健康な胃をとりもどそう

ピロリ菌の検査と除菌治療

ピロリ菌の検査

ピロリ菌の検査の流れ

どんな症状があったらピロリ菌の検査を受ければいいの?

胃・十二指腸潰瘍の経験のある方や、再発をくりかえす方や、胃炎の方、胃MALTリンパ腫の方や免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP)の方、早期胃がんの内視鏡的治療を受けた後の方は、健康保険で検査を受けることが出来ます。この他、胃がん家系でご心配な方や、なんとなく胃の具合がいつも悪い方などは医師にご相談ください。人間ドックや検診などで希望すれば自費で検査を受けることも出来ます。

検査方法

ピロリ菌を見つける検査には大きく分けて内視鏡を使わない方法と、内視鏡を使う方法があります。

内視鏡を使わない検査

内視鏡を使わない検査方法は、何より内視鏡検査を受けずに済むという大きなメリットがあります。
内視鏡を使わない検査法による診断は、胃全体を診断することが可能なため面診断と呼ばれています。

尿素呼気試験法
診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断する、簡単に行える精度の高い診断法で、主流の検査法のひとつです。
抗体測定
ヒトはピロリ菌に感染すると、抵抗力として菌に対する抗体をつくります。血液中や尿中などに存在するこの抗体の有無を調べる方法です。血液や尿などを用いて、その抗体を測定する方法です。
糞便中抗原測定
糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。

尿素呼気試験法

ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素により、胃の中の尿素を分解して、アンモニアと二酸化炭素を生成します。尿素の分解により、アンモニアと同時に生じた二酸化炭素は速やかに吸収され、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排泄されます。この試験法は、この原理を利用して、検査薬(13C-尿素)を患者さんに服用して頂きます。ピロリ菌に感染している場合では、尿素が分解されるため呼気に13CO2が多く検出されることになります。一方ピロリ菌に感染していない場合では、尿素が分解されないため13CO2の呼気排泄はほとんど起こりません。

炭素元素(13C)は生体内にも存在します。人体には影響を与えません。

炭素には4種類の同位元素が存在します。自然界に存在する炭素はほとんどが12Cでその存在比率は98.9%で、放射活性を有しない安定同位元素です。次に存在比が高い同位元素が13Cで、約1.1%の存在比率です。13Cも12Cと同様、放射活性を持たない安定同位元素です。ヒトに例えると、体重60kgの成人の炭素量は約20%(12kg)で、13Cはその約1.1%(132g)といわれています。

内視鏡を使う検査

内視鏡を使う検査法は、胃粘膜あるいは、胃の組織の一部を採取して診断するため点診断といわれ、判定に偽陰性(本来陽性であるが、間違って陰性と判定してしまうこと)があります。

培養法
胃の粘膜を採取してすりつぶし、それをピロリ菌の発育環境下で5~7日培養して判定します。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が持っているウレアーゼという、尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。採取した粘膜を特殊な反応液に添加し、反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。
組織鏡検法
胃の粘膜の組織標本に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で探す組織診断方法です。

ピロリ菌の除菌治療

ピロリ菌の除菌治療には、胃酸の分泌を抑制するお薬と2種類の抗生物質の3つのお薬が用いられます。この三種類のお薬を一週間服用することで、約8割の方は除菌に成功すると報告されています。そして場合に応じて胃の粘膜を保護する薬剤を併用します。

除菌薬服用後の判定検査の重要性

除菌薬服用後、胃の中に本当にピロリ菌がいないのかを知ることはとても重要です。なかには一度で除菌できない場合もあります。除菌後の判定検査を受診し、ピロリ菌の有無を確認しましょう。

除菌後のフォローアップ

除菌に成功したからといって、胃がんなどの病気にならないわけではありません。ピロリ菌に感染している期間が長いと、胃の粘膜が正常に戻るのに時間がかかるからです。除菌後も定期的に内視鏡検査などを受け、胃の状態を確認しましょう。