遺伝子からわかる血液がんのこと

白血病の治療

白血病の治療について、大きく急性白血病、慢性白血病に分けてみていきます。

急性白血病の治療

急性白血病と診断された時点で、患者さんの骨髄や血中には多くの白血病細胞が存在し、免疫力の低下、貧血、脾腫などさまざまな症状を引き起こします。急性白血病では、この白血病細胞を限りなくゼロに近づけるために治療を行います。治療を行うことで、急性白血病による症状も少なくなっていきます。
具体的な治療としては、さまざまな種類のお薬を使った薬物療法(多剤併用化学療法)が中心となります。一回の治療ではすべての白血病細胞を根絶することができないため、薬物療法は①寛解導入療法、②寛解後療法(地固め療法、維持療法)と段階に分けて行います。
①寛解導入療法の効果が十分でない場合や、②寛解後療法の間に再発した場合には③救援療法が行われます。なお、再発後や、いちど寛解になったとしても薬物療法のみでは再発リスクが高い場合など、病気の状態によっては造血幹細胞移植も行われます。

  • このような、がん細胞が一定量以下に減少し、骨髄や血液中にほとんどみられない状態を「寛解」といいます。

急性白血病の白血病細胞数と治療の流れ

1.寛解導入療法 2.寛解後療法 地固め療法 維持療法 ※患者さんの状態によっては行われないことがあります。 3.救援療法や造血幹細胞移植

慢性白血病の治療

慢性骨髄性白血病の治療

慢性骨髄性白血病は、症状が比較的穏やかな慢性期から、移行期を経て急性白血病のような症状の急性転化期へと進行する病気です。病気の進行を防ぐため、症状がなくても早期から治療を開始します。
慢性骨髄性白血病で主に使われるのはチロシンキナーゼ阻害薬です。これは分子標的薬の一つで、慢性骨髄性白血病でみられるBCR::ABL1遺伝子からつくられたタンパク質による細胞の異常な増殖を抑制するお薬です。チロシンキナーゼ阻害薬を使用した後は血液検査、遺伝子検査などを行い、治療効果を確認します。慢性期から移行期、急性転化期と進行した際、チロシンキナーゼ阻害薬の効果が十分に得られない場合は、造血幹細胞移植が検討されます。また、急性転化期になるとチロシンキナーゼ阻害薬のみでは十分な治療効果が得られることが少ないため、ほかの薬物療法も併用して治療を行います。

慢性骨髄性白血病の進行と治療の流れ

症状 慢性期 症状なし~微熱 倦怠感 など 移行期 発熱 体重減少 骨痛 脾腫 など 急性転化期 免疫力の低下 出血傾向 貧血(急性白血病に似た症状) など 治療 チロシンキナーゼ阻害薬 造血幹細胞移植 その他の薬物療法
症状 慢性期 症状なし~微熱 倦怠感 など 移行期 発熱 体重減少 骨痛 脾腫 など 急性転化期 免疫力の低下 出血傾向 貧血(急性白血病に似た症状) など 治療 チロシンキナーゼ阻害薬 造血幹細胞移植 その他の薬物療法

慢性リンパ性白血病の治療

慢性リンパ性白血病は、徐々に症状が進行していくため、病気の進行度や患者さんの年齢、症状などを考慮して治療方針を決定します。症状がなければ治療を行わず、経過を観察することが一般的です。血液検査などの結果が悪くなったり、症状が出現したりしたら、薬物療法による治療が開始されます。
また、慢性リンパ性白血病では特定の染色体異常が見つかることがあり、その場合は薬物療法の効果が低いことが知られています。そのため、このような場合には患者さんの状態も考慮しながら造血幹細胞移植が選択されることがあります。

慢性リンパ性白血病の進行と治療の流れ

症状 症状なし 徐々に進行 貧血 脾腫 リンパ球の急増 体重減少 倦怠感 発熱 など 治療 経過観察 ・薬物療法 ・造血幹細胞移植