大塚製薬株式会社

医療関連事業
2016年2月25日

大塚製薬とストップ結核パートナーシップ※1の世界抗結核薬基金(GDF)※2 世界でのデラマニド供給についての合意を発表

  • GDFから抗結核薬の供給を受けている100以上の国に対し、今回の連携(官民パートナーシップ)で新規多剤耐性結核治療薬であるデラマニドを供給できる体制を構築する
  • 今回の官民パートナーシップはデラマニドを既存の多剤耐性結核治療プログラムに適切に組み入れるための支援を実施する
  • 多剤耐性結核は毎年48万人が罹患し、その治療成功率はわずか50%で、依然として世界的な健康上の課題である※3

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下、「大塚製薬」)は、多剤耐性結核治療に新しい選択肢が一刻も早く必要である現状を踏まえ、当社子会社であるOtsuka Novel Products GmbH(オーツカ・ノベル・プロダクツ社:ドイツ、ミュンヘン市)がデラマニド(製品名:Deltyba)の普及を広く進めるため、ストップ結核パートナーシップの世界抗結核薬基金(GDF:Global Drug Facility)と官民パートナーシップを設立することに合意したことをお知らせします。

エイズ・結核・マラリアの世界三大感染症の制圧に取り組むグローバルファンド(世界基金)による支援対象となっている国で、且つ多剤耐性結核の治療を世界保健機構(WHO)のガイドラインに従って適切に行っている国が今回の官民パートナーシップの対象国となります。各国の監督のもとで実施されている多剤耐性結核の治療にデラマニドを組み入れることをGDFに要望できるようになります。このGDFを通じたデラマニドの供給は100カ国以上で可能となります。

大塚製薬の専務執行役員 抗結核グローバルプロジェクトリーダー 吉武益広は「この度のストップ結核パートナーシップとの合意は、デラマニドの普及に向けた第一歩となります。大塚製薬は結核分野のあらゆる関係者と共に適切にデラマニドの普及を推し進め、今後も薬剤耐性制圧に向けた活動を支援してまいります」と述べています。

ストップ結核パートナーシップ事務局長のルシカ・ディティウ先生は「私たちのゴールはすべての結核患者さんに最適な治療をお届けすることです。これまでデラマニドは多くの国で入手できていませんでした。このパートナーシップが多剤耐性結核の制圧に取り組む国にとって新たな手助けとなることを期待しています」と述べています。

大塚製薬とストップ結核パートナーシップは、薬剤供給に留まらない強固なパートナーシップを構築し、教育、トレーニング、技術支援、更には啓発活動を通じたサポートを展開していきます。

大塚製薬は、革新的な研究開発、協調的な治療環境整備、患者さんの治療へのアクセス、最適な治療管理などに取り組む活動『FighTBack Initiative』を推進しており、今回のパートナーシップはその一環です。『FighTBack Initiative』は、多剤耐性結核治療で初となる小児用製剤、結核診断薬、結核患者用服薬支援ツールの開発や新規抗結核薬の創製を行うものです。

当社は現在複数の国際的な機関と共に、より短期で効果的な多剤耐性結核に対する治療レジメの開発に取り組んでいます。また、これに準ずる活動として、UNITAID(国際医薬品購入ファシリティ)が資金支援するendTB※4プロジェクトとの連携を押し進め、WHOがデラマニドを推奨する根拠をさらに構築していきます。

  1. 1ストップ結核 パートナーシップ(Stop TB Partnership):公衆衛生問題としての結核撲滅を目的に2001年に設立されたパートナーシップ。国連機関The United Nations Office for Project Services(UNOPS)が事務局を務める。国際機関、政府機関、技術支援機関、NGO、民間企業、一般市民・患者団体、学術団体等が参加し、現在100カ国以上、1300のパートナーで構成。政策提言・啓発活動を始め、診断・抗結核薬の研究開発、途上国への薬剤提供、技術・資金支援の調整を行っている。
  2. 2Global Drug Facility(GDF):ストップ結核 パートナーシップの下部組織で、品質が保証された抗結核薬及び診断薬へのアクセスを拡大し、これらを必要としている国での、持続可能な調達・供給システムの構築に貢献している。
  3. 3World Health Organization. Global Tuberculosis Report 2015. Geneva, Switzerland. WHO/HTM/TB/2015.22
  4. 4endTB(Expand New Drug Markets for Tuberculosis):国際保健医療団体であるパートナーズ・イン・ヘルス(Partners in Health: PIH)、国境なき医師団(MSF)、Interactive Research and Development(IRD)が国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)から資金援助を受けて実施するプロジェクト。多剤耐性結核に対する新薬の普及支援と新しい治療レジメの提示を目指している。大塚製薬は、治療の最適化を目指す国際機関との共同研究のひとつとしてendTBプロジェクトと連携。

参考資料

デラマニド(製品名:Deltyba)について

大塚製薬が創製したデラマニドは、ニトロ-ジヒドロ-イミダゾオキサゾールに分類され、結核菌の細胞壁を構成するミコール酸の生成を阻害することで効果を示す、新しい作用メカニズムを有する化合物です。
デラマニドのフェーズ2試験は、世界9カ国※5・17施設において多剤耐性結核患者481名を対象として行われ、喀痰を培養し結核菌を検出することによる評価(SCC)を行っています。SCCは結核の感染性がなくなったことを示す指標です。治療開始から2カ月時点でのSCCは、結核患者さんの予後や死亡率に密接に関係することから、その結果は重要視されます。本試験では、WHOの多剤耐性結核治療ガイドラインによる標準治療でのみ治療された患者群では2カ月間治療を行った時点のSCC達成率が29.6%であったのに対して、標準治療に加えデラマニド100mgを1日2回併用した患者群でのSCC達成率は45.4%であったことから、標準治療にデラマニドを上乗せすることによって統計学上有意に53%の向上が認められました。デラマニド投与群では心電図QTの延長が若干多く(デラマニド投与群では9.9%、プラセボ群では3.8%)みられましたが、立ちくらみや不整脈は認められませんでした。本試験の結果は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に2012年6月に掲載されました※6
デラマニドは欧州や日本、韓国で販売承認を取得し、中国、香港、インドネシア、フィリピン、トルコで販売承認を申請中です。2014年にWHOは「多剤耐性結核治療におけるデラマニドの使用」※7を暫定の使用法ガイドラインに掲載し、2015年にデラマニドはWHOの必須医薬品リストに掲載されました。

結核の詳しい情報は、大塚製薬ホームページの「健康と病気」 結核 -古くて新しい病気- をご参照ください。

  1. 5エジプト、ラトビア、エストニア、日本、フィリピン、中国、韓国、米国、ペルー
  2. 6Gler MT, Skripconoka V, Sanchez-Garavito E, Xiao H, Cabrera-Rivero JL, Vargas-Vasquez DE, et al. Delamanid for multidrug-resistant pulmonary tuberculosis. N Engl J Med. 2012 Jun 7; 366(23): 2151-60
  3. 7World Health Organization. The use of delamanid in the treatment of multidrug-resistant tuberculosis - interim policy guidance. 2014, Geneva, Switzerland. WHO/HTM/TB2014.23