コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第1回 
「わかってもらう」って必要? 不必要?

女性はよく、「わかってくれない」とため息をつく。
夫はわかってくれない、上司はわかってくれない。
ところで、ふたりの関係性において、「わかってもらう」って、そんなに大事?

すれ違う男女脳

たしかに、女性脳にとって、「わかってもらう」=共感してもらうことは、とてもとても大事である。女性脳は、共感してもらうことで、重要な演算を動かしているからだ。
脳の中には、プロセス指向共感型と呼ばれる回路がある。右左脳連携を駆使して、「思い」を「ことば」に変える回路だ。「心の動き(感情、情緒、気分)」をキーにして、記憶を引き出す回路でもある。
多くの女性は、この回路を優先して使うように初期設定されている。このため、対話は、「思いを語り、共感で紡ぐ」のが定石である。
脳は、感情をきっかけに記憶を想起すると、その記憶を再体験する。再体験するから、最初の体験で気づかなかったことに気づく。「思い」に導かれて、過去を語る話法は、脳内では「深い気づき」を生み出す、大事な話法なのである。
この演算を完遂するためには、話し相手の共感が必須。だから、女性は、話し相手に共感を求める。脳の演算のために。女性の「わかってほしい」の正体は、自分の脳の演算の「合いの手」がほしいからに他ならない。

女性脳は共感がほしい

そして、それ以前に、女性は、「共感」に、脳が本能的かつ絶対的な安心感を得る。古代から、人類の女性たちは、群れで子育てをしてきた。周囲と連携し、おっぱいを融通し合ったり、子育ての知恵を出し合ったりすることで生存可能性を上げてきたのだ。このため、「共感」は、生存可能性が上がったことを示唆し、脳は即座に安心する。
つまり、「わかってほしい」「共感してほしい」は、女性の「脳」が欲していることであって、あなた単独の問題なのである。ふたりの問題ではない。ふたりの間の愛や信頼とは、まったく関係ない。「わかりあえるふたり」だからいいというわけでもない。

男性脳は問題を解決したい

というのも、男性脳は、共感で動く脳じゃないからだ。
こちらは、ゴール指向問題解決型と呼ばれる回路を使う。空間認知の回路を駆使して、荒野に出ていく仕様なのである。
狩りをしながら進化してきた男性脳に、共感している暇はない。とっさに、距離を測り、「もの」や「こと」のスペックを確認する。問題点を見つけ出し、即座に解決する。そうしないと命が危ないからだ。
特に、守ってあげたい相手には、これが即座に展開される。つまり、「思い」を語る妻や部下に、「きみもここが悪い」だの「こうすればよかった」だの一刀両断にしてくるのである。悪気もなければ、愛がないのでもない。いや、愛と信頼があるからこそ、「弱点をいち早く知らせて、命を守ろう」としているのである。
第1回 「わかってもらう」って必要? 不必要?/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

笑顔で頼り返すが吉

女性「ねぇ、このコンサートに行かない?」
男性「チケット、取れるのかなぁ」
女性「・・・」

女性「部長、こんなアイデアがあるんですが」
男性「資材調達、無理だろ」
女性「・・・」

これらは、実は、愛や信頼の会話なのだ(!)。
というわけで、大人の女が身につけるべき最も重要なコミュニケーション・マナーは、「わかってくれない」を気にしない、である。
もしも、いきなり問題点を指摘されたら、〝頼り返しの術〟を使うといい。

男性「チケット、取れるのかなぁ」
女性「そうなの、そこが問題なの。あなた、お願い?」
男性「資材調達、無理だろ」
女性「そうなんです。そこが悩みなんです。なにかアドバイスください」
(「それがお前の仕事だ」と叱られても、ひるむ必要はない。「ですよね。はい!」と笑顔を見せる。男は、頼られることと、女の笑顔に弱いので、どっちに転んでも得をする)

わかってもらわなくてもいい

男性脳は、おしゃべりに使うワーク領域が、女性脳の数十分の一しかない。「お願い」と可愛く言われて、それを断る理由なんて、とっさに浮かびはしないので、たいていは、男子を責任者にしてしまえる。
相手が持ってないもの(共感力)は期待しないで、持ってるもの(責任感)は、賢く使う。人間関係の極意である。
ビジネスも、嫁姑関係も同じだ。「自分がこうしてほしい」に夢中になって、「相手にないもの」を求め続けると、心は飢え続け、人生は厳しくなってしまう。
「相手がもっているもの」を上手にちゃっかり使って、人生を豊かにしていけばいい。
わかってなんかもらわなくたって、実りは手にすることができるのである。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんが、女性の人生をもっと面白くするコツを紹介します。
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)はベストセラーに。新刊『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『家族のトリセツ』(NHK出版新書)、『娘のトリセツ』(小学館新書)も話題。
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