遺伝子からわかる血液がんのこと

多発性骨髄腫を知る

多発性骨髄腫について

多発性骨髄腫は成熟血球の中の形質細胞ががん化して骨髄内で増加する病気です。がん化した形質細胞(骨髄腫細胞)から異常なタンパク質(Mタンパク)が大量につくられます。

Mタンパクとは

形質細胞はウイルスや細菌と戦う働きを持つ「免疫グロブリン」というタンパク質をつくる細胞です。正常な状態では一つ一つの形質細胞がさまざまな免疫グロブリンをつくっていますが、多発性骨髄腫では骨髄腫細胞からMタンパクという1種類のタンパク質のみが大量につくられます。Mタンパクは通常の免疫グロブリンとは違い、ウイルスや細菌と戦う働きを持たないだけでなく、体に有害な影響をもたらします。

免疫グロブリンとMタンパク

正常 血中のさまざまな免疫グロブリンがウイルスや細菌と戦う 多発性骨髄腫 血中にMタンパクが増加する(Mタンパクにはウイルスや細菌と戦う働きがない)

多発性骨髄腫の症状

骨髄腫細胞によってつくられたMタンパクが血中で増えると、血液をろ過する役割を持つ腎臓の働きが低下しやすくなり、むくみや吐き気などの症状が起こります。また、骨髄腫細胞は骨を壊す細胞(破骨細胞)を活性化させるため、骨が溶けて背中などに痛みを感じたり、骨折しやすくなったりすることがあります。そして、骨から血中にカルシウムが溶け出すと、だるさや吐き気などが現れます。
その他にも、骨髄腫細胞が骨髄を占領して正常な血球がつくられにくくなることで、貧血になったり、感染症を起こしやすくなったりします。

多発性骨髄腫の症状

Mタンパクによる症状 腎機能の低下 むくみ、吐き気 骨髄腫細胞による症状 骨の溶解 背中などの痛み、骨折 血中に含まれるカルシウムの増加 だるさ、吐き気 正常な血球の不足 貧血、感染症など

多発性骨髄腫の発生率

日本では、10万人あたり約5人が新しく多発性骨髄腫と診断されています(2019年)。白血病や悪性リンパ腫と比べると患者数は多くありませんが、患者さんのほとんどが50歳以上の方であるため、今後の高齢化とともに増加する可能性が高いと予想されています。

年齢別にみた多発性骨髄腫の発生率

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録).
全国がん罹患データ(2016年~2019年)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a14
(より作成)