大塚製薬株式会社

医療関連事業
2021年9月27日

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「エンレスト®錠」
高血圧症に対する効能追加の承認を取得

大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)は、本日、ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:レオ・リー、以下「ノバルティス ファーマ」)が、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「エンレスト®錠 100mg・200mg」(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物、以下「エンレスト」)について、2020年6月に承認された「慢性心不全」に対する効能に加えて、「高血圧症」の効能追加の承認を取得しましたので、お知らせします。アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の高血圧症に対する承認取得は国内初です。なお、「エンレスト」の日本国内における医療従事者への情報提供活動については、共同プロモーション契約に基づき、ノバルティス ファーマと大塚製薬が実施してまいります。

「エンレスト」は、新しいクラスであるARNIに分類され、ネプリライシン(NEP)とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を同時に阻害する新規作用機序を有する薬剤です。

「エンレスト」は、日本人の軽症又は中等症の本態性高血圧症患者さんを対象とした国内第Ⅲ相試験であるA1306試験において、「エンレスト」を1日1回200mg投与した時、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるオルメサルタンに対して有意な降圧効果を示しました*1。また、「エンレスト」は、オルメサルタンを上回る24時間持続的な降圧効果を示しました。「エンレスト」の安全性および忍容性については、臨床試験を通じて、既存のARBと同等であることが示されています*2

大塚製薬は、ノバルティス ファーマとともに、「エンレスト」に関する情報提供と安全性情報収集を通じて、一人でも多くの患者さんに新たな治療選択肢をお届けできるよう努めてまいります。

「エンレスト」について

「エンレスト」は、ARNIに分類され、ネプリライシン(NEP)とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を同時に阻害する新規作用機序を有する薬剤です。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を阻害することにより、アンジオテンシンII によって引き起こされる血管収縮、体液貯留、交感神経活性が抑制され、降圧効果を示します。また、ネプリライシン(NEP)を阻害することで、生理活性を有するナトリウム利尿ペプチド(NP)の作用が増大し、血管拡張、利尿、尿中ナトリウム排泄、交感神経系抑制、心肥大抑制及び線維化抑制等の多面的な作用を示します。NEPとRAASの同時阻害では、NEP阻害に伴うRAAS 活性化がもう一方のRAAS 阻害作用により抑制されるため、NEP阻害によるベネフィットを最大限引き出すことができると期待されています*1。「エンレスト」は、2015 年7 月に米国で、収縮不全を伴う心不全(NYHAクラスII~IV)患者の治療を適応として承認されて以降、世界115ヵ国以上で承認されています。国内においても「慢性心不全」 を効能及び効果として2020 年6月に承認されました。また、「エンレスト」は、2021年2月にロシアで、同年6月に中国において、高血圧症での承認を取得しています。

国内第Ⅲ相 A1306試験について

本試験は、日本人の軽症又は中等症の高血圧患者を対象に、「エンレスト」の有効性及び安全性をオルメサルタン20 mgと比較評価することを目的としています。対象患者を3つの群に振り分け、「エンレスト」200 mg、400 mg(200 mg から開始して第1週 に400 mg に増量)、またはオルメサルタン20 mgをそれぞれ1日1回8週間投与しました。本試験では、最終評価時の平均坐位収縮期血圧(msSBP)のベースラインからの変化量に対し、最初に「エンレスト」200 mg 群のオルメサルタン20 mg に対する非劣性検定を実施し、非劣性が確立された場合に優越性検定を実施しました。最終評価時のmsSBPのベースラインからの変化量(最小二乗平均)は、「エンレスト」200 mg群、400 mg群でそれぞれ−18.21 mmHg、−20.18 mmHg、オルメサルタン20 mg 群で−13.20 mmHgでした。非劣性検定での「エンレスト」200 mg群とオルメサルタン20 mg群との比較では、投与群間差(「エンレスト」200 mg群 − オルメサルタン20 mg群)の最小二乗平均(95% CI(信頼区間):Confidence Interval)は−5.01(−6.949,−3.061)mmHg であり、95% CI の上限が事前に設定した非劣性限界(2 mmHg)を超えなかったことから、「エンレスト」200 mg群の オルメサルタン20 mg群に対する非劣性が確立されました(p < 0.001)。また、「エンレスト」200 mg群の変化量はオルメサルタン20 mg群に比べて有意に大きく(p < 0.001)、「エンレスト」200 mg群のオルメサルタン 20 mg群に対する優越性が検証されました。「エンレスト」400 mg群とオルメサルタン20 mg群との比較では、ベースラインからの変化量の投与群間差(「エンレスト」400 mg群 - オルメサルタン20 mg群)は−6.97 mmHg であり、「エンレスト」400 mg群の変化量はオルメサルタン20 mg群に比べて大きいことが示されました。また、「エンレスト」は、オルメサルタンと比較して、24時間にわたり確実な降圧効果を示すことが確認されました。安全性および忍容性については、臨床試験を通じて「エンレスト」では、重篤な有害事象及び中止に至った有害事象の発現率は低く、発現した有害事象のほとんどが軽度又は中等度であり、高血圧患者に対する「エンレスト」 投与は忍容であったことが示されています*2

高血圧症について

高血圧症とは、血圧値が正常より高い状態が慢性的に継続している病態であり、高齢者における有病率は高く、今後の高齢化に伴って患者数が増加すると予測されています*3,*4。高血圧状態が続くことにより、脳心血管疾患や慢性腎臓病等の罹患 及び死亡リスクが高まることが知られているため、血圧を適切なレベルにコントロールすることが重要です。高血圧症の治療には生活習慣の修正を含む非薬物治療と薬物治療がありますが、多くの場合、降圧目標を達成するために降圧薬による薬物治療が必要となります。日本では作用機序の異なる複数の降圧薬が使用可能であるものの、降圧薬服用者のうち血圧140/90 mmHg未満の患者の割合は50%未満にとどまっています*3。また、降圧薬服用者のうち、高血圧治療ガイドライン(JSH2019)で改訂された降圧目標130/80 mmHg未満を達成した患者さんは、年齢を問わずわずか2割ほどにとどまっているとの報告もあります*5。その背景には、SBPの血圧コントロールが困難であるという問題が指摘されており、SBPの適切なコントロールを主軸とした積極的な治療戦略が必要と考えられています。また、近年、24時間自由行動下で測定された血圧値が脳心血管疾患発症の予後予測能が高いとされている一方、既存の降圧薬は、臨床現場では24時間にわたって十分な降圧効果 を持続させることは難しいと指摘されています*3

  • 参考文献
  1. *1エンレスト錠100mg・200mg開発資料
  2. *2Novartis, data on file. Japanese Ph 3 study
  3. *3高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)
  4. *4厚生労働省 2016年国民・栄養調査
  5. *5Asayama K, Kinoshita Y, Watanabe S, et al. J Hypertens; 37(3):652-653, 2019
  • 「エンレスト®錠」の製品概要
製品名 「エンレスト®錠50mg」(Entresto® Tablets)、「エンレスト®錠100mg」、「エンレスト®錠200mg」
一般名 サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
効能又は効果* (下線部は今回追加承認された効能又は効果)
<エンレスト錠50mg・100mg・200mg>
慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
<エンレスト錠100mg・200mg>
高血圧症
用法及び用量* (下線部は今回追加承認された効能又は効果)
<慢性心不全>
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。
<高血圧症>
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。
製造販売 ノバルティス ファーマ株式会社
  • *効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。