ケンフェロールは細胞のエネルギー産生を助ける

ケンフェロールの研究の結果、低酸素環境下での有用性が確認できました。

ケンフェロールは低酸素環境下での細胞のエネルギー産生を向上させる

低酸素環境下で細胞(筋芽細胞)を培養すると、エネルギー(ATP)の含有量は低下してしまいますが、細胞にケンフェロールが作用するとエネルギー含有量は低下しないことが分かりました。このことから、ケンフェロールは、細胞に酸素が不足した状態において、少量の酸素を効率良く利用し、エネルギー産生を高めることが示唆されました。

  • C2C12筋芽細胞を2x104cells/200μLで96-wellプレートに播種し、10%ウシ胎児血清含有Dulbecco’s modified Eagle’s mediumで一晩培養し、培養後ATP Assay kitを用いて細胞内ATP含有量を測定した。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510. より改変
MEAN±SD
*:P<0.05 vs ケンフェロールなし 21%, †:P<0.05 vs ケンフェロールなし 3%
  • C2C12筋芽細胞を2x104cells/200μLで96-wellプレートに播種し、10%ウシ胎児血清含有Dulbecco’s modified Eagle’s mediumで一晩培養し、培養後ATP Assay kitを用いて細胞内ATP含有量を測定した。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510. より改変

低酸素環境で植物を栽培すると、ケンフェロール量が増加する!

植物に含まれるケンフェロールの量を調べるうちに、同じ植物でも育った場所や環境で差があることがわかりました。例えば、平地栽培と高地栽培の野菜で比較すると、酸素が薄い高原栽培の野菜は、低地栽培と比べ、何倍ものケンフェロールが含まれていました。ただし、この結果には土壌に含まれる栄養の違いなどの影響も考えられるため、同じ水耕栽培で環境条件を正常酸素環境と低酸素環境に分けて育ててみたところ、やはり低酸素環境で栽培したものは、正常酸素環境に比べ、ケンフェロールの含有量は約2倍以上に増加していました。

  1. 平地と高地で栽培されたキャベツを購入し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  2. 酸素制御装置を備えたチャンバーを用いて、正常酸素環境(21%酸素濃度)あるいは人工低酸素環境(17.5%酸素濃度:高度1500mに相当)でカイワレ大根とブロッコリースプラウトを発芽させ、1週間栽培。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510.
MEAN±SD *:P<0.05 vs 平地野菜
  1. 平地と高地で栽培されたキャベツを購入し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510.
MEAN±SD *:P<0.05 vs 正常酸素環境
  1. 酸素制御装置を備えたチャンバーを用いて、正常酸素環境(21%酸素濃度)あるいは人工低酸素環境(17.5%酸素濃度:高度1500mに相当)でカイワレ大根とブロッコリースプラウトを発芽させ、1週間栽培。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してケンフェロール含有量を定量。
  • 出典:Mizokami, T. et al., J Funct Foods. 2021; 85: 104510.

監修:北翔大学大学院 生涯スポーツ学研究科 教授 沖田 孝一 先生

旭川市生まれ。旭川医科大学卒業後、北海道大学医学部循環病態内科学講座にて医師としての研鑽を積む。総合内科専門医、循環器専門医として心臓病患者の診療に従事しつつ、各種疾患の骨格筋における酸素利用障害に着目した運動生理学的研究および運動療法の研究に携わる。また、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医としてジュニア・トップアスリートの育成に関わり、現職に至っている。

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