大塚製薬株式会社

医療関連事業
2016年1月8日

大塚製薬 白血病治療薬として「ポナチニブ」を国内製造販売承認申請

  • 「ポナチニブ」(一般名)は、米国アリアド社が開発したチロシンキナーゼ阻害薬で、慢性骨髄性白血病とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対する新規経口治療薬として国内で初の申請
  • 「ポナチニブ」(海外製品名:Iclusig®、アイクルシグ)は、欧米では既に販売され既存の治療薬に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の患者さんに使用されており、日本をはじめアジアでも要望されている
  • 大塚製薬は、日本を含むアジア10カ国・地域※1において、「ポナチニブ」の共同開発・商業化の権利を2014年12月に取得

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、アリアド・ファーマシューティカルズ・インク(本社:米国マサチューセッツ州、以下「アリアド社」)が開発した既存のチロシンキナーゼ阻害薬(以下「TKI」)に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病(以下「CML」)とフィラデルフィア染色体※2(以下「Ph」)陽性急性リンパ性白血病(以下「Ph+ ALL」)の治療薬である「ポナチニブ(海外製品名:Iclusig®、アイクルシグ)」について、日本国内での製造販売承認申請を行いました。

国内では、アリアド社が有効性と安全性、忍容性についてフェーズ1/2試験を多施設共同試験として行いました。大塚製薬はこの試験結果と海外の試験結果を併せて申請しました。なお、日本で2015年9月にオーファンドラッグとしての指定を受けています。

従来の治療薬(TKI)と突然変異による治療抵抗性/T315I変異へのポナチニブ効果作用

「ポナチニブ」は、アリアド社が創製したCMLやPh+ ALLに発現するBCR-ABLに作用するTKIです。本剤は新規に化学合成された経口TKIであり、野生型BCR-ABLおよび他のTKIに抵抗性を示す変異型BCR-ABLであるT315I変異などに対して阻害作用を示すように設計されています。既存のTKIに抵抗性または不耐容のCML、再発または難治性のPh+ ALL、特にT315I変異に代表される変異型BCR-ABLにも効果を示します。 2012年12月に米国FDAで承認され、2013年7月に欧州でも承認を取得しています。

日本ではCMLは10万人に1人程度の割合ですべての年齢層で発症します。患者数は約11,000人と推定されています※3。TKI治療の進歩により死亡率は低下していますが、高齢者の人口増加に伴い罹患者数は増加傾向にあります。CMLは、病気発症時からの慢性期(5~6年間)では初期症状はほとんどみられませんが、白血球数、芽球の比率が高くなり病気の進行とともに全身倦怠感、体重減少、肝脾腫による腹部膨満感に始まり、移行期(6~9カ月間)になると骨痛、肝脾腫の増悪、更には急性転化期(3~6カ月間)になると貧血、出血傾向、感染へと症状が段階的に増悪していき、治療抵抗性となります※4。一方、Ph+ ALLは小児および高齢者にみられ、初期治療後に再発する、あるいは治療抵抗性の患者さんの予後は極めて不良であるため※5,6、未だ解決すべき課題となっています。
CMLやPh+ ALLの治療薬には、第一選択薬としてTKIが使用されますが、病気が進行してくると病因であるBCR-ABL遺伝子の増幅や過剰発現、遺伝子の突然変異など様々な原因によりTKI治療の抵抗性を示すようになり、既存のTKIを使用しても十分な治療効果が得られない場合があります。また、既存のTKIによる副作用によりTKIの治療を継続できない不耐容の患者さんもいます。これら治療抵抗性や不耐容の患者さんにおいては、新しいTKIが日本やアジア地域でも望まれています。

大塚製薬は、現在、中枢(精神神経)、循環器、眼科領域とともにがん領域にも注力し薬剤ポートフォリオを拡充しています。今後も血液がん領域において、診断から治療薬まで幅広い事業展開を通じて、未だ十分な治療薬のない血液がん患者さんの生命に関わる治療向上を目指して医薬品の開発、商業化を進めていきます。

  1. 1日本、インドネシア、マレーシア、中国(香港含む)、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、タイ、ベトナム
  2. 2CML及びPh+ ALLに見られる染色体異常。22番染色体と9番染色体間での転座によって、c-ablとbcrという遺伝子が融合し異常なタンパク質を生じることで造血幹細胞を無制限に増殖させ、白血病の原因となる。
  3. 3 厚生労働省 平成23年患者調査
  4. 4神田善伸 「造血幹細胞移植」 病気がみえる vol.5  医療情報科学研究所編 メディックメディア:104, 2008より
  5. 5Fielding AK et al., Outcome of 609 adults after relapse of acute lymphoblastic leukemia (ALL); an MRC UKALL12/ECOG 2993 study. Blood 2007, 109(3): 944 - 950.
  6. 6Vardiman JW, et al., WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues. IARC Press: Lyon 2008, p32-37.