コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第11回 
女の人生に劣等感は要らない

人を見て「いいなー」とつぶやいてしまうとき、あります。「私なんて……」と続きそうになったらストップ。黒川伊保子さんが「女の人生に劣等感は要らない」その理由を教えてくれます。

反応は人それぞれ

あなたは、驚いたとき、上がるタイプ? 下がるタイプ?
驚いたとき、上体を上げる人と、下げる人がいる。正確には、上がる人《胸が真上にひょんと上がる》、上げる人《肩をぐっと上げて、首をすくめる》、下げる人《身を縮めて、ボクサーのように身構える》、下がる人《のけぞって、後ずさる》の4種類。
わが家のおよめちゃんは、「上がる」タイプ。この間、私がトイレに入っていたのを知らずにドアを開けたおよめちゃんが、驚いて、見事に跳び上がった。まるでトランポリンで跳ねたみたいに。
私には、その感覚はまるでわからない。私は、「下がる」タイプ。のけぞるので、居酒屋の狭い壁際の椅子なんかに座っていたら、壁に後頭部を打ちつけることになる。
脳のボディ・コントローラは4種類あって、生まれつき決まっていて、一生変わらない。誰かの驚き方が気に入っても、一生真似ができない。私は、一生、居酒屋の壁で頭を打ち、およめちゃんのように可愛く椅子の上で跳ねたりはできないのである。

秘密は指にある

人の身体に、なぜ4種類の「動き方」があるかというと、骨の動かし方に4種類あるから。
私たちは、ものをつかんだり、身体を動かしたりするとき、手のひらや足裏の角度を変える。このとき、ひじ(膝)から下の骨を回旋させているのだが、人差し指につながる骨(脛骨(けいこつ)、橈骨(とうこつ))を使う人と、薬指につながる骨(腓骨(ひこつ)、尺骨(しゃっこつ))を使う人がいる。さらに、人差し指を中指側に回旋させる人《上がるタイプ》、親指側に回旋させる人《下げるタイプ》、薬指を中指側に回旋させる人《上げるタイプ》、小指側に回旋させる人《下がるタイプ》がいる。
人差し指と薬指を、中指側に集める2タイプは、指先がまとまるので、指先に力が集中するタイプ。ここからは指先タイプと呼ぶ。「上がる」「上げる」人たちだ。
残りの2タイプは、指先が広がるので、力は手のひらに集中する。ここからは手のひらタイプと呼ぶ。「下げる」「下がる」人たちだ。

動かし方でわかる

つり革につかまるとき、指先タイプは、指をかける。手のひらタイプは、つり革を握りこむ。
縄跳びを回すとき、指先タイプは、ひじを体側につけて、手首を使って、縄を跳ね上げるようにして回す。手のひらタイプは、ひじを身体から離して、縄を大きく振り下ろすようにして回す。長縄跳びで、異なる二人がペアを組むと、なかなか縄が安定しない。
逆上がりをするときも、指先タイプは手首の反動で上がり、手のひらタイプはひじの反動で上がる。指先タイプは、鉄棒から身体を離さないのに対し、手のひらタイプは、鉄棒から身体を大きく離すことになる。
ちなみに、「上がる」「下がる」タイプは順手、「上げる」「下げる」タイプは逆手でないとうまくできない。
もうお気づきでしょう。違うタイプに、とやかく言われると、逆上がりは一生できないのである。実は、そういうことが、人生には山ほどある。道具の使い方が違い(つまり使いやすい道具も違う)、所作が違い、立ち居振る舞いが違う。
わが家では、およめちゃんが使うトイレブラシと、私が使うトイレブラシが二本ある。彼女が使いやすいというブラシを私が使うと、汚水が飛び散ることになって大惨事なんだもの。
使いやすい台所道具も、その置き方もまるで違う。嫁姑間のイライラも、互いのタイプを理解すれば、かなり減るんじゃないかしら。
第11回 女の人生に劣等感は要らない/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

「私」の美しさを見つける、活かす

脚のかたちも違う。
指先タイプは、指先がまとまるので、手も足もシュッとした印象。脛(すね)がまっすぐで、カッコイイ。手のひらタイプは、指先が広がるので、膝から指先にかけて、優しいSラインを描くことになる。エレガントでセクシーだ。
指先タイプは、ハイヒールは前滑りして苦手という人も多い。実際、履いても、手のひらタイプほどにはセクシーに見えない。逆に、手のひらタイプが、指先タイプに憧れて、シュッとした脛が欲しいと願っても、それは一生無理。逆に、女らしいラインを活かす戦略に切り替えたほうがいい。
誰かの素敵が、自分の素敵とは限らない。もしも、誰かに憧れて、その人のようになれなかったとしても、劣等感を抱くことはない。その人にない美点が、必ずこちらにあるのだから。
誰かに憧れたとき、その人にない資質を探ってみて。その人のようになれないのなら、必ず、あなたにそっちの資質がある。誰もすべてを持てないし、誰もがなにかを持っている。
美点を活かしたときにのみ、人間の魅力は匂いたつ。憧れて真似したものではなく、自然に兼ね備えたそれで。それが愛される理由にもなる。というか、それを理由に愛してくれる人しか要らなくない?
女の人生に劣等感は要らない。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した家族のトリセツシリーズ(『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『息子のトリセツ』『娘のトリセツ』『家族のトリセツ』)は累計90万部を超えるベストセラーに。この11月には『母のトリセツ』(扶桑社新書)を刊行。母の「言わんでもいいこと」「余計なお世話」を優しく止める秘術。久しぶりの帰省の前に一読の価値あり。最新刊、『仕事のトリセツ』(時事通信社)も話題。
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