コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第17回 
マウンティングの沼

自分のほうが優位であると示そうとする「マウンティング」。面倒なものですね。さらりとかわす方法を黒川さんが教えてくれます。

要らぬアドバイスは、感謝と謙虚でやり過ごす

女の友情は、ちくりと痛い。
哺乳類のメスは、お産の前後、世界最弱の動物になってしまう。このため、原始の社会では、群れの中で「みんなに大切にされ、優遇されること」こそが、生存可能性を上げる大事なファクターだったので、女性脳は、自分がより優位であることを示さなければいけないという衝動にかられやすい。だから、女性たちは、マウントしたりされたりしながら、生きていく。――というわけで、今回は、マウントから逃げるコツ。

「0歳からの英語教育、始めないとだめよ。うちは始めたわ」と、ママ友に言われてイラっとする。そんな話をよく聞く。これはもう、「ありがたいアドバイス」のていで、受け止めちゃうのが一番。「ありがとう。いつも、気遣ってくれて」と、笑顔で答える。そのうえで、「でも、うちは、外国語は急がないの。日本語を完成させるのに精いっぱいだから」と言えばいい。
マウンティングし返してやりたかったら、「黒川伊保子が、母語に専念する方が理系力が伸びるって言ってるし。将来困ったら、AIに同時通訳させるからいいわ。ほほほ」と言ってやればいい。おススメはしないけど。

余計なお世話は「心配かけてごめんね」

仕事で頑張ってるのに「早く、結婚しなきゃね」。結婚したら「子どもはまだなの?」。出産後の疲れた身体に「二人目は?」。向こうはアドバイスのつもりなのだろうが、ほんっとイラッとする。昭和の昔から、女を襲う、余計なお世話グランドスラム(苦笑)。これを言われたら、「心配かけてごめんね」と、悲しそうな顔をすれば、たいていは黙らせることができる。
ところが、田舎の親戚は「出来ないの?作らないの?どうして?」なんて食い下がってくるので、さらに手を焼くことも。これについては、うちのおよめちゃんが素晴らしい手を考えついた(この連載では前にも言ったけど―第10回 いい女は、取り付く島を作らない)。田舎で、「子どもまだなの?」のブライダル・シャワーを受けたときの返答。「都会では、ゆっくりなのよ(微笑)」しっかり、マウンティング返しをしている。あっぱれ、およめちゃん。これ、「結婚」にも使えない?地方に住んでる方は、「彼氏が都会派で」をつければいい(嘘だってかまわない)。
第17回 マウンティングの沼/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

謙虚なふりして、自慢ぶっこくタイプ

70キロ超級の友人がダイエットの話をしてるのにかぶせて、「私も先週、大台に乗っちゃってぇ。50キロになっちゃったぁ」なんて、自分を卑下して話を合わせてくるのも、結局自慢話、というマウンティングもある。もしかすると無邪気なだけかもしれないけど。マウンティングのつもりで言ったとするなら、マウンティングに気づかないふりをして仲間扱いするのが、一番がっかりさせてやれる。「そうなの!?油断しちゃだめよ。大台に乗った時に、取り戻すのが肝心なんだからね」なんて、先輩面してアドバイスしてあげたりしたら、「あなたと同じにしないで~」と心の中で泣くはず。いいきみ。

ひたすら自慢するタイプは、扱いやすい

シンプルに自慢されたら、祝福してあげたらいい。そんなの可愛いもんでしょ。
「娘が医学部に入ったの」「うわぁ、頑張ったね」
「彼氏から、豪華客船の上で、サプライズ・プロポーズしてもらった」「ひゃ~、おめでとう~」
単なる自慢話は、受け手がマウンティングだと思うから、マウンティング成立しちゃうのである。笑顔で祝福しちゃえば、こちらに余裕があるように見える。それが、「言わないけど、こっちは、もっといい思いしてるんだよね~」という余裕に見えて、彼女を独り勝ちさせないのである。

マウンティング沼は、あなたの心の中にある

それにしても、友人知人に起こった「嬉しい話」に、なぜザワつくのだろう。友だちの子が東大医学部に合格?よかったじゃん。知り合いに優秀なお医者様が増えて、頼もしい限りである。イタリア旅行で、本格シチリア料理にナポリのお菓子を堪能したあげくイタリア男に言い寄られたなんて話、面白すぎない?
そう考えると、自慢話を、心がザワついて聞いていられないのは、向こうの問題じゃなくて、こちらの問題なのがわかるはず。結局、マウンティングは、片方が「マウンティングされた」と感じたときに成立するものだ。つまりね、マウンティングの沼は、あなたの心の中にあるということ。
反射的に、誰かと自分を比べて、勝ち負けをはっきりさせようとする本能。生存にまつわる大切な本能なのだが、対人関係では、これを休ませることも知らなくてはね。こういうのを、大人の教養と言うのである。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した家族のトリセツシリーズ(『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『息子のトリセツ』『娘のトリセツ』『家族のトリセツ』)は累計90万部を超えるベストセラーに。『母のトリセツ』(扶桑社新書)『仕事のトリセツ』(時事通信社)に続き、最新刊は『女女問題のトリセツ』(SB新書)。
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