心不全を知って、予防・治療しよう

用語解説・関連リンク

あ行

アルドステロン拮抗薬

腎臓でナトリウムと水の排泄を促進し、カリウムの排泄を抑えて、尿量を増やす薬です。体内の余分な水分を排泄することにより、血圧を下げたり、体のむくみを取ったりします。また、心臓の筋肉を障害する線維化という現象を引き起こすアルドステロンの作用を抑制する薬剤であり、心筋の障害や心臓の拡大を予防する効果があり、心不全の治療薬として使用されます。

ACC/AHA分類

2001年にACC/AHA(米国心臓病学会/米国心臓協会)の心不全に関するガイドラインから登場した心不全の病期の進行を表すステージ分類です。
ACC:American College of Cardiologyの略
AHA:American Heart Associationの略

ACE阻害薬

アンジオテンシンIから、血圧を上げる体内の物質であるアンジオテンシンIIに変換する酵素(ACE)を阻害することによって、血圧を下げたり、心臓の負担を軽くする薬です。血圧を下げるためだけではなく、心不全の治療薬として使用されます。
ACE:Angiotensin Converting Enzymeの略

ARB

血管を収縮して血圧を上げる体内の物質であるアンジオテンシンIIの受容体に拮抗し、末梢血管の抵抗を低下させて血圧を下げる薬です。通常、高血圧の治療に用いられます。ACE阻害薬が副作用で使用できない場合、心不全の治療薬としても使用されます。
ARB: Angiotensin II Receptor Blockerの略

運動耐容能

ここまでは耐えられるという運動能力を示す用語です。

HCNチャネル遮断薬

心臓の働きを悪化させることなく脈をゆっくりにします。ふらつきや立ちくらみが出ることがあります。

SGLT2阻害薬

尿中への糖と水分の排泄を増やします。尿が近くなることがあります。
副作用として、排尿時の違和感や痛み、ふらつきやだるさなどが出ることがあります。また、発熱や下痢などで、食事ができないときには休薬も必要です。

NYHA分類

ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)による心機能分類で、心不全の重症度を自覚症状からⅠ~Ⅳ度に分類したものです。

NT-proBNP濃度

原因を問わず心臓(主に左心室)に負荷がかかると分泌される一種の尿を出す作用のあるホルモンです。BNP測定と同じ目的で使用されますが、BNP値よりもNT-proBNP値の方が4~5倍高い値を示します。
NT-proBNP:N-terminal pro-Brain Natriuretic Peptide(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)の略
BNP:B-type natriuretic peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の略

か行

可逆性

もとの状態に戻りうる状態を示す用語です。(⇔非可逆性)

可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬

血管を広げ、心臓の収縮エネルギーの効率を高めます。血圧の低下やめまいが起こることがあります。

肝腫大

肝臓がなんらかの原因で大きくなった状態です。心不全の場合、血液がうっ滞して腫大したことで生じます。触診によって、肋骨縁よりも下の位置に肝臓があることが確認できるかどうかで判断されます。

QOL

quality of lifeの略。生活の質。

急性増悪

急に症状が悪化すること。

急性・慢性心不全診療ガイドライン

日本循環器学会と日本心不全学会の2学会の合同で作成されました。診療ガイドラインは医師が実地診療において疾患を診断、治療するうえでの指針です。

強心薬

弱った心臓の働きを強化する効果のあるお薬です。

胸水

心不全によって肺にうっ血が生じ、重症になると肺の外に体液が貯まりますが、この状態を胸水貯留と言います。

高血圧

血圧の値が収縮期血圧(上の血圧)/拡張期血圧(下の血圧)のどちらか一方、あるいは両方が140/90mmHg以上になる病気です。

頸静脈怒張

心不全で診られる所見で、心臓に負担がかかった時に首の静脈が腫れあがる状態です。上半身を45度起こした半座位の状態で確認します。

血管拡張薬

末梢の動脈を拡張する薬です。通常、狭心症や心筋梗塞の治療に用いられますが、心不全では心臓への負荷を軽くする目的で用いられます。

さ行

ジギタリス製剤

心臓の収縮を強め、速くなり過ぎた心拍を調節する薬です。心房細動や頻脈性不整脈の心拍調節にも用いられます。

CKD

慢性腎臓病のこと。(慢性腎臓病の項を参照)
CKD: Chronic Kidney Diseaseの略

CPX

心肺運動負荷試験のこと。(心肺運動負荷試験の項を参照)
CPX:cardiopulmonary exercise testの略

心筋症

心臓の筋肉自体の病気で、大きくは肥大型・拡張型・拘束型の3つのタイプに分かれます。
特発性拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症は難病に指定されています。

心筋梗塞

心臓を養う冠動脈がせまくなり、完全にふさがって血液が通じず心筋が壊死した状態です。

心臓MRI

心臓の非侵襲的画像診断法です。心臓の大きさや機能の評価だけではなく、他の検査方法ではわからない心筋の状態も評価できる検査法です。
MRI: Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像診断装置)の略

心肺運動負荷試験

運動(自転車こぎ)中の心臓の機能・肺の機能・骨格筋の機能などを同時に測定する検査です。心電図、血圧、呼吸中の酸素や二酸化炭素の濃度を計測します。この検査の結果を参考にどれくらい運動することが心不全治療において適切なのかを判断することに利用されます。

心臓リハビリテーション

早期離床、運動耐容能の向上による生活の質(QOL)の改善、心不全の重症化や再入院を予防することを目的に行います。主に、ベッド上、病棟内、リハビリ室で行うものに分かれます。

先天性心疾患

生まれつきの心臓病。心室中隔欠損症、ファロー四徴症、心房中隔欠損症等がありますが、日本で最も多くみられるのが、左右の心室を隔てる心室中隔に穴があいている心室中隔欠損症です。

た行

糖尿病

血糖値を低下させるインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増える病気です。

は行

パンデミック

感染症の全国的・世界的な大流行のこと。語源はギリシャ語の、パン〈全て〉,デミ〈人々〉にもとづきます。

BNP濃度

BNPとは、心臓を守るために心室から分泌されるホルモンです。BNPの正常値は18.4pg/ml以下です。心不全の重症度の診断や治療効果の判定に用いられます。
BNP:B-type natriuretic peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の略

非可逆性

もとに戻らない変化が起きてしまっている状態を指します。治療してもステージが進行すれば決して戻ることはありません。(⇔可逆性)

不整脈

脈が不規則になり心臓の機能の低下や動悸等の症状を引き起こす状態です。原因が明確にならない場合(特発性)と心筋梗塞等の原因となる疾患に伴って起こる場合があります。

弁膜症

心臓の中には血液の流れを正常に保つ弁がありますが、その弁が狭くなったり、きっちり閉まらなくなったりする病気です。

β遮断薬

交感神経の緊張を和らげ、疲れた心臓を休ませて元気にするお薬です。少ない量から始め、血圧・脈拍・症状をみながら徐々に増やしていきます。
副作用として血圧が下がりすぎたり、脈が遅くなりすぎたりすることがあります。

ま行

慢性腎臓病

高血圧や糖尿病等により腎臓の機能が慢性的に低下している状態です。糸球体という腎臓の重要な部分の機能の指標である糸球体濾過量(GFR:glomerular filtration rate)が、健康な人の60%以下に低下する(GFRが60ml/分/1.73m2未満)か、あるいは尿にタンパクが出るといった腎臓の異常が続く状態です。

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)

水分貯留や血圧上昇に関与するアルドステロンというホルモンの働きを抑え心臓を保護します。
副作用として、血中カリウム値が上昇する、胸が張るなどの症状が出ることがあります。

無症候性

痛みや違和感などの自覚症状がない状態です。

ら行

利尿薬

からだにたまった余計な水分や塩分を尿としてからだの外に出し、心臓の負担やむくみをとります。尿が近くなることがありますが、自己判断で中止せず医師に相談しましょう。

レニン・アンジオテンシン系抑制薬

  • ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
  • ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
  • ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)

心不全では、レニン・アンジオテンシンといったホルモンが過剰に分泌されるため、心臓に負担がかかります。これらのホルモンを抑え心臓を保護します。
副作用として、腎機能の低下、血圧の低下、血中カリウム値の上昇があります。ACE阻害薬では、空咳がみられることがあります。

6分間歩行

簡便でもっとも多く用いられる運動負荷試験の一種です。6分間平地をできるだけ長い間歩き、その距離を測定し、心臓や肺の機能の評価に利用されます。