結核

結核患者さんや医療従事者のモチベーションを上げるために

“結核への公衆衛生サービスは、私たちの「使命」のようなもの”
── ジョン・スチュアート・パンチョ

フィリピン胸部疾患センター(Lung Center of the Philippines)に勤務する看護師、ジョン・スチュアート・パンチョは、医療従事者のモチベーション維持は、患者さんのモチベーションの維持と同じくらい重要だと考えています。看護師は結核治療の最前線に立ち、患者さんと日常的に接しています。標準的な多剤耐性結核(MDR-TB)の治療は2年間にも及ぶため、結核治療に携わる看護師の仕事は、他の領域の看護師とは大きく異なります。患者さんとの強い絆が生まれ、お互いがそれぞれの生活の一部分になるのです。このような強い絆が、患者さんの治療の成功に欠かせないことが多くの事例で実証されています。多剤耐性結核の比率が高まり、患者数が増加するなか、医療従事者のモチベーションの維持や向上はきわめて重要になってきています。

スチュアートは、看護師のための研修を実施しています。「単に技術的な訓練だけでなく、スタッフのモチベーションを上げることも私の仕事です。スタッフには常に、『自分たちの仕事である結核への公衆衛生サービスは、単なる仕事ではなく“使命”のようなもの』と言っています。」

スチュアートは、患者のモチベーションを上げるのはさらに難しいとも言います。「これは本当に難しいです。私の経験上、患者さんのモチベーションを最もうまく高めてくれるのは、他の患者さんです。ですから、私たちは患者さんの中から協力者を探せるよう努力しています。結核のため生活が一変してしまった患者さんが感じる被差別感や疎外感、絶望などは、同じ病気を患う患者さんだからこそ分かち合えるのではないでしょうか。」

スチュアートの場合、自分を励ましてくれる最も大切な人は、すぐそばにいました。彼の妻であるミルドレッドは、超多剤耐性結核(XDR-TB)を2回患った経験があり、今は他の患者さんの強力なサポーターであり、またロールモデルとして活動しています。患者さんと医療従事者のモチベーションを高めることは、この若い二人にとっては、家族として願うことなのです。ミルドレッドは次のように話しています。「患者さんには、治療センターに戻り、他の患者さんにも自分の体験談を話してあげるよう勧めています。自分の苦労や成功を、他の人とも分かち合ってほしいのです。結核が治った後も人生は続くのですから。」

結核と共に生きる

世界中の誰もが、結核にかかる可能性があります。結核は、アフリカの平原からペルーの山地、欧州や北米の都市に至るまで、あらゆる地域に存在する病気です。ただし不治の病ではありません。近年においても毎年何百万もの人々が亡くなっていますが、その一方で、結核と全力で闘い克服した人々がいます。