

肉食をしない菜食主義を教えのひとつとする三大宗教-すなわちヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教発祥の国、そして肥沃な土が育む農業大国・インド。古来より豆類はたんぱく源として欠かせない食材の要であり、5000年の昔より脈々と培われてきた豆の種類とその料理法は、無限と言ってもよいほどのバラエティー を誇ります。
インドにおける大豆の歴史は比較的浅く、ヒマラヤ山脈経由でシルクロードを通り、中国からインド東北部に伝わったのが紀元1000年頃とされています。また、インド中央部で栽培されるようになった大豆は、日本や中国南部・東南アジアにルーツがあるとされています。
古い貿易文書によると、インドに初めて紹介された大豆加工食品は「しょうゆ」で、1668年頃より日本から大英帝国東インド会社を通じて、マドラス近郊のコロマンデル港、ボンベイ近郊のスーラト港へ輸入されていたという興味深い記録も残っています。
現代においても、インドでは国民の過半数をベジタリアンが占めるというお国柄から、家庭では毎食のように豆が食べられています。その多くは、色や形はさまざまながらも大豆種です。
また、大豆加工食品の代表である豆腐は、カッテージチーズから水分をしぼって固め、煮込み料理などに使う「パニール」という食材に、食感も味もよく似ているため「大豆のパニール」と呼ばれ、近年とくに広く受け入れられており、どこのスーパーでも買うことができるようになりました。
インドで手に入る豆腐は少し固めで、真空パックや紙パックに入って売られ、さいの目に刻んだり、水分をしぼって小麦粉などと合わせて練り「コフタ」という団子状にして揚げたものをほうれん草カレーなどと一緒に煮込んで食べるほか、ハーブ豆腐なるものもあります。イタリア風の料理などにも活用されているのは、日本にはないちょっと珍しい調理例かもしれません。
インドのキャリアウーマンたちには、発芽させた緑豆にみじん切りの玉ねぎやレモン汁、塩、ターメリックやスパイス少々を和えた、簡単でヘルシーな朝食「ベル」が人気です。ビタミンやイソフラボンなど女性にうれしい栄養素が豊富な緑豆と、余分な脂肪を体内で分解すると言われる玉ねぎ、レモンのビタミンC、雑菌を殺してきめ細かな美白肌をつくるとされるターメリック(うこん)との組み合わせは、不規則な食生活になりがちな彼女たちにとって無敵の美容食と信じられています。
大豆は柔らかく煮込んだものをカレーに使ったり、乾燥大豆フレークを水でもどして炒め物に利用したりするのが一般的。また、各家庭で焼く全粒粉の平パン「チャパティ」を捏ねる時、砕いて粉末にした大豆を1割ほど混ぜ込むこともあります。大豆入りのチャパティは小麦粉のみで捏ねたチャパティと比べ、甘みや柔らかみが増し風味も豊かです。