大日本住友製薬株式会社
大塚製薬株式会社

医療関連事業
2021年9月30日

精神神経領域で開発中の4つの新薬候補化合物について
全世界を対象とした開発および販売提携のお知らせ

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「大日本住友製薬」)およびその米国子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)ならびに大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)は、本日(9月30日)、大日本住友製薬とサノビオン社が精神神経領域で開発中の以下の4つの新薬候補化合物(以下「4化合物」)について、全世界を対象とした共同開発および販売に関するライセンス契約を締結しましたので、お知らせします。

開発コード(一般名)予定適応症(現在の開発段階、地域)
SEP-363856(ulotaront) 統合失調症(フェーズ3 米国、フェーズ2/3 日本・中国)
SEP-4199 双極Ⅰ型障害うつ(フェーズ3 米国、フェーズ3準備中 日本)
SEP-378614 未定(フェーズ1 米国)
SEP-380135 未定(フェーズ1 米国)

本契約に基づき、サノビオン社は大塚製薬に対し、4化合物の全世界における開発および販売を共同で行う権利を許諾し、大日本住友製薬グループ(大日本住友製薬、サノビオン社、住友制葯(蘇州)有限公司およびスミトモ・ファーマシューティカルズ・アジア・パシフィック・プライベート・リミテッド)は、大塚製薬と共同で4化合物の開発を行います。販売については、米国、カナダ、日本、アジア(中国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア)においては大日本住友製薬グループが売上を計上し、国・地域ごとに大日本住友製薬グループと大塚製薬が原則共同プロモーションを行う予定です。欧州を含む41の国・地域では大塚製薬が売上を計上します(その他の地域については今後検討する予定)。本契約下で実施されるすべての臨床試験、各国・地域における承認申請や販売に関する費用および利益については、サノビオン社と大塚製薬で折半します。なお、ulotarontの追加適応症、SEP-378614およびSEP-380135の適応症については、今後大日本住友製薬グループと大塚製薬で協議の上、決定します。

本契約の締結により、大塚製薬はサノビオン社に対し契約一時金として270百万米ドル(約300億円)を支払うほか、4化合物の開発マイルストンとして620百万米ドル(約690億円、追加適応症の数によっては上回る可能性あり)および販売マイルストンを支払う可能性があります。

大日本住友製薬の代表取締役社長である野村 博は次のように述べています。「このたび、グローバルに精神神経領域において事業展開する大塚製薬と契約を締結できたことをうれしく思います。4つの化合物は大日本住友製薬が成長を期待する品目であり、両者で協力して価値のある薬剤をより早く確実に開発・提供し、世界のより多くの患者さんの治療に貢献できるように取り組みます。当社は、非定型抗精神病薬『ラツーダ』の米国での独占販売期間終了や将来の環境変化を見据えた取り組みとして、グローバル規模でのパートナリングによる持続的な成長を目指しており、今回の提携はその大きな一歩です」

大塚製薬の代表取締役社長である井上 眞は次のように述べています。「大塚製薬は、2002年の米国での抗精神病薬の発売からはじまり、現在に至るまで長期にわたり、自社の強みとパートナーシップの機会を活かしながら精神神経領域で世界の患者さんに貢献できる新しい治療を提供してきました。現在はアルツハイマー型認知症による行動障害の治療薬の開発や世界初のデジタルメディスンの展開など新たな分野での取り組みも進めています。本契約により、長年にわたり培ってきた経験やネットワークを活かし、両者で患者さんにとってのさらなる価値を届けることができることと期待しています」

大日本住友製薬は、2022年3月期第2四半期連結業績において、契約一時金を売上収益として計上する予定であり、2022年3月期業績予想に織り込み済みです。

(ご参考)

ulotaront(SEP-363856)について

本剤は、サノビオン社とPsychoGenics社が共同で創製したセロトニン5-HT1Aアゴニスト活性を持つTAAR1(微量アミン関連受容体1)アゴニストであり、ドパミンD2またはセロトニン5-HT2A受容体には結合しない低分子経口剤です。サノビオン社は、in vivo表現型SmartCube®プラットフォームと関連する人工知能アルゴリズムを使用してPsychoGenics社と共同で本剤を見出しました。
統合失調症患者を対象としたフェーズ2試験の結果では、統合失調症の陽性症状および陰性症状への効果を示し、錐体外路症状、体重増加、脂質およびグルコースの異常、プロラクチン上昇の副作用はプラセボと同程度でした。本試験結果は、2020年4月にNew England Journal of Medicineに掲載されました。
本剤は、統合失調症を対象として、米国においてはフェーズ3試験を、日本および中国においては国際共同フェーズ2/3試験を実施中であり、その他の適応症についても検討中です。米国食品医薬品局(FDA)は、2019年5月に本剤を統合失調症の治療のためのBreakthrough Therapyに指定しました。

SEP-4199について

本剤は、サノビオン社が創製したアミスルプリド鏡像異性体の非ラセミ混合物である低分子経口剤です。サノビオン社は、アミスルプリドの薬理作用は鏡像異性体に特異的であり、S体に対するR体の比率を増加させることにより、ドパミンD2受容体に比べてセロトニン5-HT7受容体への作用が高まることを見出しました。本剤は、抗うつ作用を強めるためにセロトニン5-HT7活性を高め、双極性障害うつ治療に適したレベルのドパミンD2受容体占有率となるようR体とS体の比率が85:15に設計されています。
サノビオン社は、2021年9月に米国において、双極Ⅰ型障害うつを対象とした本剤のランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、固定用量、国際共同フェーズ3試験を開始しました。日本も当該国際共同フェーズ3試験に参加します。

SEP-378614について

本剤は、サノビオン社とPsychoGenics社が共同で創製した中枢神経系に作用する低分子経口剤です。サノビオン社は、in vivo表現型SmartCube®プラットフォームと関連する人工知能アルゴリズムを使用してPsychoGenics社と共同でSEP-378614を見出しました。非臨床試験において、即効性かつ持続性の抗うつ薬様活性を発現し、神経可塑性を高める可能性が示唆されています。
本剤は、米国においてフェーズ1試験を実施中です。

SEP-380135について

本剤は、サノビオン社とPsychoGenics社が共同で創製した中枢神経系に作用する低分子経口剤です。サノビオン社は、in vivo表現型SmartCube®プラットフォームと関連する人工知能アルゴリズムを使用してPsychoGenics社と共同でSEP-380135を見出しました。非臨床試験において、焦燥、攻撃性、精神運動多亢進、うつ、社会的相互作用の欠如などの認知症に伴う行動・心理症状に対して有効性を示すことが示唆されています。
本剤は、米国においてフェーズ1試験を実施中です。

精神神経疾患について

精神神経疾患は、最も複雑で治療が困難な疾患の一つです。脳の疾患は、多くの場合、患者さんに障害をもたらし、患者さんのご家族や社会にも大きな影響を及ぼします。世界で約6人に1人が神経疾患を患っており*1、また、約2,900万人が双極性障害*2に、約2,000万人が統合失調症*3に罹患しているといわれています。

(出典)

  1. *1World Health Organization (WHO) Neurological Disorders: Public Health Challenges 2006
    https://www.who.int/mental_health/neurology/neurological_disorders_report_web.pdf(PDF:8.9MB)(2021年2月時点)
  2. *2World Health Organization. Global Burden of Disease, 2004 Report
    http://www.who.int(Health Topics, Global Burden of Disease, The Global Burden of Disease: 2004 Update(2013年3月時点))
  3. *3World Health Organization. Mental Disorders.
    https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/mental-disorders(2021年4月時点)

以上