~長く健康でいるための生活習慣と栄養素~

健康診断

高血圧って、どんな病気?
その原因とリスクについて

高血圧とは、心臓から送り出される血液が動脈を流れる時に血管の内側にかかる圧力が高い状態をいいます。そのままにしておくと血管がもろくなり、破れたり(出血)、詰まったり(血栓や塞栓)、血管自体が硬く厚くなり(動脈硬化)やすくなります。
進行していても自覚症状がほとんどなく、早期発見が難しいのが高血圧の特徴です。それでいて静かに進行し、命を危険にさらすことから「サイレントキラー」とも呼ばれています。

高血圧は、収縮期血圧が140mmHg以上の場合、拡張期血圧が90mmHg以上の場合、どちらかまたは両方を満たす場合に診断されます。
※「高血圧治療ガイドライン2019」より

血圧を高める原因には、次のようなものがあります。

  • 塩分の摂りすぎ
  • 喫煙
  • 疲労やストレス
  • 肥満
  • 過度な飲酒
  • 運動不足
  • 遺伝的体質

栄養のバランスが偏った食生活、運動不足、タバコを止められない、疲労・ストレス過多、睡眠不足が、高血圧になりやすい良くない生活習慣といえます。
肥満は高血圧になりやすい原因の一つですが、特にウエストまわりに脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」の方が「皮下脂肪型肥満」の方より高血圧のリスクが高いことがわかっています。お腹がぽこんと出ていることから「リンゴ型肥満」とも呼ばれる体型です。

血圧が高いまま放置していると、心臓や脳で命に関わる重い病気を発症するリスクが高まります。例えば、下記のような病気です。

心臓の病気

  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 心不全 など

脳の病気

  • 脳梗塞
  • 脳出血 など

「何も不調がないから、まだ大丈夫」などと軽視せず、できるだけ早いうちから血圧コントロールを行うことが大切です。

高めの血圧の対処法は?
『8つの生活習慣』を実践

「実際にはどうしたら、高めの血圧が改善できるの?」という疑問もあるでしょう。
高血圧になってしまう状況や生活習慣は何となく理解できていても、具体的にどんなことに気を付ければ改善できるのか解らないという場合、まずは『8つの生活習慣』を心がけてみませんか?

1.減塩する

「日本人の食事摂取基準(2020年版18歳以上)」では、食塩の目標量は男性7.5g未満、女性6.5g未満ですが、摂取量は男性10.9g、女性9.3g(国民健康・栄養調査令和元年20歳以上)と日本人は塩分を摂りすぎる傾向にあり、高血圧のリスクが高いといえます。
食品の購入時には栄養成分表示もチェックしてみてはいかがでしょうか。また、「減塩のコツ」を知って、毎日の食生活に役立てましょう。

減塩のコツ

  • 食塩の代わりに出汁(ダシ)の「うまみ」でおいしく食べる。醤油は出汁で割る。
  • 食材は新鮮なものを選ぶ。新鮮なものは素材の味が濃いので味付けが薄くて済む。
  • 唐辛子、こしょう、しょうが、レモンなど、香辛料や柑橘類の酸味を活かす。
  • みそや醤油、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシングなどの調味料は塩分控えめを選んで使う。
  • 漬け物は塩分を多く含む食品が多いため、食べすぎに注意する。
    例えば、食べる時は自家製の浅漬けにして少しだけ食べる。
  • 加工食品・スナック菓子・インスタント食品は塩分を多く含む食品が多いのでできるだけ控える。
    そばやうどん、ラーメンなどの汁物を食べる場合は、汁をできるだけ残す努力をする。
  • 外食は、おいしさを感じさせるために塩分を多く使っている食事が多いことに注意する。

2.禁煙をめざそう!

高血圧の予防と改善のためには、禁煙にも取り組みましょう。タバコは体に多くの害をもたらしますが、血圧を高めることも明らかになっています。
タバコに含まれるニコチンなどの化学物質は、血管を収縮させる作用があるため、結果的に血圧を高めてしまいます。今日から減煙に取り組み、禁煙を目指しましょう。

3.飲酒は控えめに

適度な飲酒はアルコールの作用により血管が拡張され、血圧を一時的にさげますが、過剰な飲酒は血圧を高めてしまい、脳や心臓の血管の病気を引き起こすリスクを高めることが明らかになっています。
しかしながら、血圧を高める原因のひとつである疲れやストレスを、飲酒で解消することもあるという人もいるでしょう。そんな時は少量の飲酒にとどめ、飲み過ぎには十分注意しましょう。
血圧を高めないためにも、1日の飲酒量は適度に抑えましょう。

アルコールの適量の目安は、男性は1日16~24g以下、女性は8~16g以下です。
※「高血圧治療ガイドライン2019」より

お酒の種類と
アルコール20gの目安

  • ビール/アルコール度数5度なら:
    中びん1本(500㎖)
  • 日本酒/アルコール度数15度なら:
    1合(180㎖)
  • 焼酎/アルコール度数25度なら:
    0.6合(約110㎖)
  • ウイスキー/アルコール度数43度なら:
    ダブル1杯(60㎖)
  • ワイン/アルコール度数14度なら:
    1/4本(約180㎖)
  • 缶チューハイ/アルコール度数5度なら:
    ロング缶 1缶(500㎖)
※アルコール量の計算式:お酒の量(㎖)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8
例)ビール中びん1本 500×[5÷100]×0.8=20
※「アルコール健康医学協会」より

お酒のつまみは塩分とカロリーが高い食品が多いので、気を付けましょう。ハムやベーコン、ジャーキー、さきいかなどの加工食品は塩分が高いのが特徴です。締めのラーメンやお茶漬けも塩分が多く含まれているので注意しましょう。

4.運動量を増やす

まずは日常生活の中で、少しずつ体を動かす機会を増やすことから始めましょう。
運動の習慣がない人が、いきなり激しいトレーニングをするのは難しいことです。まして肥満やメタボで体重が増えているのに急に無理な運動をすると、膝や足を痛めかねません。
ウォーキングなどの軽強度の有酸素運動などに取り組むことも血圧を高めないためには有効です。

100キロカロリーを消費する
日常の生活動作や運動の目安

100キロカロリー消費する身体活動とは、どのようなものでしょうか?元々の体重によってかかる時間に差はありますが、ここでは平均的な目安を紹介します。

日常の生活動作の目安

  • 普通に歩く:24分~38分
  • 屋内を掃除する:24分~38分
  • 掃除機をかける:20分~33分
  • お風呂を掃除する:19分~30分
  • 自転車に乗る:18分~29分
  • 階段を上がる:9分~14分

運動の目安

  • ジョギング:10分~16分
  • 軽いストレッチ:20分~33分
  • 水泳:6分~10分
  • ボウリング:24分~38分
※「健康づくりのための身体活動基準2013」より算出

無理をしすぎて膝や腰を傷めないように気を付けましょう。
ゆっくりのペースでも、毎日コツコツ続けることが、よい結果につながります。

5.ストレスを溜めない

過労や睡眠不足など、ストレスが多い生活も、血圧を高める原因です。
ストレスを溜めないようにといわれても、なかなか難しいものでしょう。
湯舟にゆっくり浸かる、ユーモラスな映像を見て笑うといったささやかなことでいいので、毎日の生活に緊張や悩みがつきないと感じているなら、リセットできる時間をつくりましょう。

6.血圧を計る習慣をつける

健康診断で血圧が高めと指摘された方は、家庭用の血圧計を購入し、なんともないと感じている今のうちから自宅で毎日測る習慣をつけ、血圧の高まりを早くチェックすることもおすすめです。

7. 栄養素を工夫した食事

野菜やフルーツに多く含まれるカリウムは、塩分(ナトリウム)を尿中へ排出を促す作用があるため血圧を低下させることが期待できます。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、カリウムの1日あたりの摂取目標量を18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上としています。一方で、平成29年国民健康・栄養調査では、20歳以上のカリウム摂取量は男性2,382mg、女性2,256mgであり、目標量には届いてないため積極的な摂取が推奨されます。ただし、フルーツには果糖などの糖質が多く含まれる種類もあるため、摂りすぎには注意しましょう。

血圧に対する栄養素を工夫した食事の例として「DASH食」があります。アメリカの研究グループが提唱し「DASH食」は、血圧を低げる効果があることを確認し、論文報告しました。DASH食とは、前述のカリウムのほか、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質の栄養素の摂取量を増やし、飽和脂肪酸とコレステロールを減らす様に食材を工夫した食事のことです。DASH食と減塩を組み合わせることで、さらに降圧効果が期待できます。
具体的には、EPAやDHAなどの必須脂肪酸を豊富に含む魚、全粒粉や玄米などの穀物、野菜、果物、豆類などを豊富に取り入れ、飽和脂肪酸やコレステロールの多い肉類を控えた食事を摂ることは「DASH食」をヒントにした食事につながり、降圧効果が期待できます。

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8. 適正体重を維持する

平成29年「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上男性の肥満割合は25%を超え、特に30歳代~60歳代では30%以上でした。女性の若年層は、標準体重未満の痩せの割合が高いという問題も指摘しています。また、加齢とともに肥満割合は増加し、50歳以上の20%以上が肥満でした。

肥満と高血圧発症リスクとの関連は様々な研究から明らかであり、若い頃は痩せていた・今は痩せているという人でも、体重が増加すると高血圧を発症しやすくなるため注意が必要です。

「高血圧治療ガイドライン2019」は、BMIを25未満に維持することを推奨しています。
※BMI=(体重Kg)÷ (身長m)÷(身長m)
計算例)体重80Kg、身長160cmの場合 
80÷1.6÷1.6=31.25 BMIは31.25

高血圧の予防のために

高血圧は自覚症状がほとんどありません。
自分で気づくことが難しいので、毎年必ず健康診断を受けることが大切です。
また、ご家族に高血圧の人がいる場合、遺伝的体質を受け継ぐ可能性が高いので、より注意が必要です。

  • 減塩のコツを実践する
  • 禁煙をめざそう!
  • 飲酒は控えめに
  • 運動量を増やす
  • ストレスを溜めない
  • 血圧を測る習慣をつける
  • 栄養素を工夫した食事
  • 適正体重を維持する

以上のことを日常的に実践し、血圧が高くならないように心がけましょう。