大塚製薬株式会社

医療関連事業
2024年2月13日

アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを対象とした
「AVP-786」のフェーズ3試験結果速報について

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)は、米国子会社のOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)が開発している新規化合物「AVP-786」のアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(攻撃的行動及び発言、非攻撃的行動の亢進、焦燥を伴う言動等)を対象とした、有効性、安全性および忍容性を検討するフェーズ3試験(NCT03393520:#305試験)の結果速報をお知らせします。

本試験は、中等度から重度のアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション症状を有する50歳から90歳の患者さん約600名を対象とした12週間の多施設共同、ランダム化、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験です。試験結果速報では、主要評価項目であるCMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory:アジテーション症状29項目の出現頻度を評価する指標)総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、AVP-786群とプラセボ群との間に統計学的有意差は認められませんでした。

AVP-786群における有害事象のうち、発生率が5%以上で、プラセボ群よりも高かったものは転倒であり、AVP-786高用量群で16例(8.6%)、AVP-786低用量群で18例(9.1%)、プラセボ群で6例(2.8%)に認められました。試験中に報告された死亡は4例で、AVP-786低用量群で1例(0.5%)、プラセボ群で3例(1.4%)でした。なお、高用量群での死亡例は認められませんでした。本試験結果は、後日、主要な医学誌に論文として投稿する予定です。

OPDCの上級副社長兼医学責任者 ジョン・クラウスは、「この試験の結果は残念なものでしたが、今後試験結果を詳細に解析し、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの治療におけるAVP-786の将来的な可能性を判断いたします。2023年、大塚製薬はレキサルティの効能追加により、本効能の承認を米国FDAより取得した初めての企業となりました。私たちはこの分野で新たな治療選択肢を提供する努力を続けています。この臨床試験に参加していただいたすべての患者さん、介護者、医療関係者の皆様に心から感謝しています」と述べています。

【アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションについて】

アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションは、攻撃的な症状と非攻撃的な症状を含み、国際老年精神医学会において、徘徊や同じ動作の反復などの活動亢進、攻撃的発言または攻撃的行動のうち少なくとも1つ以上の症状からなり、患者さんの日常生活、社会生活、人間関係のいずれかに支障を来した状態と定義されています*1。これらの症状は、アルツハイマー型認知症の患者さんの約半数で認められ*2,3、介護者の負担を重くし、患者さん自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者さんが家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因の一つとなっています。

  1. *1Sano M et al. Agitation in cognitive disorders: Progress in the International Psychogeriatric Association consensus clinical and research definition. Int Psychogeriatr. 2023 Mar 7:1-13.
  2. *2Halpern R et al. Using electronic health records to estimate the prevalence of agitation in Alzheimer disease/dementia. Int J Geriatr Psychiatry 2019; 34: 420-431
  3. *3Fillit H et al. Impact of agitation in long-term care residents with dementia in the United States. Int J Geriatr Psychiatry 2021; 36: 1959-1969