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ヒートショック・プロテインとは

「ヒートショック・プロテイン70
(HSP70)」は睡眠リズムを整える

体には、細胞の損傷を防ぐタンパク質の一群、「ヒートショック・プロテイン70(HSP70)」を生み出す力が備わっています。熱めの風呂に浸かったり、温熱を当てるといった熱の刺激で誘導されることから、この名がつきました。ヒートショック・プロテイン70(HSP70)はストレスに立ち向かい、損傷を受けた細胞を、ストレスがかかる前の状態に修復、整備する働きを持っています。

アスパラプロリンがヒートショック・プロテイン70(HSP70)を増やす

“平日と休日の就寝・起床リズムのズレ”によって引き起こされるさまざまな不調の解消に役立つアスパラプロリンは、もともとは抗ストレス作用のある食品成分として見つかりました。

ヒートショック・プロテイン70(HSP70)にはさまざまな種類がありますが、アスパラプロリンは、特に細胞を保護する作用が強い「ヒートショック・プロテイン70(HSP70)」を誘導することが分かっています。

実際、アスパラプロリンを含む食品を摂取すると、血中におけるヒートショック・プロテイン70(HSP70)遺伝子の発現が増える傾向がみられることが、臨床試験で確認されています(図10)。

図10
HSP70の発現が増加

健康な男性20人(平均39.1歳)を10人ずつに分け、一方はアスパラプロリンを含有する食品(酵素処理アスパラガス抽出物「ETAS®」として1日150mg)、もう一方は、アスパラプロリンを含有しない食品(対照食品)を1週間のみ続けた。摂取前後に血中のHSP70の遺伝子(mRNA)発現を、RT-PCR法で解析。有意な差ではなかったが、アスパラプロリン含有食品群ではHSP70の遺伝子発現が増えた。

エラーバーは標準偏差。

(J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2014;60(4):283-90.)

自律神経やホルモンを調整

この試験では、ストレスの緩和作用をみるために自律神経や睡眠に関連する指標の変化も調べています。自律神経には体を興奮モードにする交感神経と沈静モードにする副交感神経がありますが、過度のストレスがかかると、これらがバランスよく働かなくなることや、自律神経の活動自体が低下することが知られます。

ところがアスパラプロリンを含む食品をとると、自律神経のバランスが整い、ストレスが軽減するという結果が得られました(図11)。さらに、睡眠の質を自己評価する「アテネ不眠尺度(AIS)」において、早朝覚醒が有意に改善されました。

図11
自律神経のバランスが整い、ストレスが軽減した

図10と同じ試験。摂取前後の自律神経の状態を「加速度脈波検査システム(TAS9)」で評価。アスパラプロリン含有食品群は対照食品群に比べて、トータルパワー(疲労の指標)、自律神経バランス、肉体的ストレスが有意に改善した(対照食品群に対して*P<0.05、**P<0.01、摂取前に対して♯P<0.05、♯♯P<0.01)。なおSDNNは心拍のゆらぎの指標。

(J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2014;60(4):283-90.)

ヒートショック・プロテイン70(HSP70)は徐波睡眠時間を長くする

では、ヒートショック・プロテイン70(HSP70)が睡眠を改善させる仕組みを説明しましょう。動物試験では、睡眠・覚醒リズムをコントロールする脳の視床下部の近くにヒートショック・プロテイン70(HSP70)を加えると、深い眠りである「徐波睡眠」が長くなることが確認されています(図12)。

また、脳の視床下部にはストレスをやわらげる神経伝達物質、「γ ガンマ-アミノ酪酸(GABA)」の受容体がありますが、これをブロックするとヒートショック・プロテイン70(HSP70)の効果が打ち消され、徐波睡眠が短くなりました。つまりヒートショック・プロテイン70(HSP70)は、脳のストレスをコントロールする指令塔に働きかけることで眠りを改善すると考えられます。

図12
HSP70は深い眠りを増やす

休息モードになる5分前の6羽のハトに、HSP70を脳の視床下部の近くに投与した場合と、対照の試薬を同様に投与した場合の比較。脳波や眼電図から、HSP70によって深い眠り(徐波睡眠)が有意に増えるのを確認(*P<0.05、**P<0.01)。脳の視床下部にあるGABAの作用点(受容体)を働かなくする薬剤、ビククリンも一緒に投与すると、徐波睡眠の割合が有意に減った(#P<0.05、##P<0.01、###P<0.001)。

(Dokl Biol Sci. 2013 Mar;449:89-92.)

アスパラプロリンがヒートショック・プロテイン70(HSP70)を増やし、睡眠リズムが整う細かなメカニズムについては、まだ研究中の部分もありますが、ヒートショック・プロテイン70(HSP70)が発現できなくなったマウスは体内リズムを調整することができなくなったという報告があることから(※30)、恐らくアスパラプロリンは体内リズムの調整に関わっていると考えられています。

  • Reinke H. et al., Genes Dev. 2008; 22: 331-345.

入浴でもヒートショック・プロテイン70
(HSP70)が増える

日常生活の中でその発現を増やす方法が入浴です。40℃の湯に20分つかると、2日後の血中のヒートショック・プロテイン70(HSP70)が有意に増えることが確認されました(図13)。

1日の疲れを癒してくれる入浴が、全身の細胞も癒してくれるというわけです。その点でも、ヒートショック・プロテイン70(HSP70)の発現を増やし睡眠リズムを整える食品成分・アスパラプロリンは、現代人の眠りの悩みを手軽に軽減する一助となることが期待されます。

図13
40℃20分の入浴でHSP70が増える

健康な男性11人(平均43.8歳)が、42℃の湯で5分間全身浴した場合と40℃の湯で20分間全身浴した場合について、入浴前、入浴1日後、入浴2日後の血中のHSPの発現率を比較。

(株式会社バスクリン・修文大学健康栄養学部(伊藤要子教授)研究結果)