製品開発ストーリー

デルティバ 製品ストーリー

結核撲滅のため世界中の患者さんに
「多剤耐性結核」治療薬を届ける

最も古く、根絶できていない病気のひとつ結核。
エイズ、マラリアと並ぶ世界三大感染症のひとつであり、現在でもなお公衆衛生上の重要な課題となっています。
治癒可能な病気でありながら、2020年には世界全体で年間990万人が発症し、約150万人が死亡しているのが現状です※1
現在、既存の抗結核薬に耐性をもつ菌※2の拡大が大きな課題となっています。

誰かが研究を続けなければ

結核の原因となる結核菌は、数種類の薬で長く治療しなければ完治できません。また、変異しやすく、空気感染もすることから結核菌の取り扱いは難しく、治療薬の研究開発は容易ではないとされています。
大塚製薬が1971年に創薬研究を開始した際、最初のテーマのひとつを結核などの感染症にしました。当時は、結核の新薬が発売され、世界中の研究者や研究機関が開発を止めた時期。結核の問題は終わったかのように思われていました。しかし、結核は世界の重大な公衆衛生上の問題であり、誰かが研究し続けなければならない、その想いで大塚製薬は研究を開始しました。
研究は困難を極め、一時中断に追い込まれることさえありました。しかし、研究者は諦めることなく、数十年にわたって研究を続け、ようやく既存抗結核薬の耐性菌に効果を有し、強い抗結核活性をもつ物質にたどり着きました。

そして、世界の患者さんへ

ついに2014年、多剤耐性肺結核治療薬「デルティバ」として、欧州と日本で承認・発売。世界では実に約40年ぶりの新薬のひとつ、日本で初めての多剤耐性肺結核治療薬です。2015年には、WHOの必須医薬品モデルリスト(WHO Model List of Essential Medicines)に加えられました。
結核治療においては、服薬が不規則だったり、途中で中断したりすると、現在治療中の薬に耐性をもつ結核菌を生む可能性があります。また、それは薬物治療法の選択肢を狭め、治癒も難しくさせます。患者さんに早く薬を届け、適正に使ってもらうために大塚が選んだ道は、各国での承認を得ることに加え、世界中で結核撲滅に取り組む組織と共に歩みを進めることでした。2016年には当社ドイツ子会社の大塚ノーベルプロダクツGmbHが、ストップ結核パートナーシップ※3の世界抗結核薬基金(GDF:Global Drug Facility)と官民パートナーシップ契約を締結し、結核蔓延国を含む100を超える国・地域での薬剤の供給が可能になりました。また、2017年には、アールファーム社とロシアおよび周辺10カ国でのデルティバの製造・商業化に関するライセンス契約を締結。同年にはマイラン社(現:ヴィアトリス社)とも契約し、インドや南アフリカなどの結核蔓延国で展開を拡大しています。その結果、2022年9月現在、120を超える国・地域で使用が推し進められています。

小児結核への取り組み

毎年、世界中で2.5~3万人の子供たちが多剤耐性結核を発症しています※4。このうち、診断され治療を受けることができるのはわずか3~4%であり、約21%の子供たちが亡くなっています※5
多剤耐性結核の治療は困難であり、その中でも小児の治療はより困難です。そこで、小児患者さん向けのデラマニドの新剤形を開発し、体重10kg以上の小児患者さんでの使用が2021年9月に欧州委員会から承認されました。同年11月には本剤形もWHOの必須医薬品モデルリスト(WHO Model List of Essential Medicines)に加えられました。

しかし、私たちの闘いはまだ終わりません。現在では、デルティバと作用が異なる新たな結核治療薬の研究開発も進めています。「誰かが研究を続けねばならない」。その想いを忘れることなく、まだ存在する多剤耐性菌に立ち向かうために。

  1. ※1World Health Organization. Global Tuberculosis Report 2021
  2. ※2最も使用されている抗結核薬のリファンピシンとイソニアジドに耐性をもつのが多剤耐性結核。
  3. ※3結核撲滅を目的に2001年に設立。WHOなどの国際機関、政府機関、民間企業、患者団体等が参加。GDFは、結核蔓延国(低中所得国)へ、品質が保証された抗結核薬および診断薬へのアクセシビリティを拡大するため、その下部組織として設立されました。
  4. ※4Access to Medicine Foundation report "Tuberculosis in Children: Underdiagnosed and Undertreated" (2020)
  5. ※5Helen E Jenkins and Courtney M Yuen (2018)
デルティバ

結核菌の細胞壁を構成するミコール酸の生成を阻害することにより、殺菌効果を示す新しい作用機序をもつ抗結核薬。