免疫力低下の理由

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現代人と免疫力低下


現代人の体は防御能力(免疫力)が弱まっている!

私たちの健康を支えている「免疫力」の実情について、ここでは見ていくことにします。

免疫力とは、細菌やウイルスなどの病原体やがんから、体を守る防御能力のこと。私たちの周りには、目には見えない細菌やウイルスが多数存在し、これらが体内に入ってくることで風邪などの感染症にかかり、体調が悪くなると考えられています。

病原体の感染から体を守る仕組みが「免疫」です。目や鼻、喉、腸といった粘膜組織、そして体の中でも免疫システムが24時間働き、これらの侵入を防いでいます

現代社会に潜む“免疫”低下のリスク体の免疫低下する原因とは

ウイルスや細菌などの病原体と体の中で戦っているのが、血液の細胞の中でも白血球と呼ばれる種類のリンパ球(B細胞、T 細胞、NK細胞など)、マクロファージといった免疫細胞や、IgA、IgG、IgE と呼ばれる抗体です。これらは体の中で日々産生され、せっせと病原体を体外に排除しています。

しかし現代人の生活では、免疫の仕組みが正しく働かない要因が増えていることをご存じですか。

例えば、睡眠不足。日本人の平均睡眠時間は男女ともに減少化傾向にあります(グラフ7)。睡眠の乱れによって睡眠に関わるホルモン(メラトニン)が十分に分泌されないと、体に活性酸素が過剰に増加。活性酸素が、がん細胞の増殖など悪い影響を引き起こすと考えられているのです。
ストレスも免疫力を低下させます。ネガティブな気分や過度なストレスによってうつ状態になると、病原体と戦う抗体の分泌が低くなるのです(注2)。

免疫力は、私たちが日々とる食事によっても支えられています。
免疫細胞や筋肉の材料となるのがタンパク質ですが、このタンパク質の摂取量は、1950年代と同じ水準まで減少(グラフ8)。また、活性酸素を無毒化する抗酸化物質や免疫機能を司る腸内環境を整えるために欠かせない食物繊維を含む野菜の摂取量も、昭和40年と比べて1人1年当たりで17.3kgも減少(グラフ9)。年代別の野菜摂取量を見ても、全年代で1日当たりの摂取目標量である350gには到達していません。中でも、働きざかりの20 歳代から40 歳代の不足が目立っています(注3)。

生活環境でも、免疫を低下させる要因が急増しています。
パソコンやネット環境の発達で座り仕事が多くなり、国民のうち73.9%が「運動不足」と感じています(注4)。運動不足に加え、女性の7割が悩む冷え性(注5)も、血液やリンパの流れを悪化させ、免疫細胞の機能低下につながると考えられます。

注1 : J Pineal Res. 2016;60:3-15
注2 : 行動医学研究. 2001;8:17-22
注3 : 厚生労働省平成26年国民健康・栄養調査報告
注4 : 内閣府平成21年世論調査、健康・体力に関する意識について
注5 : 「マイボイスコム」2012年「冷え性」調査

生活環境に潜む感染リスク

視線を外に向けてみましょう。そこには、現代社会ならではの免疫に対する脅威も。例えば、世界的に問題となっている、あらゆる抗生物質が効かない「多剤耐性菌」の出現。米国疾病予防管理センター(CDC)の推計では、耐性菌による推定患者数は年間約200万人、死亡者は約2万3000人に。特に、高齢者や乳幼児では耐性菌の感染リスクが高まります。

記憶に新しい「デング熱」や「ジカ熱」などの感染症の拡大は、交通網の発達で、多くの人や動植物が簡単に広範囲に移動し、そのスピードが速まったことなどが背景にあります。

除菌・殺菌できる製品が増え、衛生環境が良くなり、雑菌に触れる機会が減っていることも、免疫力低下の要因に。日本を含む先進諸国でアレルギー疾患が増えているのも、衛生環境が良くなったことが大きな要因の一つと考えられています。

高齢者、受験生、アスリートも注意

そもそも、免疫力は30代をピークに低下します。免疫細胞の一種であるNK 細胞の活性は、一定の年齢を過ぎると低下(グラフ10)。NK細胞の活性が低いとがん発症率が上がります(注6)。

激しい運動をするアスリートも免疫が低下しやすいことが分かってきました。プレッシャーや不安など過酷な精神的ストレスを抱える受験生も要注意です

「自分は健康」と思っていても、過信は禁物。現代人は、内にも外にも免疫低下リスクを抱えています。意識して免疫力を高める生活をすべきです。

注6 : Lancet. 2000;356:1795-99