免疫力が下がる原因

免疫力低下の原因

粘膜での免疫力が弱まることで
感染症のリスクが高まる

健康だと思っていても、知らないうちに免疫力が低下していることがあります。その要因となるのは加齢や生活習慣など。加齢は避けられませんが、生活習慣は改善できます。どんな人の免疫力が落ちやすいのか、どんな生活習慣が免疫力を落とすのかを紹介します。

免疫力低下の6つの要因

  • 激しい運動をする人
  • 睡眠不足気味な人
  • 高齢者・乳幼児妊婦
  • 生活時間が不規則なシフトワーカー
  • ストレスがかかる受験生・ビジネスマン
  • 栄養が偏りがちな人

1.高齢者、乳幼児や妊婦は「ハイリスクグループ」

免疫を司るT細胞やB細胞、リンパ球などの免疫細胞は、骨髄に存在する造血幹細胞から分化して生まれます。しかし、加齢とともに免疫細胞に分化する力が落ち、正常に働く免疫細胞が減ります。加えて、新たに生まれた免疫細胞自体の機能も若いころより低いため、年を重ねるにつれて免疫力が落ちるのです。

乳幼児や子供も免疫力が低いグループ。新生児は母親にもらったIgAなどで守られていますが、その効力が切れると自前の免疫でウイルスや細菌から体を守る必要があります。しかし、免疫力は様々な異物や病原体などに曝されながら徐々に獲得していくもの。乳幼児らは免疫を獲得する過程にあるため、感染症にかかりやすいのです。実際、年齢群別のインフルエンザによる入院率を見ると、乳幼児や高齢者で高くなっています(グラフ1)。一方、粘膜免疫は、ある一定の年齢を過ぎるととともに減少するという研究も。グラフ2は健康な人116人の唾液中のIgAを測定した結果。唾液を採取して1分間にどれだけのIgAを分泌できるかを見たところ、80歳以上では20~30代の半分以下しか分泌されていませんでした。

1 高齢者と乳幼児はインフルエンザによる入院が多い

(データ:国立感染症研究所、2009年7月28日~2010年3月10日)

2 加齢とともに唾液中のIgAが少なくなる

健康な人116人を年代別に4群に分け、唾液と血清中のIgA量を測定。1分間当たりに分泌された唾液中のIgAは、80歳以上の高齢者で有意に低下していた。
(データ:Oral Microbiol Immunol. 1995:10:202-7)

妊娠中も免疫力が下がります。これは、妊娠中はホルモンのバランスが崩れる、つわりなどで食事が摂れず、栄養状態が悪くなる、睡眠不足になりやすい、ストレスを感じやすいなど、免疫力が落ちるライフスタイルに陥りがちだからです。また、母体にとって異物である胎児を排除しないように、マクロファージやNK細胞などの細胞性免疫が相対的に低下します(注1)。

  • 注1 : Am J Reprod Immunol. 2002;48:1-8

2.意外!アスリートは免疫力が落ちやすい

厳しいトレーニングを積み、鍛え上げた肉体を持つアスリートは、免疫力も高いはず。そう思われがちですが、実はそれは正しくありません。適度な運動は免疫力をアップさせますが、激しい運動はかえって免疫力を低下させます。マラソンなどの強度の強い運動をした人は、しなかった人に比べて運動後に上気道感染症(風邪)にかかる率が2~6倍増加したという報告もあります(注2、3)。

運動強度が強い場合に免疫力が低下することは、学生フットボール選手を対象に唾液中のIgA量、風邪の罹患率の関係を見た研究で確認されています。この研究では激しい運動をした時期のIgAが低下し、罹患率も高くなっていました(グラフ3)。

  • 注2 : S Afr Med J. 1983;64:582-4
  • 注3 : J Sports Med Phys Fitness. 1990;30:316-28

3 運動強度が上がるほど免疫力が低下、風邪もひきやすい

大学生の男性フットボール選手75人と一般男子学生25人で、1年を8期間に分け、唾液中のIgAと風邪の罹患を見た。激しい運動をした4期間に選手のIgA分泌速度が低下し、風邪の罹患率も高かった。
(データ:Med Sci Sports Exerc. ;2005;37:374-80)

3.強いストレスは大敵受験生はご注意を

強いストレスを受けると自律神経のバランスが乱れ、IgA分泌が低下するなど免疫力が弱まります。

精神的ストレスとなる勉強や仕事が、免疫に影響を及ぼすという報告があります。例えばグラフ4。歯学部1年生で、入学してから約1年の各時期のIgAを測定すると、試験などがあって高いストレスを受ける時期にはIgAが低下していました。

また、看護師の仕事内容とストレスの関係を調べた研究では、意思決定や作業管理などの精神的なストレスが高まる仕事で唾液中のIgAが低下していました(注4)。
月経前症候群(PMS)によるストレスも要注意です。13人のPMS女性と11人のPMS ではない女性の月経前、月経中、月経後のIgAを測ると、PMS女性では月経後のIgAが低下していました(注5)。

4 ストレスが強くなるとIgAが低下する

歯学部1年生64人の精神的ストレスと唾液中のIgA分泌速度の関係。学期始め(9月)の低ストレス時、試験がある高ストレス時(3回)、ストレスから解放された学期末の計5回測定した結果、高ストレス時のIgA分泌速度が低かった。
(データ:Lancet. 1983;25:1400-2)

ほかにも、慢性の心理的ストレスは腸内細菌叢に影響を与え、IgA濃度にも変化を及ぼすという報告もあります(注6)。
冷えも慢性ストレスの一つです。体が冷えると血管が収縮して血流が悪くなり、体の隅々に栄養や免疫細胞が運ばれにくくなることで、免疫力が低下するのです。

また、10℃の水に手首までを10分間浸けると、その後、IgAが低下するという研究結果も発表されています(注7)。寒さも同様にストレスとなり、特に筋肉量が少なく、熱の産生量が低い女性は要注意です。

  • 注4 : Front Public Health. 2014;13:157
  • 注5 : Nurs Midwifery Stud. 2015;154:2
  • 注6 : PLoS One. 2016;11:3
  • 注7 : 生理心理学と精神生理学. 2001;29:193-203

4.美容だけじゃない!睡眠不足は免疫低下の大敵

睡眠は美容だけでなく、免疫にとっても重要です。睡眠時間と唾液中のIgAの関係を見た研究では、睡眠が6時間以下で時間が短いほど唾液中のIgAの分泌量が低下していました(注8)。

睡眠時間だけでなく、眠りの質と免疫力の関係を見ると、眠りの質が良い人ほど、風邪の発症率が低下していました(グラフ5)。なお、同じ研究では7時間未満の睡眠時間の人は、8時間以上の人に比べて約3倍風邪にかかりやすくなりました。

免疫細胞のT細胞が病原体などの抗原の情報を長期間記憶するためにも、睡眠が必要だという報告もあります(注9)。良質な睡眠は免疫力を保つ健康の要です。

  • 注8 : 行動医学研究15.No1
  • 注9 : Trends Neurosci. 2015;38:585-97

5 睡眠時間が短くなると風邪をひきやすい

21〜55歳の健康な男女153人の14日間の睡眠時間や休息感などを聞き取り、眠りの質を評価。その後、風邪ウイルスを鼻に投与し、風邪の発症率を見ると、眠りの質が良い人ほど発症率が低かった。
(データ:Arch InternMed.2009;12;169,1:62-7)

5.生活時間の乱れもご注意!シフトワーカーはご用心

生活時間の乱れも要注意。動物には体内時計(サーカディアンリズム)があり、自律神経や体内のホルモンの分泌などを制御しています。しかし、生活時間が乱れるとそれらが乱れ、免疫力が低下して、様々な不調が現れてきます。実際、不規則な生活を余儀なくされるシフトワーカーを対象にした調査では、一般人に比べ、メタボリック症候群の発症リスクや乳がんのリスク、前立腺がんのリスク上がるなど多数の報告があります(注10、11、12)。これも免疫力と関係があると考えられています。

  • 注10 : Chronobiol Int. 2012;29:549-55
  • 注11 : Naturwissenschaften. 2008;95:367-82
  • 注12 : J Natl Cancer Inst. 2013;105:1292-7.

6.野菜不足やタンパク質不足 栄養の偏りも危険

食生活では過食を防ぎ、バランスの良い食事をすることが大切です。肥満も痩せも死亡リスクが高くなるからです。特に日本人は、肥満でなくても内臓肥満型で糖尿病のリスクが上がることが分かっており、糖尿病患者は感染症やがんのリスクも上がります。

一方、野菜や果物、豆、全粒穀物などの推奨食品を数多く摂っていると、がんなどの病気になりにくいという報告があります(グラフ6)。タンパク質不足にも気をつけて。タンパク質は免疫細胞や抗体の材料。血液中のタンパク質であるアルブミン量が低い人は生存率が低いという調査があるのです(注13)。

喫煙者は唾液中のIgAが低く、虫歯が多いという研究も。喫煙が多くの病気リスクに挙げられる原因の一つに、免疫力低下があるのです(注14)。

  • 注13 : Age Ageing. 1991;20:417-20
  • 注14 : Aust Deut J.2013;58:219-23

6 野菜などの推奨食品の摂取品目数が多いほど、疾患死亡リスクが減る

乳がん検診に来た4万2254人に食事指針にて推奨されている野菜や果物、全粒穀物など23品目について、1週間に摂取する品目数をアンケート調査しスコア化。追跡調査で生存の有無を観察した。摂取している推奨食品の品目数が多い人ほど各疾患による死亡リスクが少なかった。
(データ:JAMA. 2000;283:2109-15)

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