マウス/ラットアディポネクチンELISAキット

キット概要
マウス/ラットアディポネクチンELISAキット

開発の経緯及び特徴

マウスアディポネクチンは、1995年に米国MITのLodish等により、マウス3T3-L1 細胞の分化過程に誘導される、補体C1q類似の分子adipocyte complement-related protein of 30kD(Acrp30)として報告された分子です。脂肪細胞に分化させたマウス3T3-F442A細胞からSpiegelman等により単離されたadipoQも同一分子です。また、1996年に当時の大阪大学医学部第二内科、松澤らのグループによりヒト脂肪組織中に特異的に発現する遺伝子apM1(adipose most abundant genetranscript)として新たに同定されたアディポサイトカインは、Acrp30/adipoQとアミノ酸レベルで83%のホモロジーがあり、それぞれカウンターパートと考えられています。近年の研究結果から、アディポネクチン遺伝子のノックアウトマウスは、野生型マウスに比しインスリン抵抗性を発症しやすく、かつ動脈硬化性病変に罹患しやすい性質を有すること等が示されました。 ヒトにおいても、アディポネクチン濃度の低下と糖尿病及び動脈硬化等の代謝異常症候群との関連が報告されています。本キットは、松澤らとの共同研究により開発された酵素免疫測定法(ELISA 法)であり、標準品にはリコンビナントマウスアディポネクチンを用いています。本キットは、マウス及びラットの血清や脂肪細胞抽出液又は培養上清中のアディポネクチンを特異的に精度よく簡便に測定することが可能です。

  • 本キットは研究用試薬であり、疾病の診断若しくはその補助の目的で使用することはできません。
キット構成

キット構成

付属品:プレートシール6枚
測定方法

測定方法

  1. 1必要器具、機器等
    1. 1メスシリンダー
    2. 2メスピペット
    3. 3マイクロピペット及びチップ
    4. 4プレートウォッシャー
    5. 5ペーパータオル
    6. 6プレートリーダー(測定波長:450nm)
    7. 7マイクロチューブ等(容量1.5mL以上の密閉可能な容器)
  2. 2試薬の調製法・保存法
    1. 1洗浄液
      洗浄用原液全量(40mL)に精製水を960mLの割合で混和し調製する。洗浄用原液に結晶が析出している場合は、加温して溶解後に調製し、調製後は2~8℃で保存する。
    2. 2検体希釈液
      検体希釈用原液全量(50mL)に精製水を200mLの割合で混和し調製する。調製後は2~8℃で保存する。
    3. 3標準液
      標準品8.0ng/mLを検体希釈液で2倍段階希釈して4.0ng/mL、2.0ng/mL、1.0ng/mL、0.5ng/mL、0.25ng/mLの濃度の標準液を調製する。なお、標準液8.0ng/mLは標準品8.0ng/mLを、0ng/mLは検体希釈液を使用する。
    4. 4酵素標識ストレプトアビジン液
      酵素標識ストレプトアビジン希釈液 12mLに酵素標識ストレプトアビジン原液を60μLの割合で混和し、必要量調製する。第3反応の直前に調製し、速やかに使用する。
    5. 5基質液
      基質液B 6mLに基質液Aを6mLの割合で混和し、必要量調製する。発色反応の直前に調製し、速やかに使用する。
  3. 3測定操作法
    測定操作法
性能

1.感度試験

標準液8.0ng/mLの吸光度は1.0以上を示した

2.再現性試験

自社施設において、濃度の異なるマウス血清及び、ラット血清(各2種類)を同時に4回測定したとき、変動係数は10%未満であった。自社施設において、上記の検体を6回繰り返して測定したとき、変動係数は15%未満であった。

3.測定範囲

0.25ng/mL~8.0ng/mLのマウスアディポネクチンを測定することができる。また、自社施設において、最小検出限界は15.6pg/mLであった。

FAQ
Q
キットの有効期限は?
A

本キットの有効期間は製造日より18ヵ月間です。なお、使用期限はキットの外箱に表示してあります。必ず2~8℃で保存してください。

Q
キットの分割使用は可能か?
A

4回までの分割使用が可能です。残りの構成試薬は密閉して2~8℃で保存してください。(分割使用の場合は、プレートシールは必要分を切り取り使用してください。)

Q
キットをプールしての使用は可能か?
A

抗体プレート以外は、同一ロットの構成試薬をプールして使用することが可能ですが、ロットの異なるキットを組み合わせて使用することはできません。

Q
キット使用時の温度は?
A

必ず各構成試薬を22~28℃に戻してから使用してください。

Q
測定可能な検体は?
A

マウス及びラット血清や脂肪細胞抽出液あるいは培養上清中のアディポネクチンが測定可能です。なお、標準品にはリコンビナントマウスアディポネクチンを使用しているため、ラットの測定値はマウスアディポネクチン当量として算出されます。

Q
標準品、血清の凍結融解による影響は?
A

標準品(8.0~0.25ng/mL、0ng/mL)および、未処理検体(マウス、ラット血清、培養上清*を各々1例)、希釈検体(マウス血清10201倍希釈、ラット血清及び培養上清1111倍希釈を各々1例)を用いて5回までの凍結融解を繰り返したとき、測定値に影響は認められませんでした。

  • *培養上清 : 脂肪細胞に分化誘導させた3T3-L1細胞の培養上清
希釈検体安定性
原液検体安定性
Q
検体(血清、培養上清及び希釈検体)の保存方法は?
A

必ず凍結保存(-70℃以下が望ましい)してください

Q
検体(血清、培養上清及び希釈検体)の冷蔵(4℃)での安定性は?
A

未処理検体及び希釈検体共に冷蔵(4℃)で7日まで測定への影響は認められませんでしたが、できる限り凍結保存してください。

希釈検体安定性
原液検体安定性
Q
検体(血清、培養上清及び希釈検体)の室温(25℃)での安定性は?
A

未処理検体及び希釈検体共に室温(25℃)で8時間まで測定への影響は認められませんでしたが、できる限り凍結保存してください。

希釈検体安定性
原液検体安定性
Q
高値検体の希釈方法は?
A

前処理後、検体希釈液でさらに希釈後測定してください。検体中のアディポネクチン濃度は、実測値に希釈倍率を乗じて算出してください。

Q
インキュベーション温度の許容範囲は?
A

22℃~28℃でほぼ同じ測定結果が得られます。

22℃~28℃の測定結果
Q
標準曲線の作成法は?
A

標準曲線は、横軸に標準液の濃度を、縦軸に実質吸光度(各検体の吸光度から0ng/mLの吸光度を差し引いた値)をプロットし、両対数変換の二次回帰等を当てはめることにより作成します。

Q
測定範囲は?
A

0.25~8.0ng/mLのアディポネクチンを測定することが可能です。また自社施設における最小検出限界は15.6pg/mLでしたので、必要に応じ標準液の希釈系列を延長し、低濃度領域を正確に測定することも可能です。

Q
再現性は?
A

同時再現性試験として4種類の管理試料を同時に8回測定した時の変動係数(CV)は10%未満でした。また測定間再現性試験として同じ試料を6回繰り返して測定した時の変動係数(CV)は15%未満でした。さらに4名の異なる測定者により測定者間再現性試験を行ったとき、変動係数(CV)は10%未満でした。

測定内再現性試験【8重測定】(単位:ng/mL)
測定間再現性試験【8重測定×6回】(単位:ng/mL)
測定間再現性試験【8重測定×4名】(単位:ng/mL)
Q
添加回収試験は?
A

以下のように良好な結果を得ています。

Q
希釈直線性は
A

4種類の検体を検体希釈液によって測定範囲内に収まるように希釈し、さらに2倍、4倍、8倍、16倍希釈後測定した結果、以下に示すように良好な希釈結果が得られました。

希釈結果
Q
各種動物血清への反応性は?
A

交差反応性を示さない動物検体

下記動物血清を1111倍希釈した後、本キットを用いて測定した結果、何れの血清も測定範囲下限(0.25ng/mL)未満であることを確認しました。

交差反応性を示した動物検体

ヒトおよびイヌ血清を表中に示す希釈率で測定した結果、血清中アディポネクチンを検出できることを確認しました。しかしながら本キットの標準品には、リコンビナントマウスアディポネクチンを使用しているため、それぞれの測定値はマウスアディポネクチン当量として算出されます。よって、本キットで得られるヒト血清の測定値は、ヒトアディポネクチンELISAキットの測定値とは異なります。

Q
マウス/ラットアディポネクチンの免疫抗原は?
A

マウス/ラットアディポネクチンの免疫抗原は、大腸菌で作成したリコンビナント蛋白を用いています。リコンビナント蛋白は、マウスの全長アディポネクチンで分子量は約27kDです。

Q
アディポネクチンの血中での状態は?
A

マウス血中、および培養細胞におけるマウスアディポネクチンの存在様式が論文にて報告されています。
HEK細胞および3T3-L1細胞の培養上清中には、6量体と3量体の存在が確認されており、さらに高分子の多量体を形成している可能性もあります。同様に、マウス血清中においても6量体および3量体が確認されており、さらに高分子に多量体を形成している可能性があります。

Q
3T3-L1の脂肪細胞分化誘導方法は?
A

ご参考までに弊社での培養条件は以下のとおりです。

参考文献 Fasshauer,M. et al; FEBS letters,500,60-63,2001