大塚製薬株式会社

医療関連事業
2016年4月20日

大塚製薬米国子会社アステックス社とジェネンテック社 急性骨髄性白血病の治療効果を高めるための併用療法について共同治験契約を締結

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、新規がん治療薬の開発を目指す米国子会社アステックス社がGenentech, Inc.(米国カルフォルニア州、以下「ジェネンテック社」)と共同治験の契約を締結しましたのでお知らせいたします。
共同治験は、アステックス社の次世代DNAメチル化阻害剤グアデシタビン(SGI-110)とジェネンテック社が開発中の抗PD-L1抗体(atezolizumab:アテゾリズマブ)の併用療法により急性骨髄性白血病治療の可能性を評価するため、開始段階の第Ⅰb相試験では、併用療法の安全性と薬効薬理を検討します。

この共同治験では、DNAメチル化を阻害するグアデシタビン投与により、患者さんの免疫システムを前もって賦活化させ、免疫療法への反応を増強させるという仮説を検証します。この仮説は、グアデシタビンのDNAメチル化阻害により腫瘍関連抗原の再発現や、さらにPD-1、PD-L1あるいはPD-L2などの免疫チェックポイントの発現を誘導することで、腫瘍がより免疫療法に反応しやすくなり、atezolizumabなどの免疫チェックポイント阻害抗体に対する治療感受性が亢進するという知見に基づくものです。(Maio et al, Clin. Cancer Research, 2015; 21:4040-47)

大塚製薬は、世界の人々の未だ満足していない領域である中枢神経領域(精神疾患、アルツハイマー関連疾患)および、がん領域の治療薬の研究開発に主に注力し、自社創製の医薬品を多くの患者さんにお届けし、貢献していきます。

参考資料

急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia:AML)について

AMLは、成人の白血病の中でも最も多い疾患です。米国ではAMLは、年間20,000人以上が新たに発症しています。60歳未満のAML患者さんの60~75%は、標準的な寛解導入化学療法により完全寛解(CR)に至りますが、患者さんの30~40%は亡くなります。60歳以上の患者さんの場合では、寛解率は50%未満、治癒率は10%未満、平均生存率は1年未満であり、予後がさらに悪くなっています。これらの治療成績は、ここ30年間でほとんど改善されてなく、患者さんの治療選択肢は限られています。特に高齢の患者さんにおいては合併症を有することから、強力な寛解導入化学療法を行えないこともあるため、効果的で副作用が少ないAMLの治療法が求められています。

SGI-110 (guadecitabine:グアデシタビン)について

グアデシタビンは、次世代の新しい低分子DNAメチル化阻害剤であり、1回に少量を皮下に投与する注射剤です。本剤は、注射用デシタビンと比べて、活性代謝体であるデシタビンを体内で長く作用させ、骨髄などの組織に効率的に到達するようデザインされています。本剤は、DNAメチル化を阻害することにより、がん細胞内の不活化したがん抑制遺伝子の機能を回復させ、MDS(骨髄異形成症候群) やAMLの患者さんに対する治療効果を発揮します。アステックス社は、グアデシタビンの全ての権利を所有しています。
グアデシタビンは、がんの治療薬としての可能性を幅広く探求するために複数の第Ⅰ相試験や第Ⅱ相試験を行っています。アステックス社は、MDSやAMLの患者さんを対象とした大規模(400例以上)な無作為化第Ⅰ/Ⅱ相試験を最近完了しています。第Ⅰ相では用量漸増試験(93例登録)を行い、第Ⅱ相では無作為化(308例登録)し、未治療または再発・難治性のAMLおよびMDSの患者さんを4つの群に分けて試験を行いました。グアデシタビンは、4つの群のいずれに対しても臨床的有効性がみられ、忍容性は良好でした。第Ⅰ相試験の結果は、Lancet Oncology誌に掲載されています。
データの詳細情報は、下記URL及び clinicaltrails.gov にてご覧ください。

現在、800例を登録する大規模なグアデシタビンの国際共同無作為化比較試験を実施中です(試験名称ASTRAL-1 trial)。対象は、強力な寛解導入化学療法が適応とならない未治療のAML患者さんです。本治験では、グアデシタビンを治験担当医師が選択する対照薬(低用量cytarabine、decitabine、azacitidine)と比較します。
試験の詳細は、clinicaltrails.gov にてご覧ください。

atezolizumabについて

atezolizumab(MPDL3280A)は、がんや腫瘍浸潤免疫細胞に出現するPD-L1と呼ばれるタンパク質を標的として結合するように設計された開発中のヒト化モノクローナル抗体です。PD-L1(programmed death-ligand 1)は、共にT細胞表面上に発現しているPD-1(programmed death 1)およびB7.1タンパク質に作用し、T細胞の機能を阻害します。これらの影響をブロックすることで、本剤はT細胞を活性化させて、がん細胞を効率的に発見し攻撃する機能を回復させます。
atezolizumab は、ロシュ・グループの傘下にある米国ジェネンテック社が開発しています。