心不全を知って、予防・治療しよう

心不全をくり返さないための治療は?

適切な治療を行なえば、再発を防げる可能性が高くなる

心不全を発症しても、適切な治療によって一旦症状は良くなりますが、心不全そのものが完全に治ることはなく、だんだんと進行することで悪化します。
入院後、安静にすることや治療の基準を示した『急性・慢性心不全診療ガイドライン』に基づいた適切な治療を行うことで、症状が良くなり、再発を防げる可能性があります。

心臓リハビリテーションと心不全チームメンバー

急に症状が悪化すること(急性増悪[きゅうせいぞうあく])を予防し、入院の回数を減らすこと、そして症状が悪化した時(増悪時[ぞうあくじ])のキズを浅くする治療が重要になります。
さらに薬物療法と並行して、心臓リハビリテーションが開始されます。患者さんがよりよい生活を送るために、医師、看護師、薬剤師などの多職種スタッフで構成される心不全チームによる治療を行っている医療機関も増えてきています。

加えて、病院に限らず在宅をはじめとした地域など様々な場面で幅広く活躍する専門スタッフとして、日本循環器学会では2021年度より「心不全療養指導士(CHFE:Certified Heart Failure Educator)」認定制度を開始し、心不全チームメンバーとして活躍が期待されています。資格の対象は、日本循環器学会の会員であり、心不全療養指導に従事している医療従事者(看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、公認心理師、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士等)です。詳細については日本循環器学会の心不全療養指導士のウェブページをご確認ください。

心不全チームメンバー

申し送りミーティングの様子を見てみましょう

  • 撮影協力:日本医科大学武蔵小杉病院

急性・慢性心不全診療ガイドラインで推奨されている薬剤

心不全の治療には、症状や状態に応じてさまざまなお薬が使われます。

  • 目に見える治療:患者さんご自身が感じることができる(目に見える)症状(息切れ、むくみなど)を緩和する治療
  • 目に見えない治療:患者さんご自身で感じることは難しいものの、病気の根本に対する治療で、生命予後改善や再入院を減らします。
レニン・アンジオテンシン系抑制薬
  • ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
  • ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
  • ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
心不全では、レニン・アンジオテンシンといったホルモンが過剰に分泌されるため、心臓に負担がかかります。これらのホルモンを抑え心臓を保護します。
副作用として、腎機能の低下、血圧の低下、血中カリウム値の上昇があります。ACE阻害薬では、空咳がみられることがあります。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
水分貯留や血圧上昇に関与するアルドステロンというホルモンの働きを抑え心臓を保護します。
副作用として、血中カリウム値が上昇する、胸が張るなどの症状が出ることがあります。
β遮断薬
交感神経の緊張を和らげ、疲れた心臓を休ませて元気にするお薬です。少ない量から始め、血圧・脈拍・症状をみながら徐々に増やしていきます。
副作用として血圧が下がりすぎたり、脈が遅くなりすぎたりすることがあります。
SGLT2阻害薬
尿中への糖と水分の排泄を増やします。尿が近くなることがあります。
副作用として、排尿時の違和感や痛み、ふらつきやだるさなどが出ることがあります。また、発熱や下痢などで、食事ができないときには休薬も必要です。
利尿薬
からだにたまった余計な水分や塩分を尿としてからだの外に出し、心臓の負担やむくみをとります。尿が近くなることがありますが、自己判断で中止せず医師に相談しましょう。
HCNチャネル遮断薬
心臓の働きを悪化させることなく脈をゆっくりにします。ふらつきや立ちくらみが出ることがあります。
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬
血管を広げ、心臓の収縮エネルギーの効率を高めます。血圧の低下やめまいが起こることがあります。
強心薬
弱った心臓の働きを強化する効果のあるお薬です。

編集/一般社団法人日本心不全学会.心不全手帳(第3版).株式会社協和企画;2022.P20-22.