現在、米国をはじめとする100カ国で感染例が報告されています※5

  1. 1Gupta R, Geiter L, Wells C. Delamanid for the Treatment of Extensively Drug-resistant Tuberculosis (XDR-TB). N Engl J Med 2015; 372 (28).
  2. 2World Health Organization (WHO). Interim guidance on the use of delamanid in the treatment of MDR-TB. October 2014. http://www.who.int/tb/features_archive/delamanid/en/
  3. 3World Health Organization (WHO). Executive Summary: The Selection and Use of Essential Medicines (2015). Report of the 20th WHO Expert Committee on the Selection and Use of Essential Medicines. 20-24 April 2015. http://www.who.int/medicines/publications/essentialmedicines/Executive-Summary_EML-2015_7-May-15.pdf
  4. 4Gler MT, Skripconoka V, Sanchez-Garavito E, et al. Delamanid for multidrug-resistant pulmonary tuberculosis. N Engl J Med. 2012;366:2151-60
  5. 5World Health Organization (WHO). Global Tuberculosis Report 2014. http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/137094/1/9789241564809_eng.pdf
  6. 6World Health Organization (WHO). Shorter treatment regimens for multidrug-resistant tuberculosis. May 2013. http://www.who.int/tb/publications/Short_TB_regimens.pdf