大塚製薬 認知症特設サイト・インタビュー

認知症とともに生きる社会へ。
「認知症の人と家族の会」の歩みとこれから。

認知症とともに
生きる社会へ。
「認知症の人と家族の会」の
歩みとこれから。

認知症の人と家族の会
川井 元晴 代表理事

これまでの「認知症の人と家族の会」の取り組みが、どんな場面で政策や地域支援とつながってきたと感じますか?

「認知症の人と家族の会(以下「家族の会」)」は、認知症の本人と家族が安心して暮らせる社会をめざし、相談支援・交流会・啓発活動を全国で展開しています。本部と全国の支部が連携し、それぞれの歴史や活動実績を活かしながら地域で取り組んでいる会です。支部ごとに特色があることが大きな強みだと感じています。

私たちは、共生社会の実現を推進するための認知症基本法(以下「基本法」)が制定されるより前から、認知症になっても介護する側になっても、安心して暮らせる社会をつくりたいという思いで活動してきました。基本法に示された「地域で安心して暮らせる」「尊厳を保ちながら、やりたいことができる社会」という方向性は、まさに私たちの理念と重なるものです。

家族の会は2026年に46年目を迎えますが、社会の流れの中に、私たちの取り組みが確実に反映されてきたと実感しています。各地で家族の集いが開かれ、認知症カフェも広がり、9月の世界アルツハイマー月間には啓発活動やオレンジライトアップが定着してきました。

基本法が策定されて以来、自治体が推進計画をつくる際に、本人や家族の会のメンバーを委員として迎えたいという要請が増えています。行政が本人や家族の声を重視してくださるようになった証だと思います。創設期と比べると、状況は大きく変わりました。

長年活動される中で、認知症の人やご家族の悩みや相談内容にどのような変化が見られますか?その背景にある社会や地域の変化についても教えてください。

長く活動する中で、寄せられる相談には、変わってきた部分と変わらない部分があると感じています。

まず変わってきた点ですが、新しい治療薬の登場もあり、早く治療した方がよいか、どこを受診すればよいか、といった医療に関する問い合わせが増えています。また、制度利用にあたって、どう使えばいいかわからない、担当者との関わりが難しい、といった相談も多くなっているように感じます。

一方で、ずっと変わらない悩みもあります。認知症になること、介護すること、いずれもこれまでの生活から変化が生じたり、経験していないことを経験する機会にもなります。認知症と診断された後にどう対応したらよいかわからない、どこに相談すればよいかわからない。また、認知症の人に思わず怒ってしまい、困っている、といった悩みは今も多く、介護支援や家族の会のようなピアサポートなどにつながるまで時間がかかる状況はあまり変わっていません。

ただ、時代により違いがあると感じています。以前は情報が少なく、認知症とは何か、どこに相談すればよいか、といった基本的情報から伝える必要がありました。今は情報が広がり、事前に調べて基本情報を理解している家族の方が増えています。しかし、頭では分かっていても本人に寄り添った接し方を実行できない、接し方を変えられない、自分を責めてしまうなど、感情の整理が難しいというジレンマが増えている印象です。

悩みの形は変わっても、自分の家族が認知症と診断されたときにどう向き合えばよいのか、という根本の不安は今も昔も変わらないと感じています。

認知症への理解を広げるための啓発活動(世界アルツハイマーデー)

認知症とともに生きる未来を考えるとき、川井代表が思い描く共に支え合う社会の姿とはどのようなものでしょうか?

共生社会とは、私は“認知症とともに、そして認知症の人とともに生きる社会”だと考えています。地域での共生を思い描くと、周囲が、「この人は認知症だ」と気づく場面は多くありません。それでも、認知症の希望大使の方々や、本人による発信が広がり、認知症のイメージは大きく変わってきました。認知症は怖い病気ではなく、誰にでも起こりうるもので、安心できる環境があれば地域で暮らし続けられる。こうした新しい認識が少しずつ広がっています。

これからは、本人と家族が、それぞれの立場で感じていることや経験を社会に伝えていくことがより重要になります。昨年公表した「認知症の人とともにある家族の権利宣言」でも示したように、家族もまた認知症によって大きな影響を受けるため、支えが必要な存在です。同時に、その経験を生かし、次の人の助けとなるピアサポートを担うこともできます。

本人と家族、それぞれの声が社会に届き、支え合いが広がっていくことが、認知症とともに地域で暮らす共生社会の実現につながると考えています。認知症だからと特別扱いするのではなく、これまで築いてきた関係性を大切にしていただきたい。人柄や人生の歴史は変わりません。尊厳、尊重、信頼関係を保ちながら、これからを一緒にすすんでいくことが何より大切だと思っています。

※認知症の人からの発信の機会が増えるよう、認知症本人の方が「希望大使」として任命されています。

大塚製薬が取り組む『認知症を孤独な病気にしない』社会づくりに対して、どのように感じられますか?

『認知症を孤独な病気にしない』という取り組みは、認知症に限らず、さまざまな病気や境遇にも通じる大切な視点だと感じています。私は、現代は少し考えすぎてしまうところがあるのではないかと思っています。

昭和30〜40年代のように、近所づきあいが濃く、誰がどこに住んでいるのかが分かる社会では、自然に助け合いが生まれていました。地域のつながりがあるからこそ、知り合いが困っているなら助けるというごく当たり前の関係性がありました。

今はSNSの普及や生活環境の変化から、地域の関係性が希薄になり、高齢の方でも日常的に近所の人と話す機会が少なくなっています。認知症の人と家族を孤立させないためには、認知症に特化した取り組みだけではなく、地域の人間関係そのものを取り戻すことが重要だと思います。

やはり人をよく知ることや関係性を築くことこそが、支え合う社会の根本だと感じています。