~長く健康でいるための生活習慣と栄養素~

健康診断

血糖値が高いと言われたら!

健康診断で「血糖値が高いから気を付けて」と言われたものの、何に気を付けて良いのか戸惑っていませんか?まずは、血糖値とは何なのかを知り、血糖値が正常になるように対策をしましょう。

血糖値とインスリンの
働きについて

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度です。食事や飲み物から摂取した糖質は、唾液に含まれる唾液アミラーゼやすい臓から分泌されるアミラーゼなどの酵素の働きにより消化され、小腸から吸収されます。吸収された糖質は、肝臓へ運ばれ、最終的にブドウ糖となって血液中に放出され、 血糖値が上昇します。血糖値が上昇するとすい臓からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖は全身の細胞にとりこまれてエネルギーとして利用されるようになります。エネルギーとして利用されず、余ったブドウ糖もインスリンの働きにより、グリコーゲンや脂肪に変換され、肝臓や筋肉、また皮下組織などに貯蔵され、結果的に血糖値を下げる様に働きます。
この様に血液中のブドウ糖は、インスリンの働きにより全身の細胞でさまざまに利用されていますが、インスリンの分泌が不足したり、分泌されたインスリンが上手く働かなくなったりすると、血液中のブドウ糖を下げる事ができず、血糖値が高い状態になります。

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食べ物の糖分(ブドウ糖等)が血管内に取り込まれ肝臓に運ばれ、その半分が全身に送られる。

このとき血糖値が上がる

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ブドウ糖が血液中に増えたことで、すい臓からインスリンが分泌される。

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インスリンはブドウ糖が細胞の中にとりこまれる様に働きかけ、ブドウ糖の形を変え、貯蔵も行う。

このとき血糖値が下がる

図:インスリンの働き

血糖値が高い状態を
放置するとどうなる?

血糖値が高い状態が続くと、血液の粘度が高くなり、血管内をスムーズに流れ難くなります。その結果、血管が詰まり易くなったり、血液中のコレステロールを変化させたり、血小板を活性化させて血栓を作り易くなり、血管に関係する病気のリスクを高めることになります。また、当然のことですが、血糖値が高いことが診断基準となる糖尿病のリスクが高まります。

厚生労働省がおこなった令和元年(2019年)「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は、成人男性では19.7%、成人女性では10.8%であり、男女とも過去10年で最も高い数値となっていました。
健康診断では空腹時の血糖値を計ることがほとんどですが、食事を摂った後の血糖値が高くなりすぎる場合や血糖値がなかなか下がらない場合も糖尿病と診断される場合があるので、空腹時の血糖値だけで安心できるものではありません。

血糖値が高くなる主な原因

血糖値が上昇する原因を知って注意しましょう。主な原因は次の通りです。

  • カロリーの高い食事、又は食べ過ぎ
  • 飲酒(アルコール)
  • 糖質を多く含む間食や
    清涼飲料水の摂り過ぎ
  • 肥満
  • 慢性的な運動不足
  • 過度なストレス
  • 加齢
  • 遺伝的体質

食べ過ぎや飲み過ぎによる過大なカロリー摂取、甘い物やスナック菓子を食べ過ぎる、運動をほとんどしないといった生活習慣は、高血糖を招く要因となりますので注意しましょう。
また、身体が過度なストレスを感じると交感神経が活発になり、血糖値を上昇させる作用のホルモンであるグルカゴン、アドレナリン、甲状腺ホルモンの分泌が増加します。加齢に伴う身体機能の低下や、すい臓から分泌されるインスリンの量が少なくなったり、上手く働き難くなることも血糖値が高くなる原因となります。

血糖値を過度に高めない為の
食事のポイント

健康診断で高血糖を指摘された方、また、健康診断では問題がなくても血糖値が上がる原因に心当たりのある方は、次のような生活習慣を心がけてみましょう。

1.食べ過ぎず、糖質は控えめに

食べ過ぎるとその分糖質の摂取量も多くなるため、まずは腹八分目を意識することが重要です。特に、糖質を摂取することは直接血糖値の上昇につながるため、白飯、パン、麺類などの主食の量を減らすことで血糖値が上がりにくくなります。しかし、糖質は細胞を働かせるために必要なエネルギー源となる栄養素です。過度に減らしたり主食を食べない様な極端なことはおすすめできません。日中の活動に必要なエネルギー源として、1日3食のうち朝食と昼食は栄養のバランスを考えて、主食もしっかり食べ、夕食では主食を減らすなど、適度に調節すると良いでしょう。また、食物繊維を多く含む玄米やもち麦を白米に加えたり、全粒粉の食材を使用したパンやパスタなどの主食を選ぶことは血糖値を高めない工夫としておすすめです。

2.食べる順番を工夫する

規則正しく食べないと血糖値が安定しません。その食事の中でも「食べる順番」を工夫することで血糖値が上がりにくくなります。最初に野菜から食べることをお薦めします。食物繊維を含む野菜から食べ始めることで、糖質の吸収がゆっくり、おだやかになります。
例えばトンカツ定食を食べる時は、つけあわせのキャベツや小皿の野菜の和え物などを先に食べます。最初に白飯を食べると血糖値が上がりやすいので、できるだけ最後に食べるようにします。「食べる順番」を工夫するだけでも、血糖値の上がり方に違いがあることを知っておきましょう。

3.よく噛んで食べる

よく噛んで食べることで、糖質を分解する酵素である唾液に含まれる唾液アミラーゼやインスリンの分泌も促進されます。少ない食事の量でも満腹中枢が刺激され、満腹感を得る事ができ、食べ過ぎ防止にも役立ちます。
食物繊維が豊富な野菜や海藻を多めに摂ったり、少し歯ごたえのある食材を選んでメニューに摂り入れよく噛んで食べることも血糖値が上がり過ぎない様にするためにおすすめの方法です。

4.飲み物にも注意

ジュースなどの甘い清涼飲料水は多くの糖質を含んでいます。また、健康に良いイメージの野菜ジュースなども、飲みやすい味にするため糖質が含まれている場合もあるので、血糖値を高め過ぎないためにはラベルの栄養成分表示を確認し、飲み物に含まれる糖質の量に注意しましょう。

5.低GI食品の活用

低GI食品とは、食後血糖値の上がりやすさを示す「GI値」が55以下の食べ物のことです。血糖値が気になる方は、健康を維持するためにもなるべく高GI食品を避けて、血糖値の上昇を穏やかにする低GI食品を食事やおやつの選択肢に加えてみるとよいでしょう。

低GI食品の情報をチェック!

栄養教養学部/
炭水化物「Point 低GI食品の効果」

血糖値を上げ過ぎないために

今まで御紹介した様なポイントに注意して毎日摂る食事を工夫することは、血糖値の上がり過ぎを防ぐことにつながります。また、それらに加えて、できるだけ決まった時間に食事をすることも大切です。まずは、糖質中心の食事ではなく、タンパク質や脂質なども含むバランスの良い食事を適量摂取するよう心掛けていきましょう。
また、食事以外にも、適度な運動を取り入れることや適性体重を保つことなども実践してみてください。

出典:厚生労働省 生活習慣病予防のための
健康情報サイト(e‐ヘルスネット)