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肥満につながる!? ソーシャル・
ジェットラグの
身体への影響

睡眠不足や不眠が肥満や高血圧、耐糖能障害の危険性を高めてしまうということはいくつかの報告で明らかになっていますが、体内時計の乱れも肥満などの原因になることも近年分かりつつあります。体内リズムの乱れである「ソーシャル・ジェットラグ」が心身の健康状態に影響を与えることが数多くの研究で指摘されていますので紹介します。

ソーシャル・ジェットラグは、心身の健康状態に大きく影響する

わずか休日2日間の朝寝坊でも容易に生じる体内リズムの乱れは、現代社会に生きるすべての人にとって、他人事ではありません。「ソーシャル・ジェットラグ」という言葉が生まれてから、わずか10年ほどですが、休日の遅起きは心身の健康状態に様々な影響を及ぼすことが、数多くの研究で指摘されています。

肥満やメタボにも?!

ソーシャル・ジェットラグという言葉の生みの親であるRoenneberg教授らは、6万5000人以上のヨーロッパ人のデータから、ソーシャル・ジェットラグ時間が長くなるほどBMI(※8)が高くなるという相関があることを報告しました(※9)。

メタボリック・シンドローム(メタボ)との関係をみた別の研究では、ソーシャル・ジェットラグ時間が長いほどBMIが高いのはもちろんのこと、体脂肪量が多く、メタボ率も高いという結果も報告されています(図4)。

  • BMI( 体格指数)=体重[㎏]÷身長[m]÷身長[m]
  • Curr Biol. 2012 May 22;22(10):939-43.
メタボリックシンドローム

図4ソーシャル・ジェットラグは肥満やメタボに影響

体脂肪量、メタボリックシンドロームとソーシャル・ジェットラグの相関関係

非シフト勤務の男女815人を対象に、38歳時点で評価。「ミュンヘンクロノタイプ質問紙(MCTQ)」で調べたソーシャル・ジェットラグ時間と、BMI、体脂肪量、肥満(BMI>30)、メタボリックシンドローム(日本の診断基準とは1部異なる)の該当率との間に相関がみられた(いずれもP<0.05)。

エラーバーは標準誤差。

(Int J Obes (Lond). 2015 May;39(5):842-8.)

認知機能に影響、成績低下も…

「いつも勉強を頑張っているから、休日くらいは好きなだけ寝かせてあげたい」。そんな親心も、良い結果につながらなさそうです。ソーシャル・ジェットラグ時間が長い学生ほど、講義を受けたあとに受ける習熟度テストの成績が悪いという関連がみられました。

この他にも、体内時計のリズムに合わせて眠ることが日々のパフォーマンスにどれだけ影響を及ぼすのか、詳細に調べた報告もあります。適切な時間帯から約1時間ずれて眠ることで、就寝前と起床後のどちらのテストの成績も有意に悪くなることが示されたのです(※10)。

  • Appl Ergon. 2013 Jan;44(1):109-11.