大塚製薬株式会社

医療関連事業
2014年6月27日

3製剤の有効成分を揃えて医療現場のニーズに応える
カルニチン欠乏症に「エルカルチン®FF錠」剤形追加の国内承認取得

  • 国内で大塚製薬だけが販売しているカルニチン欠乏症治療薬「エルカルチン®錠」※1に、2013年に発売の内用液剤や注射剤と同じ有効成分レボカルニチン(フリー体)を使用した錠剤の承認を新たに取得
  • 「エルカルチン®FF錠」は、錠剤に注射剤・内用液剤と同じ有効成分を使用することで投与量の換算をしやすいように医療現場における利便性を考えて開発した
  • カルニチン欠乏症は、先天性代謝異常症の患者さんや血液透析患者さんなどにみられ、筋肉の痛み、疲労感や高アンモニア血症、重症になると低血糖発作による昏睡などの症状がある

大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 岩本太郎、以下、大塚製薬)は、レボカルニチン製剤の新しい剤形として「エルカルチン®FF錠100mg」および「エルカルチン®FF錠250mg」(一般名:レボカルニチン)について、カルニチン欠乏症の効能・効果で6月26日に国内製造販売承認を取得しました。

大塚製薬は、「エルカルチン®錠」を1990年に「プロピオン酸血症およびメチルマロン酸血症におけるレボカルニチン欠乏の改善」の効能・効果で発売し、その後学会等の要望で公知申請※2により2011年3月に「カルニチン欠乏症」への適応および用法・用量の変更を行いました。

2013年2月に新有効成分として、レボカルニチン(フリー体、FF: Free Form)を用いた2製剤、「エルカルチン®FF内用液10%」と「エルカルチン®FF静注1000mg」を発売しました。「エルカルチン®FF内用液10%」は錠剤が飲めない患者さんのために、「エルカルチン®FF静注1000mg」はカルニチン欠乏により起こる急性期の脳症、高アンモニア血症等の患者さんや、経口摂取ができない患者さんに対して速やかに補充できる製剤として使用できるようになりました。しかし、従来の「エルカルチン錠」は塩化物であることから、錠剤から内用液剤に変更する場合やその逆の場合には、投与量の換算をして処方をしなければいけない複雑さがありました。

今回承認取得した「エルカルチン®FF錠」は、レボカルニチン(フリー体)を使用しているため、こうした投与量換算の複雑さがなく、医療現場における利便性の観点から望まれると判断し製剤開発を進めてきたものです。同じ成分のフリー体3製剤を使用できることによって、カルニチン欠乏症の患者さんに対し適正な継続投与の選択肢を提供し、治療に貢献するものと期待しています。

  • ※1 有効成分:レボカルニチン塩化物
  • ※2 医薬品の有効性や安全性が医学薬学上公知であるとして、臨床試験の全部又は一部を新たに実施することなく行う承認申請

【参考資料】

「エルカルチン」について

大塚製薬は、「エルカルチン®錠」を1990年に「プロピオン酸血症およびメチルマロン酸血症におけるレボカルニチン欠乏の改善」の効能・効果で承認を受け販売してきましたが、その他の原因によるカルニチン欠乏症に対しての適応症がありませんでした。

2010年10月に日本先天代謝異常学会や日本小児科学会からの効能追加等の要望に基づき、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議※3において、「エルカルチン®錠」が公知申請に該当すると評価され、「カルニチン欠乏症」への適応および用法・用量の変更を行いました。しかし、剤形が錠剤のみであったため、同検討会議からの要請を受け、内用液剤、注射剤の開発を行い2013年2月に発売しました。さらにこの度、内用液剤、注射剤と有効成分(レボカルニチン・フリー体)が同じ新たな2つの錠剤を開発し承認を取得しました。

  • ※3 欧米では使用が認められているが、国内では承認されていない医薬品や適応について、医療上の必要性を評価するとともに、公知申請への該当性や、承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認すること等により、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発促進に資することを目的として設置された検討会議

レボカルニチンについて

レボカルニチンは、食事(肉類、乳製品など)による摂取と、生体内(肝臓、腎臓、脳)での生合成により供給される生体内物質であり、細胞膜に存在する有機カチオン/カルニチントランスポーター(OCTN2)を介して主として骨格筋、心臓、肝臓などの組織に取り込まれ存在します。

細胞内のカルニチンが何らかの原因により欠乏すると、これらのカルニチンの機能が不十分となり肝臓、脳、骨格筋、心筋など種々の臓器で異常が生じ、重篤なカルニチン欠乏症では、低血糖発作による昏睡や高アンモニア血症による脳症、心筋症や筋肉症状などが発症し、生命を脅かす臨床症状を呈し重篤で不可逆的な臓器障害を来します。

カルニチン欠乏症を発現する原因として、先天代謝異常(カルニチントランスポーター異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症など)、後天的医学条件(新生児に対する長期の完全静脈栄養など)や医療行為(透析や薬剤性など)が挙げられます。これらのカルニチン欠乏症のうち、OCTN2が先天代謝異常により遺伝的に機能低下している場合を一次性カルニチン欠乏症と称し、その他先天代謝異常症及び後天的医学条件によるカルニチン欠乏症を二次性カルニチン欠乏症と総称しています。この2つのカルニチン欠乏症に対する補充療法は、米国、イタリア、英国、ドイツ、フランス等では、一次性及び二次性カルニチン欠乏症を適応として承認され、臨床使用されており、安全で不可欠な治療法のひとつとして確立しています。

「エルカルチン®FF錠」の概要について