齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.01イライラしている時、
ネイルを塗り始めると
心が落ち着くのはなぜなのか?

昔から、仕事中に突然ネイルを塗り始めるという変な癖があった。それも、あまりの忙しさにイライラしている時に限って、ネイルを塗りたくなるのである。もちろん時間がなく、とても気が急いていて、ネイルカラー等のんびり塗っている場合ではない。にもかかわらず、気がつくと塗っている、これは一体どういう心理なのだろう。自分でも不思議だった。

ともかく忙殺される中、ネイルを仕上げたところで何の意味もないのに、何となくやってしまう。その不可解さを、ある時友人たちに話したら、実は6人いた女性のうち3人までが自分にも経験があると言った。なぜ?と聞けば、皆答えは1つ。気持ちが落ち着くから。

イライラしていたり、焦って焦って前のめりになっていたり、もう半ばあきらめ気分で投げやりになっていたり、そういう切羽詰まった状態でネイルを塗ると、不思議なほど心が落ち着き、気持ちが穏やかになるからというのである。とすれば、これは誰にも当てはまる心理的作用なのではないか?そう気づいたのである。

じゃあなぜ心が落ち着くのか?じつは最近になって腑に落ちたことがある。ヒントとなったのは瞑想のテクニック。
今や瞑想は、現代人を救う大きな鍵とまで言われるほどに、重要な心のトレーニングの1つとなっている。でも瞑想ってどうやるの?難しそう。そういうイメージを持つ人がほとんどのはずだけれど、実はとても簡単。それこそただただゆっくり深呼吸するだけなのだから。

その深呼吸も特別なテクニックが要るわけではない、呼吸に集中すればいいのである。なぜなら頭を空っぽにするためだから。大切なのは頭の中にある思考を一度全て追い出すこと。何も考えず、ひたすら吸って吐いて、その時に鼻腔を通過する空気の冷たさを感じることだけ意識してほしい。

同じように、ネイルを塗るのにもちょっと特別な集中力を必要とする。ネイルを塗る時も、思わず呼吸を止めてみたり、ふーっと吐いてみたりするはず。それは、余計な考えをしっかり追い出して、ほとんど無の状態になる瞑想に似た時間を作っているのだ。
私たちの頭の中は、常に様々な思考が渦巻いていてまさにカオス状態。イライラしている時は、そのほとんどが悪い思考になっているから、それを一度に追い出してリセットすることが必要だからこそのネイル塗りなのだ。

どんなに忙しくてもネイルを塗りたくなるのは、そうした状態に自分を置く必要性を体が感じているからなのだろう。これ以上イライラし続けると、ストレスが一定量を超えてしまうという危険信号なのかもしれない。

だからそれに気付いてからは、体が求めるネイル塗りに素直に応じることにした。別に本気で仕上げなくたっていい。ベースコートだけを塗るのでも、トップコートだけを塗るのでも。何だか知らないが、指先と筆先に集中していると、頭の中が浄化されていくような清々しさを感じ、同時に心が整っていくはずなのだ。

頑張りすぎる自分は時々甘やかしてあげることも必要だし、こんなふうに突飛な行動にいきなりシフトする方法もあり。美容だって同じ。毎日毎日のフルコースのお手入れに疲れてしまったら、ちゅるちゅると飲む潤い補給の一品で済ませてしまうという、リラックスした美容に切り替えるのも良い。

かくして自分を上手に切り替えてあげることが、過度のストレスをためないコツ。急がば回れの精神で、イライラしてきたら心の整理にほんの数分間、無駄に使ってみてはどうだろう。整った自分を取り戻すために。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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