WORLD GO MY WAY. NEPAL ネパール

WORLD GO MY WAY.

NEPAL

ネパール

2025.07/   PHOTO&TEXT:YUKI UEDA INTERVIEW:MASAHARU SUDO

photo01photo01

世界最高峰の冒険。
宇宙を身近に感じる場所へ。

WORLD GO My WAY.第6弾となる今回の舞台はネパールにある山群ヒマラヤ。この地球上に標高8,000mを超える山は全部で14座あり、そのすべてがヒマラヤ山脈界隈にあります。僕はこれまでアマダブラム、マナスル、エベレストといった14座の内の3つの山頂へのアタックを経験してきました。宇宙を身近に感じるほどの標高の高い山の中で過ごす極限状態の時間。そこでは、挑戦の先にある無限の可能性や欠かすことのできない大切な仲間との絆を深く感じることができました。アタックの目的はもちろん山頂への到達ではなく、写真家としてまだ見ぬ風景を撮影し、その感動をお届けすることです。

photo02photo02

スタートから別世界。
耐えることも準備のひとつ。

ヒマラヤの登山。それは、とてつもなく過酷なものです。アタックの始まりは、ネパールの首都カトマンズから陸路や空路を使いルラクという町へ向かいます。その標高はすでに2,860m。さらにそこから、登山の拠点となる標高5,300mのエベレストベースキャンプへは1週間程度かけて移動します。山頂への道のりにかかる時間は、そこから最短でも5日間。標高6,000mを超えると、高山病を発症するリスクが高まるため、登っては下りを繰り返して1ヶ月半位の間に体をならし、身体的なダメージに耐えながら頂上を目指せる決戦の日がやってくるのを待つのです。

photo03photo03

10歳年下の相棒。
何が起きても変わらない人。

僕にはヒマラヤでアタックする際の相棒がいます。10歳年下のシェルパの青年です。シェルパとはネパールの少数民族のひとつで、ヒマラヤ登山におけるガイド的な役割を果たしてくれる人たちです。通常、この地でのアタックは10人から15人程度のチームを組むことが多いのですが、僕は毎回、彼と二人きりで山頂を目指します。その理由は、チーム員を気にすることなく自分のペースで撮影したいという思いがあること。そして、彼はどんな逆境に置かれても変わることのない平常心と、過酷な状況を忘れさせてくれる最高の笑顔を持っていたからです。彼がいなければ、僕は一度も登頂できなかったと思います。

photo04photo04

突き進むだけが、
目標への道のりではない。

彼は、ひょうひょうとしながらもとてもプロフェッショナルな男性です。あと300mで登頂できる。頂上は、目の前に見えている。そんな状況下でも、天候が変わりそうになれば必ず僕にストップをかけてくれます。山頂が見えることでどうしても前へ進みたくなってしまう僕に対して、客観的に状況を判断し「今日はやめておこう。」「またチャンスを伺えばいいよ。」と諭してくれます。手が届きそうなゴールに心を囚われると、本来の目的を見失いがちになりますが、彼はその目的を見失いません。僕の挑戦は、絶景を撮影し、それを世界中へ届けること。彼の仕事は、撮影を終えた僕を命を落とすことなく“無事に”帰すこと。僕の気持ちに配慮しながらも、プロとしての使命に従順なのです。

photo05photo05

異常な状況の中で、
正常でいられる強い心。

テントの中でも-20℃という極寒の地で、酸素も少なく寝ようとしても1時間毎に溺れるような感覚に襲われ目覚めてしまう。心身ともにギリギリの状況でも、彼の表情と余裕のある行動は変わりません。「さてこの先のチャレンジはどうしようか」と、笑顔で作戦を練り語りかけてくれます。約1ヶ月半に渡り、たった2人きりでのアタック。彼は、英語とネパール語、そして少しの日本語を使い、冗談を交えながらいつも僕の前を歩いてくれます。僕は彼を心から信頼し、尊敬しています。何かが壊れそうになる異常とも思える状況の中で、正常でいられること、身近な人の心までケアできること。なかなかできないことだと思います。

photo06photo06

挑戦は終わらない。
ここから、また始まる。

僕たちふたりのゴールは、エベレストベースキャンプに戻った先にあるため、山頂で二人で握手を交わしたことは一度もありません。ただ、酸素の濃度の問題などもあり、たった20分しか滞在できない世界最高峰の場所で感じられることは特別です。成層圏まではあと1km。地上100kmからが宇宙。そばにあるようで宇宙までの距離はまだまだ遠く先なのですが、いつか宇宙で撮影してみたいなと彼に話すと、「簡単に行けると思うよ」という言葉が帰ってきます。アマダブラム、マナスル、エベレストと登頂を重ねるうちに、まだ行ける、もっと行ける。自分の限界は、こんなもんじゃないんだと実感できました。最高の相棒とともに、また新しい挑戦をつづけていけたら幸せです。

photo07photo07

GO MY WAY.

UL・OS GO My WAY. Instagram