食物繊維を摂ろう!

食物繊維の摂取タイミング

健康的に過ごすためには、規則正しい食生活と、栄養バランスが大切です。
毎食、食物繊維を摂ることは栄養バランスを考えるうえで基本ですが、時間栄養学の観点から食物繊維について考えると、摂取タイミングによってその働きに違いが起きることもわかってきました。

腸内環境と摂取タイミングの関係

腸内には多種多様な菌が生息しており、菌の多様性が腸の健康バロメーターになっています。腸内細菌の種の多様性は年齢、食生活、ストレスなど様々な要因の影響を受けると低下します。
腸内環境がよいと健康へのメリットが大きく、悪くなると病気のリスクが高くなる、といわれています。

また、最近では食物繊維などをエサにして作られる「短鎖脂肪酸」も注目されています。この短鎖脂肪酸はヒトの大腸において、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵することにより生成されます。短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性にさせ腸内環境の改善、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進、免疫系の調整や血糖をコントロールするなど、健康を維持するための作用があります。

腸内環境改善のカギともいわれる「腸内細菌叢の形成の種多様性」や「短鎖脂肪酸の産生」に関して、1日の中での食物繊維の摂取タイミングが影響を及ぼすという報告があります。

腸内環境の悪化を招く「高脂肪食」を、マウスへ朝・夕2食与える実験(※)において、①朝食にイヌリン(水溶性食物繊維の1種)を摂取するグループ、②夕食にイヌリンを摂取するグループ、③高脂肪食のみを与えるグループで腸内細菌叢への影響の違いを観察しました。(文献1)

その結果、①群では、短鎖脂肪酸が多く産生され、腸内環境が改善。②群は腸内細菌叢の状態が③群に近い状態になり、③群では腸内環境が悪化しました。

  • マウスの活動期の初期に与える餌を朝食とし、活動期の後期に与える餌を夕食と定義しています。

体内時計のリセット効果と摂取タイミングの関係

マウスにセルビオース(水溶性食物繊維の1種)を投与して体内時計への影響を実験したところ、肝臓の体内時計がリセットされました。また、水溶性食物繊維をエサに腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸を投与しても、同様の結果となりました。(文献2)
つまり、朝食時に水溶性食物繊維をとることで、短鎖脂肪酸の産生量が増え、末梢の体内時計のリセット効果が促進されると考えられます。

引用文献

(1)Mice Microbiota Composition Changes by Inulin Feeding with a Long Fasting Period under a Two-Meals-Per-Day Schedule.
Sasaki H, Miyakawa H, Watanabe A, Nakayama Y, Lyu Y, Hama K, Shibata S.Nutrients. 2019 Nov 16;11(11):2802. doi: 10.3390/nu11112802.

(2)Gut Microbiota-Derived Short Chain Fatty Acids Induce Circadian Clock Entrainment in Mouse Peripheral Tissue.
Tahara Y, Yamazaki M, Sukigara H, Motohashi H, Sasaki H, Miyakawa H, Haraguchi A, Ikeda Y, Fukuda S, Shibata S.Sci Rep. 2018 Jan 23;8(1):1395. doi: 10.1038/s41598-018-19836-7.