遺伝子からわかる血液がんのこと

血液がんを知る

血液がんとその原因

血液がんは造血器腫瘍とも呼ばれ、血液細胞の遺伝子に異常が生じることで、血液細胞ががん化して異常に増加する病気です。増加する血液細胞の種類[未熟な細胞(前駆細胞)、成熟血球]や場所(骨髄、血中、組織)、遺伝子異常の種類などから、血液がんはさまざまな分類がされており、症状も種類によって異なります。

血液がんのしくみ

正常な血液細胞 遺伝子異常 異常な血液細胞 異常な血液細胞が増加する 血液がんの種類に応じたさまざまな症状が起こる

血液がんは一つの遺伝子異常ですぐにがんが発生するわけではなく、複数の遺伝子異常が蓄積することで起こると考えられています。

血液がんの種類

血液がんはがん化した血液細胞の種類によって、大きく骨髄系、リンパ系に分けることができ、主に下記のような病気があります。血液がんは種類により治療方針や治療法が異なるため、検査で血液細胞の見た目や遺伝子異常を調べ、種類を見分けることが重要です。

血液がんの種類

骨髄系 急性骨髄性白血病(AML) 慢性骨髄性白血病(CML) 骨髄異形成症候群(MDS) 真性赤血球増加症(PV) 本態性血小板血症(ET) 原発性骨髄線維症(PMF) リンパ系 急性リンパ性白血病(ALL) 慢性リンパ性白血病(CLL) 非ホジキンリンパ腫(NHL) ホジキンリンパ腫(HL) 多発性骨髄腫(MM)

なお、近年の技術の発達とともに原因となる遺伝子異常が明らかになってきたため、現在は遺伝子異常の種類による詳細な分類法が使用されることも多くなっています。

白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫

白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の特徴について詳しく紹介しています。

COLUMN
遺伝するがん

がんの中には、生まれ持った遺伝子異常が原因で起こる遺伝性腫瘍というがんがあります。遺伝性腫瘍のほとんどは、がんにならないようにブレーキをかけている遺伝子(がん抑制遺伝子)に異常があることで起きています。
私たちは、両親からそれぞれ遺伝子を受け継いでおり、がん抑制遺伝子についても、父親由来、母親由来の2種類の遺伝子を持っています。そのため両親のどちらかのがん抑制遺伝子に遺伝子異常がある場合、50%の確率で遺伝子異常が遺伝します。

遺伝性腫瘍の遺伝

遺伝子異常がない遺伝子 遺伝子異常がある遺伝子 遺伝子異常あり

遺伝性腫瘍に関係する遺伝子異常がある場合、がんになりやすい体質といえますが、必ず遺伝性腫瘍になるわけではありません。二つの遺伝子の片方に異常があったとしても、もう片方が機能することで、がんの発生を止めることができるためです。

遺伝性腫瘍の発生

片方の遺伝子が機能しているためがんが発生していない 遺伝子異常がない遺伝子 遺伝子異常がある遺伝子 異常がなかった遺伝子にも異常が起こる 両方の遺伝子が機能しなくなり、がんが発生する

近年、ゲノム解析技術の進歩により、血液がんになりやすい体質をもたらす遺伝子変異が見つかるようになりました。詳しい発生率などはまだわかっていませんが、今後の遺伝子研究により血液がん発症の新しいメカニズムなどが解明されるかもしれません。