水分補給

発汗時の水分塩分摂取と
体液組成の変化

森本武利、三木健寿、能勢博、山田誠二、平川和文、松原周信
日本生気象学会雑誌 1981;18: 31-39

目的

イオン飲料および水を自由に摂取した場合に、自発的脱水※1の程度や水分塩分のバランスにどのような変化が認められるか、検討を行った。

  1. ※1自発的脱水:大量に汗をかいた状態で、補給した水分が“水”であった場合、体は体液がそれ以上薄くならないよう、のどの渇きを止め、尿量を増やして水を排出しようとする。その結果、体液の量は回復しないまま余計に水分を失い、脱水が進行してしまう。

方法

健常成人男性8名を対象に、イオン飲料摂取、水摂取、無摂取の3条件にて、クロスオーバー比較試験※2を実施した。高温環境下(室温36.4゚C、相対湿度70%)にて15分のステップテストを15分間の休憩をはさんで3回負荷した(脱水期)。2時間経過した後、常温の部屋(室温25℃、相対湿度55%)にて3時間安静を保たせた(回復期)。試験飲料は、運動負荷、安静中に自由摂取させ、水分バランスおよび血液性状について測定を行った。

  1. ※2クロスオーバー比較試験:一人の被験者が、各条件を異なる順番で実施し結果を比較する試験

結果

2時間の運動負荷により、いずれの条件においても約1600gの発汗を認めた。それに対して、2時間の脱水期と3時間の回復期における飲料の摂取量はイオン飲料で1262g、水で862gであった。発汗量に対する水分摂取量の割合である水分摂取率は、イオン飲料で63%となり水摂取条件の40%に比較して有意に高値を示した。

考察

発汗時にイオン飲料を自由摂取した場合は、水を自由摂取した場合と比べてたくさん飲めることから、自発的脱水の程度が小さいことが示唆された。

脱水中2時間と回復3時間にわたり飲料を自由摂取したときの水分摂取率※3
出典:日本生気象学会雑誌 1981;18: 31-39 を改変
  1. ※3水分摂取率:発汗量に対し、摂取した水分量の割合

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