世界中で年間に940万人が新規に結核を発病し、130万人が結核で亡くなられています (表・図9)※。この数字は増大しています。とくに患者さんが多いのは発展途上国です。結核は人類史上減ったことがない病気で「再興感染症」とよばれています。質的にも最近は難しい問題が浮上しています。とくに「HIV感染者の結核発病」「多剤耐性結核」が問題となっています。
※この他に38万人がHIV合併結核で死亡しています。

さらに、社会制度が混乱した旧社会主義諸国でも結核対策が崩壊し、結核が上昇、とくに悪性(薬剤耐性)の結核が問題となりました。
一方先進国でも、HIVの影響、貧困者の発生、まん延国からの持ち込みなどで結核が増え、新たな問題となりつつあります。
多剤耐性結核が生まれる背景としては、十分な治療を受けられない場合、または、薬剤の服用が不規則であったり、途中で中断してしまったりすることが挙げられます。治療を終え、結核が治ったようにみえても約2~5%の患者さんで再発が起こります2,3)。図10の右側(既治療患者)はそのような患者さんでは薬剤耐性になっていることが多いことが示されています。 一方、不幸にも耐性結核の患者さんから感染を受けて発病した人は最初から薬剤耐性です(初回治療患者、図10左側)。
2)Chang, KC. et al.:Am. J. Respir. Crit.
Care. Med. 174, 1153‒1158, 2006
3)結核療法研究協議会内科会, 84(9),617-625, 2009



1989年にWHO(世界保健機関)の結核対策課長に就任した古知新(こち・あらた)博士は、国際社会が結核問題を軽視していることを批判し、強力な治療方式であるDOTSを開発し、普及させました。 それまで途上国では採用できなかった高価な薬剤を確実に患者さんに服用させるシステムで、主として、医療従事者が直接患者さんに薬を手渡し目の前で服用を見届けるという方法で成果をあげています。
この方式はすべての途上国はもちろん米国のような先進国でも採り入れられ、世界標準の結核治療方式になりました。 日本でも「感染症法」で「患者が規則的に服薬を完遂するように保健所と主治医が連携して患者を支援すること」が規定されています。 これが「日本版DOTS」と言われ、患者さんや地域の状況に応じたやり方で服薬の支援と確認が行われています(「結核はすぐに治るの?」参照)。






