大塚製薬株式会社

医療関連事業
2024年2月16日

新規APRIL抗体「シベプレンリマブ」
IgA腎症に対する治療薬としてFDAよりブレークスルーセラピー指定を取得

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)とVisterra Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、以下「ビステラ社」)は、シベプレンリマブ(JAN:未取得、INN:sibeprenlimab、開発コード:VIS649)がIgA腎症を対象に、米国食品医薬品局(以下、「FDA」)よりブレークスルーセラピー指定を取得しましたので、お知らせします。

シベプレンリマブは、IgA腎症の発症と進行に重要な役割を果たすと考えられている免疫細胞増殖因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)の作用を阻害するヒト化モノクローナル抗体です。*1.4.5 FDAによる本指定の判断は、大塚製薬とビステラ社が2023年11月に発表したIgA腎症を対象としたフェーズ2試験の良好な結果に基づくものです。試験結果は、The New England Journal of Medicineにも掲載*1されています。 https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2023/20231106_1.html

大塚製薬とビステラ社はIgA腎症患者さんのアンメットニーズを満たすべく、現在グローバルでシベプレンリマブのフェーズ3試験を実施しています。

  • ブレークスルーセラピー指定について

ブレークスルーセラピー指定は、重篤あるいは命にかかわる疾患に対する治療 薬の開発や審査の迅速化を目的としています。指定基準は、既存治療と比較して、少なくとも1つの臨床的に意味のある評価項目において、顕著に改善する可能性があることを示す予備的な臨床エビデンスを示すことです。

  • IgA(免疫グロブリンA)腎症について

IgA(アイ・ジー・エー)腎症は、慢性腎臓病の原因疾患である慢性糸球体腎炎の1つで、同義語としてBerger(ベルジェ)病などがあります。世界的に最も一般的な原発性糸球体腎炎であり、成人における腎不全の最も一般的な原因です*2.3。この疾患は 10 年の平均余命の短縮と関連しており*3、少なくとも最適化された標準治療にもかかわらず、罹患患者の30%は20~30 年以内に腎不全にいたります*6.7。 現在の標準治療は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)遮断薬と適切な血圧コントロールに基づくものの、腎不全のリスクは依然として高いことが課題となっています*8

  • シベプレンリマブ(INN:sibeprenlimab、開発コード:VIS649)について

シベプレンリマブは、ビステラ社が創製したヒト化免疫グロブリンG(IgG2)モノクローナル抗体であり、IgA腎症の病因に重要な役割を果たすことが証明されているガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生における重要な因子であるサイトカインAPRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)に特異的に結合し、その生物学的作用を阻害します*1.4.5

  • APRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)について

APRILは、腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)スーパーファミリーに属するサイトカインで、B細胞の分化に関わる増殖誘導リガンドです。B細胞のIgA産生細胞へのクラススイッチの誘導に関与しており、IgA腎症の病因において重要な役割を果たすサイトカインであると考えられています。

  • Visterra Inc.(ビステラ社)について

ビステラ社は大塚製薬の米国子会社である大塚アメリカ・インクの完全子会社として、腎臓病やその他の治療が困難な自己免疫疾患患者さんの治療に向けた革新的な抗体ベースの治療薬の開発に取り組んでいます。同社独自のHierotope®プラットフォームは、従来の治療アプローチでは十分に対処できなかった主要な疾患ターゲットに特異的に結合し、それを調節する生物製剤ベースの製品候補のデザインと設計を可能にしました。

  1. *1Mathur M, Barrat J, Chacko B, et al. A Phase 2 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy Patients. NEJM. 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2305635
  2. *2Floege J, Amann K. Primary glomerulonephritides. Lancet. 2016;387(10032):2036-2048.
  3. *3Hastings MC, Bursac Z, Julian BA, et al. Life Expectancy for Patients From the Southeastern United States With IgA Nephropathy. Kidney Int Rep. 2017;3(1):99-104.
  4. *4Mathur M, Barratt J, Suzuki Y, et al. Safety, Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of VIS649 (Sibeprenlimab), an APRIL-Neutralizing IgG2 Monoclonal Antibody, in Healthy Volunteers. Kidney Int Rep. 2022;7(5):993-1003.
  5. *5Chang S, Li XK. The Role of Immune Modulation in Pathogenesis of IgA Nephropathy. Front Med (Lausanne). 2020;7:92.
  6. *6Lai KN, Tang SC, Schena FP, et al. IgA nephropathy. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16001.
  7. *7Gleeson PJ, O'Shaughnessy MM, Barratt J. IgA nephropathy in adults - Treatment Standard [published online ahead of print, 2023 Jul 7].
  8. *8Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Glomerular Diseases Work Group. KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Kidney Int. 2021 Oct;100(4S):S1-S276. doi: 10.1016/j.kint.2021.05.021. PMID: 34556256.