世界記録へ 81歳の挑戦

中野陽子さん シニアランナー81歳

35歳以上のアスリートが参加する「全日本マスターズ陸上競技選手権大会」
75~79歳の部で3種目の世界記録と2種目の日本記録を持つ。
2015年3月の横浜マラソンでも最年長女性ランナーとして競技に参加し、
4時間11分50秒のタイムで完走。
東京マラソン2018でも世界記録の樹立を狙う。

2016年1月update

もともとスポーツはされていらっしゃったのですか?

20代の時にスキーの経験があります。
スキーといっても、私がやっていたのは“基礎スキー”。準指導員の資格も取得し、本格的に取り組んでいました。
基礎スキーは規定の演目に正確に、綺麗に滑らなくてはいけないので、楽しくもありとても辛く厳しい競技でもありました。それからずっとスキーは続けていましたね、子どもたち5人集まると、よく北海道の藻岩山に行ったものです。

いつからマラソンを始めたのですか?

70歳の6月からです。
60歳の時に、型に忠実な基礎スキーではなく自由で楽しいスキーをしてみようと思い、その頃からスイスやアメリカへ何度も訪れました。しかし70歳で仕事もそろそろ引退・・・となった時、お金がかからないスポーツに切り替えようと思いランニングを始めました。

本格的に走り出したきっかけはなんですか?

きっかけは、たまたま通っていたスポーツジムで見つけたチラシ。
「マラソンをしたい人募集」の文字に目が留まり、ランニングの講習会に初めて参加してみたんです。
そのプログラムは月に2回、軽い練習から段階を踏んで3か月間通いました。
いきなり走り込むのではなく、身体の調子に合わせて少しずつステップアップしていく練習メニューをそこで初めて習ったんです。それが70歳の時ですね。
それから2年後くらいに、アミノバリューランニングクラブに通う知人から、コーチがすごくイイから入会したらどうかと勧められまして、紹介という形で、ランニングクラブに参加するようになりました。

走り出す際に体調面や怪我などの不安はありませんでしたか?

正直、全然無かったですね。
いきなり無理をする必要は無いんです。特に、スキーの経験から基礎の大事さを理解していたので、正しい動きや練習の仕方をきちんと守っていれば、走っていても大きな故障はしないと分かっていましたから。
だからこそ、練習メニューも絶対に無理をせず、順番に段階的にやっていくことにこだわりました。
まずは、歩くことから。
自分の呼吸を聞き、出来るだけ自分のカラダの調子に耳を傾けながら、徐々にステップアップしていけばいいので、不安に思うことは無かったですね。

走ることを続ける理由を教えてください。

とにかく楽しいんです!
ランニングって本当に自由なスポーツで縛りが無く、どこまでも自分のペースで行けるじゃないですか。その距離を走れたという達成感もありますし、さらに楽しいのは幅広い世代の友達がたくさんできることですね!

ある大会の練習にと、朝、多摩川を走ることにしていた時期があったのですが、その時間その場所にいくと、度々、同じ人に出会うんです。
1つ目の目印を折り返したところで、この人とすれ違う。みたいなことが起こるとだんだん挨拶をするような仲になって。
12~3くらい年下の人が「最近走り始められたんですか?」と声をかけてくれたりもしました。

それから、ある一定の時間になると、いつも走っている人が集まり、一緒に走ってお喋りするようなコミュニティが自然と出来あがってきたんです。
それがもう、とても楽しくて。
今はバラバラになってしまいましたが、そのグループで年に2回は飲み会があったりと、交流は続いています。

私の年になると普通は、病院の待合室や集会所に行ってお友達を作る方が多いみたいですが、私の場合「ランニング」という共通の話題で幅広い年代の人と普通にお話しが出来るので、色んな世代との交流を楽しんでいます。
旅行先でたまたま出会ってランニング話に花が咲いた方とは10年以上年賀状をやり取りしていますよ。

中野さんはコミュニケーション能力がとても高いですね。

とんでもない!私はもともとすごく人見知り。学生時代は色んな人と交流するより特定の人とだけ行動するようなタイプでした。自分から話しかけるのは苦手なんです。
でも、70歳でマラソンを始めてから、本当にたくさんの人が声をかけてくれるようになったし、何より“共通の話題”があると、どんな年代の人とでも話せるものなんですよ。世代が違っても、“ランニング”という共通の話題で盛り上がれます。

走ることを上手に楽しむコツはありますか?

走ることだけに必死になっていては、なかなか心がついていけませんよね。
私は旅行感覚で色んな土地を巡り、ついでに現地のマラソン大会に参加したり、その地でランニングしてみたりして、走ることを楽しんでいますよ。

湯河原マラソンではエントリー出来ず応援だけだったのですがせっかく来たので、翌日、湯河原の街を走ってみようと。その時はバス停で出会った年配のランナー3人組に
「どこまで行きますか?ついて行ってもいいですか?」
と尋ねて、湯河原から真鶴まで4キロほど一緒に走りました。相手は道を聞くだけだと思っていたからびっくりしたでしょうね。

でもその出会いから意気投合し、今ではその方達と本当に仲良しなんです。
この間は、三泊四日で宮古島に行ってきたんですよ!
みんなでレンタカーを借りて橋の向こうの伊良部島に車を置いておいて、往復ランニングしたり。本当に気持ちがよく、楽しかったですよ。

北海道の利尻島に行ったときはバスの中で話しかけてくれた人が私と同じくランナーでして、利尻島で参加したマラソン大会の応援に駆け付けてくれました。

マラソンってこういう風に土地の人と友達になれるのも魅力のひとつで、その時が終わっても繋がっていられるんですよね。独りで淡々と走るのもいいですが、仲間を少しずつ増やして自分なりの楽しみを見つけるというのも長く続けるコツですね。

これから身体をつくって運動だなんて諦めている人へ体つくりのポイントやアドバイスはありますか?

あんまり苦しくない程度に徐々にやり始めればいいんです。
マラソン自体ではなくて、楽しい目的を何でもいいから見つけることです。

必ずしもマラソンをやらなきゃと思わなくていい、何でもいいから、楽しいと思うこと。じゃないと続けられないですからね。

最近の若い人は走った後の飲み会が楽しくて仲間と一緒にランニングを楽しんでいるみたいですね、それを目的にしているというか(笑)でもそれもいいと思います。
私も遠方の大会に仲間と参加する時は前夜祭なども楽しみの一つですし。人によってはダイエットとか、それぞれ目的がありますよね。

運動は、やらなきゃやらなきゃと思うと辛くなってしまうので走りながら何を楽しむか?をまず考えてみるとよいかもしれません。

これからの目標などはありますか?

既に3つの世界記録を保持し、75歳~79歳クラスの世界記録は塗り替えたので、今は80歳~84歳クラスの世界記録樹立を狙っています!
次の東京マラソン2017のフルマラソンで、記録を残したいと思います!

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