コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第2回 
男性のことばをどう読む?

夫やパートナーのことばにイライラしてしまうのはなぜなのでしょう。その理由はことばの「読み方」にありました。

そのイライラはだれのせい?

セミナーの最後に、50代管理職の男性から、こんな質問を受けた。
「妻はなぜ、質問にちゃんと答えてくれないのでしょう?」
――先日、家に帰ったら、妻が見慣れないスカートをはいていた。「新しいのかな」と思って、「それ、いつ買ったの?」と尋ねた。すると妻が「安かったから」と答えた。「いつ」に対して「安かったから」、これおかしくないですか? 我が家ではよくあるんです。  

その場にいた男性たちは、「そうそう」と首を縦に振ったのに、女性たちは、みな失笑していた。女には、その理由が明確だからだ。
帰宅した夫に、いきなり「いつ買った?」と尋ねられたら、妻には十中八九、「そんなもの、いつ買ったんだ?」と聞こえてしまう。家計を任されている妻なら無駄遣いを責められたように感じる。だから、「安かったから」と答えたのだ。
夫って、ムカつく。たいていの妻はそう言う。イラつくことしか言ってこない、と。だけど待って。夫婦の間に「イライラ」を持ち込んでいるのは、夫ではなく、妻の脳のほうだってこと、知ってました?

ただのスペック確認

男性の質問は、純粋なスペック確認であるケースが圧倒的に多い。
「いつ、買ったの?」は、「それって新しいよね、いつ買ったの?」と言う意味であり、他意はない。男性は、「先週よ」と言われれば、それで安心して“以上、終わり”。「いいね」も「似合うよ」もなく、「風呂、湧いてる?」なんて、次の質問に入ったりする。
妻のほうは、マウンティングされた上に肩透かしを食らってイラっとするが、夫のほうは、「いつもの場所に起こった変化」の「スペック確認」をして、安心しているのである。これで、妻の機嫌さえ悪くならなければ、居心地のいい家だと思って、眠りにつくことになる。

男性の多くは、「ゴール指向問題解決型」の脳で生まれてくる。すばやくゴールをしたい、問題解決したいのである。このため、会話の多くは、スペック確認で始まる。「いきなりの5W1H(なに、だれ、いつ、どこで、なぜ、どうして)」である。

わかっていてもイライラ

つい先日も、夫のスペック確認に辟易した。洗面台で化粧をしている私に、夫が質問をしてきた。「これ、誰が置いたの?」 息子夫婦の洗面台(我が家はダブル洗面台)にシリコンスプレーが置いてあったのである。「知らない」と私は答え、アイラインを引き始めたら、「なんで、置いてあるの?」と重ねて質問してきた。
誰が置いたのかもわからないのに、なぜ、理由がわかるわけ? 私はイラっとしながら「知らない」と答える。すると、さらに夫は「何に使うんだろう?」 アイラインが曲がってしまった私は、爆発してしまった。「知らないって言ってるでしょ! そこにシリコンスプレーが置いてあることで、あなたは何か迷惑なわけ? 関係ないでしょ。関係なかったら黙ってて」
夫は、「ただ聞いてるだけなのに」としゅんとしてしまった。彼が、スペック確認をしているだけなのは、研究者として百も承知。きっと、「なにに使うのかしらね。ファスナーが滑りにくかったのかしら」とか返してあげれば安心しただろうことも。
けど、なぜ今? 今まさに、アイラインの目じりの部分を描いているときに(怒)
第2回 男性のことばをどう読む?/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

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男性脳は、ここまでスペック確認をせずにはいられないのである。「おかず、これだけ?」「今日、何してた?」「どこに行くの?」「いつ帰る?」……これらはすべて、ただの確認。ほとんどの場合、皮肉でも、責めているのでもない。
なのに、女たちは、スペック確認にイラつくばかりだ。それには理由がある。女性脳には「異性への警戒スイッチ」がある。異性からのアクション(言葉であれ行為であれ)に、「攻撃!?」と疑い迎撃する機能が搭載されているのだ。生殖リスクの高い爬虫類以上のメスの脳の辺縁系周辺に搭載された、本能のスイッチである。ちなみに、息子にだけは、このスイッチが一生、入らないのだそうだ。
このため、女性は、息子以外の男性のことばを、勝手に裏読みして、逆恨みする傾向がある。男性上司に何か提案したとき、「○○がだめだな」とダメ出しされると、女性は「自分が責められた。ダメ人間だと言われた」と感じがち。しかし、男性上司は問題点を指摘して、部下をアシストしたのである。

前回、「わかってくれない」を気にしない、が、大人の女性の最大のコミュニケーションマナーだと述べたが、その最大の秘訣は、「男性のことばを裏読みしない」である。お試しあれ。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんに聞く、女性の人生を楽しくするコツ。
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)はベストセラーに。新刊『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『家族のトリセツ』(NHK出版新書)、『娘のトリセツ』(小学館新書)も話題。
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