時間栄養学とは？
「時間栄養学」とは、いつ、何を、どれだけ食べれば健康にいいのかという考え方です。
時間栄養学に欠かせないのが、私たちの血圧、体温、睡眠といった体のリズムをコントロールしている「体内時計」。
ヒトの体内時計は24時間より少し長めであり、地球の自転周期の24時間とはズレがあるため、体内時計を24時間に合わせるために「リセット」する必要があります。脳の体内時計は朝の光でリセットされ、肝臓、すい臓、筋肉、腸といった臓器の体内時計は、朝の食事や運動などでリセットされることがわかっています。
「体内時計」と「栄養素や成分」の相互作用について、時間栄養学における2つの考え方を紹介します。
1．「体内時計」が栄養素や成分に働きかける
朝食、昼食、夕食に同じ食事を摂った場合、食後血糖値は夕食時が1番高く、高い状態が他の食後より長く続くことが知られています。これは体内時計が糖の吸収やインスリンの分泌を時間的にコントロールしているためです。
また、体内時計は脂肪の代謝にも関係しています。たとえば、魚に含まれるEPAやDHAの場合、夕食時よりも朝食時に摂取した方が、中性脂肪や総コレステロール値を低下させる傾向があることが報告されています。（※1）（文献1.2）
- ※1夜間に作られた胆汁（脂肪酸を消化・吸収するための液体）が朝食時に多く分泌されるため、必須脂肪酸であるEPAやDHAの吸収がよくなると考えられています。
2．「栄養素」や「成分」等が体内時計に働きかける
臓器の体内時計のリセットには朝食が大事といわれています。睡眠条件をコントロールした中で、朝食の有無により体内時計遺伝子（※2）の発現の仕方に変化があるかを調べたところ、朝食を摂らないことで体内時計遺伝子の発現のピークが1～1.5時間ずれてしまうという報告もありました。（文献3）つまり、朝食が体内時計のリセットに役立っているのです。
さらに、マウスの実験から、体内時計のリセットには、血糖上昇に伴って分泌されるインスリンやタンパク質の摂取で分泌される物質（IGF-1）が関わっていることもわかっています。（文献4）
栄養素や成分は、摂取する時間で効果が変わると考えられます。そして、臓器の体内時計をリセットするために重要な朝食では、特に炭水化物とタンパク質の摂取が大切です。
- ※2体内時計遺伝子とは、ヒトのほぼすべての細胞に存在すると言われ、臓器ごとに固有の遺伝子発現のピークがあり、リズムを刻んでいるとされる遺伝子。睡眠や食事のリズムと関連しています。遺伝子発現ピークとは体内時計が動き出す時間のこと。
引用文献
（1）Dietary fish oil differentially ameliorates high-fructose diet-induced hepatic steatosis and hyperlipidemia in mice depending on time of feeding.
Oishi K, Konishi T, Hashimoto C, Yamamoto S, Takahashi Y, Shiina Y.J Nutr Biochem. 2018 Feb;52:45-53. doi: 10.1016/j.jnutbio.2017.09.024. Epub 2017 Oct 12.
（2）Time-of-day effects of consumption of fish oil-enriched sausages on serum lipid parameters and fatty acid composition in normolipidemic adults: A randomized, double-blind, placebo-controlled, and parallel-group pilot study.
Konishi T, Takahashi Y, Shiina Y, Oike H, Oishi K.Nutrition. 2021 Oct;90:111247. doi: 10.1016/j.nut.2021.111247. Epub 2021 Mar 24.
（3）Meal Timing Regulates the Human Circadian System.
Wehrens SMT, Christou S, Isherwood C, Middleton B, Gibbs MA, Archer SN, Skene DJ, Johnston JD.Curr Biol. 2017 Jun 19;27（12）:1768-1775.e3. doi: 10.1016/j.cub.2017.04.059. Epub 2017 Jun 1.
（4）Glucagon and/or IGF-1 Production Regulates Resetting of the Liver Circadian Clock in Response to a Protein or Amino Acid-only Diet.
Ikeda Y, Kamagata M, Hirao M, Yasuda S, Iwami S, Sasaki H, Tsubosaka M, Hattori Y, Todoh A, Tamura K, Shiga K, Ohtsu T, Shibata S.EBioMedicine. 2018 Feb;28:210-224. doi: 10.1016/j.ebiom.2018.01.012. Epub 2018 Jan 31.