「免疫力」とは

予防の立役者IgA抗体」

「粘膜免疫」で感染予防

免疫の仕組み」で解説したように、「粘膜免疫」は粘膜組織で病原体などの異物が侵入しないよう働きます。実際に、その仕組みが正常に働くことで病原体の侵入を防いだ例として、プロの口腔ケアを受けて口の中を健康に保った高齢者は、インフルエンザの発症率が低かったという研究があります(グラフ1)。

口腔ケアでインフルエンザ発症率が減る

1口腔ケアでインフルエンザ
発症率が減る

口腔ケアによるインフルエンザ発症率のグラフ

190人の高齢者男女を、プロによる口腔ケアを受ける群、独自の口腔ケア群に分けた。6ヶ月後、プロケア群はインフルエンザ発症率、風邪発症率が有意に低かった。
(データ:Arch O Gerontol Geriatr.;43,157-64,2006)

粘膜免疫の立役者「IgA」抗体

IgAの特徴 細菌やウィルスの侵入を防ぐ 抗原特異性が低い 全身の粘膜部分で活躍する

外敵の侵入を防ごうと働く粘膜免疫ですが、粘膜面で主体的に活躍している免疫物質があります。それがIgA抗体(以下、IgA)」です。抗体とは、侵入してきた病原体にくっついて、これを無力化するように働く免疫物質。タンパク質でできており、免疫グロブリンとも呼ばれます。

IgAは、特定のウイルスや細菌だけに反応するのではなく、さまざまな種類の病原体に反応する(くっつく)という、守備範囲の広さが特徴です。

IgAが低下すると病気にかかりやすくなります。このことは、上気道感染症(風邪)の発症と唾液中のIgA濃度の関係を調べた研究(グラフ2-1)でも確かめられています。同時に、IgAが低いときは、疲労感も高まっています(グラフ2-2)。
なお、母乳にはIgAが特に多く含まれており、赤ちゃんを感染から守っているのです。

2-1 IgAが低くなると
上気道感染症に罹る

上気道感染症発症前後のIgA濃度のグラフ

2-2 IgAが低いと、
疲労感も高い

IgA濃度による疲労感インデックスのグラフ

アメリカズカップのヨットレース選手の男性38人を対象に、トレーニング期間の50週間にわたって毎週、唾液サンプルを採取。その結果、上気道感染症を発症する3週間前から唾液IgAレベルが低下し始め、発症時は有意に低下(2-1)。また唾液中のIgAレベルが低下しているときは、疲労感が強かった(2-2)。
(データ:左右、Med Sci Sports Exerc.;40,1228-36,2008)

IgAが多く存在する部位

IgAは鼻汁、唾液や消化管などの表面の粘膜中に分泌され、これらの粘膜表面で外敵の侵入を阻止します。
IgAは特に腸に多く存在します。これは、食べ物とともにウイルスや細菌などが侵入しやすい事や膨大な数の微生物が腸管に共生している事も大きな要因と考えられています。

IgAが多く存在する部位はココ!

IgAが多く存在する全身部位の紹介

ヒトの外分泌物に含まれるIgA量を測定した複数のデータより。
IgAは、目や鼻、唾液、消化器、膣など、まさに“入り口から出口”までの全身の粘膜に存在する。なお、粘膜中の免疫グロブリンにはIgAのほか、IgG、IgM、IgEなどがあるが、粘膜面ではIgAが主体として働く。

(データ:『Mucosal Immunology 4th Edition』をもとに作成)

新生児は母乳のIgAに守られている

生後すぐの赤ちゃんはIgAをはじめ、免疫機能が未発達な状態。これを補うのが母乳にたっぷり含まれるIgAです。IgAが多く存在する部位はココの図を見ても分かるように、母乳、特に産後数日間に出る初乳に含まれるIgAの量は、最大級。赤ちゃんは母乳を飲むことによって、口や腸を感染から守っているのです。

腸管でIgAが働く仕組み

腸管でIgAが働く仕組みのイラスト

小腸の表面積はテニスコート1面分(約200平方メートル)に匹敵する広さで、感染防御の最前線として働く。小腸粘膜には消化吸収効率を高めるための「絨毛」があるが、絨毛がなく平らな「パイエル板」という免疫組織もある。パイエル板上皮には病原体を取り込む「M細胞」があり、病原体を取り込むとマクロファージや樹状細胞がヘルパーT細胞に「抗原」としてその情報を提示。ヘルパーT細胞から情報を受け取ったB細胞が活性化し、抗体産生細胞(形質細胞)に分化し、IgAを産生。病原体は分泌されたIgAによって動けなくなり、便として排出。あるいは、体内に入った場合にマクロファージに食べられやすくなる。
(データ: 『カラー図解 免疫学の基本がわかる事典』西東社)

体の中に侵入したウィルスや病原菌を攻撃し、体を守る仕組みについて解説します。

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