コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第7回 
タフな女の謝り方

突然の嫌味やお小言。イラっとしてしまいますが、うまく切り返して、もやもやを残さないようにしましょう。

子どもに厳しい人

先日、2歳の坊やをお持ちの働くママから、こんな相談を受けた。
――息子の具合が悪くて、医者に行った帰りに薬局に寄った。気分の悪い息子が、ぐずって私に抱きつこうとしたら、年配のご婦人が、鬼のような形相で、息子に「ダメ!」と叱りつけた。
息子が声を上げたのが悪かったのか、靴を履いたままで抱きつこうとしたことが気になったのか、そもそもぐずるのがダメなのか……悪いのは私たちなのでしょうが、追い詰められている母親としては、心が折れそうになってしまった。
世間が、もう少し、子どもにおおらかでもいいのではないかと思えて、もやもやしてしまう。どう考えたら、スッキリするのでしょうか。

母と子に冷たい世間

私も30年近く前、世間は、けっこう母と子に冷たいなぁと思ったことがある。会社から保育園に駆け付けて、ビジネススーツのまま息子を抱いて、公共の施設に寄ったときなんか、居合わせた年配のご婦人に、「こんな小さな子を預けて働いてるの? この子、犯罪者になるわよ」なんて言われたこともある。子どもも静かだったし、何の迷惑もかけていないのに、そんなこと言う必要ある? そんなこと、実は一度や二度じゃない。
こっちは心が折れそうになるけど、言ったほうは、「いいこと言ってやった」と思っているらしい。
そんな世間だもの、子どもが少し声を上げたり、バタバタしたりしたら、すかさず、何か言ってくるのだろう。

魔法の謝りことば

さて、そんなときの、素敵な謝りことばがある。「子どもが気に障りましたか? すみません」と言っちゃうのである。
気に障った、相手の気持ちにだけ謝るのだ。うちの子が悪いとも、自分が悪いとも言ってない。ただ、「気に障ったんですね。ごめんなさい」と言ってるだけ。
子どもは、多少の声を出すもの。初めての場所に来れば、ひとしきりはしゃいだり、ぐずったりするもの。それが気に障ったんなら、謝ります。そんな感じのニュアンスである。

「うるさくして、すみません」あるいは単に「すみません」と謝ったら、非を認めたことになるので、子どもを叱らなきゃならなくなる。心が折れる。子どもも委縮する。
「気持ちにだけ謝る」のなら、心が折れることもない。母親がど~んとかまえて平常心なら、子どもも委縮しない。相手も、謝ってもらえたので、一応の留飲が下がる。双方、丸く収まる魔法のことばだ。
第7回 タフな女の謝り方/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

正義の刃をかわしていく

子育て中のお母さんじゃなくても、「良かれと思って振りかざす、正義の刃」に傷つけられることは、女の人生の「あるある」である。
理不尽な説教に触れて、謝るのが悔しいとき、「気持ちにだけ謝る」がけっこう使える。「今どきの若い人って、○○なのね」なんて言われても、「気に障りました? すみません」で、ぜんぜんOKだ。私なんて、親戚のおばさんに「あんた、太った?」とか言われてむっとしたとき、「不快な思いをさせました? ごめんなさい」って言っちゃう。「いや、そんなつもりじゃないのよ」なんて、慌ててくれたりする(微笑)。
それにしても、なんで、年配の女性って(ときにはおじいちゃんも)、年下の女性を見ると、何か言ってやりたくなるのかしら。私も気をつけなきゃね。

タフな女の切り返し

さて、もう一つ、「気持ちだけもらう」という手もある。
誰かを引き合いに出して、欠点を指摘されたとき、言い訳をしたり、謝ったりせずに、「参考になります。ありがとうございます」と爽やかに受けてしまうのである。情報をくれた気持ちに、感謝してしまうのだ。
たとえば、接客業なら、「あそこの店では、こうしてくれるわよ」と言われてしまうこともあるのでは? 攻撃されたと思って、委縮することはない。「そうなんですか。勉強になります。参考にします」と言えばいい。
そうしますとは言っていない。採用するかどうかの自由は、こっちにある。だから、負けた気がしない。心に余裕ができてみれば、ありがたい情報である。自分たちの伸びしろがわかるのだもの。
上昇志向の強い姑に、「○○さんとこでは、塾に行かせてるって。うちはいいの?」なんて言われても、「あら、参考になります。検討してみますね」と言えばいい。
逆に「もう英語塾? 日本語もまともにしゃべれないのに」と言われたときも、「たしかに。日本語も大切にします。勉強になるわ、お母さん」とにっこりすればいい。すかさず感謝してしまえば、決定権はこちらにある。
「気持ち」と「事実」を使い分けられると、かなりタフな女になれる。お試しあれ。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)はベストセラーに。新刊『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『家族のトリセツ』(NHK出版新書)、『娘のトリセツ』(小学館新書)も話題。
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