熱中症からカラダを守ろう

スポーツ時の熱中症 対策と対処法

暑い中では、トレーニングの効果が上がらず、体力も消耗します。熱中症事故防止とともに、効果的なトレーニングという観点で、水分補給や運動スケジュールを考えましょう。また、一人一人の生徒の体調の把握と、気温に合わせた運動強度など、監督者には適切な指導と管理が求められます。

熱中症対策の注意点
  • 環境
    • 環境気温
    • 湿度の高さ、直射日光
    • 風の有無、急激な暑さ
  • からだ
    • 体力、体格の個人差
    • 健康状態
    • 体調、疲労の状態
    • 暑さへの慣れ
  • 行動
    • 運動の強度、内容、継続時間
    • 水分補給
    • 休憩のとり方
    • 衣服の状況や防具の着用

運動する環境には注意しよう

暑い時期の運動は、なるべく涼しい時間を選んで実施するようにします。また長時間運動を続けることは避け、こまめに休憩をとりましょう。(環境条件にもよりますが少なくとも30分に1回程度を目安にします。)

脱水のチェック方法例
  1. 1体重
    慢性的な脱水状態を評価するためには、毎朝、起床直後の体重を測定し、自身の体重のベースラインから大幅な変動がないかを気をつけます。一過性の脱水を評価する場合には、運動前後で体重を測定し、体重減少量が脱水量とほぼ同等であると評価します。体重測定の前には毎回排尿し、体重計に乗る際には衣類の重さも考慮し測定するようにして下さい。また、運動中の飲水量をメモしておくことが勧められます。アメリカスポーツ医学会の基準では、体重減少率が1%以上から脱水としています。
  2. 2尿
    尿の色の濃さによって脱水状態を簡易的に評価することができます。尿の色が、カラーチャートの4以上の濃さの場合には、脱水状態であると予測されるため、ただちに適切な水分補給が必要となります。
    出典:Armstrong L E . Performing inextreme environment. Human Kinetics, 2000.
  3. 3
    手の爪を白くなるまで圧迫してから解放し、爪の色が元に戻るまでの時間が2秒以上だと脱水状態であると判断されます。測定の際には、爪を心臓と同じ高さに維持して行う必要があります。
  4. 4皮膚
    脱水になると皮膚の弾力性(ツルゴール)が低下します。前腕や手背の皮膚を指でつまみ、解放した時の皮膚のもどり具合で脱水状態と評価することができます。通常は、0.5秒ほどで元に戻りますが、元に戻る時間が1秒を超えたら脱水を疑う必要があります。

水分補給をきっちりと

汗をたくさんかいたときは、失われた水分とともに塩分(ナトリウム)を補給するようにしましょう。

日本スポーツ協会が推奨する飲料

  1. 15~15℃に冷やした水を用いる
  2. 2飲みやすい組成にする
  3. 3胃にたまりにくい組成および量にする

補給する飲料の中身としては、0.1~0.2%の食塩[食塩相当量が0.1~0.2g(100ml中)であれば、0.1~0.2%の食塩水に相当]と糖質を含んだものが効果的で、一般のスポーツドリンクが利用できます。ただし、余り糖質濃度が高くなると胃にたまりやすく好ましくありません。エネルギーの補給を考慮すれば、4~8%程度の糖質濃度がよいでしょう。また、補給する際は汗で失った水分量を補給することが理想的です。運動前後に体重を測ることで、汗で失った水分量を把握できます。

新しい熱中症対策に期待、深部体温に着目した飲料

暑熱環境下や防具等の着用で汗の蒸発による体温調節ができない状況では、カラダに熱がこもりやすくなります。水分・塩分補給に加えて、活動前に体の内部の温度(深部体温)をあらかじめ下げておくことが大切です。近年では、深部体温に着目し、カラダの内側から冷却する方法としてアイススラリーが用いられることがあります。深部体温を速やかに低下させることにより熱中症リスクの軽減が期待できます。

  • アイススラリーとは、液体と微細な氷が混ざりあった飲料です。アイススラリーは低温で流動性が高く、氷が水に溶ける際に体内の熱を多く吸収することができます。そのため、アイススラリーの摂取は水よりも冷却効果が高く、有用な暑熱対策の一つと考えられています。

暑さに徐々に慣らしていきましょう

急に暑くなったとき、身体が暑さに慣れるまで1週間程度はかかります。また運動強度が強いほど熱の発生が多くなり、熱中症の危険性も高くなります。身体が暑さに慣れないうちは激しい運動は避け、軽めで短時間の運動をすることで徐々に身体を慣らしていきましょう。しばらく運動を中断して再開したときも同様です。

できるだけ薄着にし、直射日光を避けましょう

暑いときは、吸湿性のある素材や通気性のよい衣服を選択するようにします。炎天下で運動する場合は、帽子をかぶり直射日光を避けましょう。

暑さに弱い人は特に注意しましょう

暑さに弱い人は特に熱中症を引き起こしやすいため、いきなり無理な運動をしないようにしましょう。また肥満傾向にある人は熱中症発症者の多くを占めており注意が必要です。

具合が悪くなったら、早めに申告・運動中止

少しでも体調が悪くなったら、自分の状態を周囲に伝え、運動を中止しましょう。監督や指導者は競技者の疲労の度合いの把握につとめ、少しでも様子の変化があれば運動を中止させ応急処置をとるようにしましょう。
特にランニングやダッシュの繰り返しは熱中症の原因になることが報告されており注意が必要です。熱中症の重症化を防ぐためには早期発見、早期対応が非常に重要です。

身体冷却をしよう!

暑熱下のスポーツ活動時では積極的に身体冷却を実施することが重要です。実際に身体冷却を実施するには、❶冷却方法、❷タイミング、❸冷却時間を考慮して行うとよいでしょう。これら3つの変数の組み合わせによって、得られる効果が異なります。
冷却方法は大きく2つに分けることができます。皮膚などの身体の外部から冷却する身体外部冷却と、冷たい飲料などを摂取し身体の内部から冷却する身体内部冷却とがあります。最近は氷と飲料水が混合したシャーベット状の飲料物であるアイススラリーの摂取が注目されています。スポーツ飲料でアイススラリーを作ると、身体冷却に加え、水分、電解質、糖質も同時に補給できるので効果的な方法といえます。

冷却のタイミング

冷却のタイミングは、活動前(プレクーリング)、活動中、休憩時、活動後に大別できます。プレクーリングはあらかじめ運動前に体温を低下させておけば、運動中の体温の許容量(貯熱量)を大きくでき、活動時間を延ばそうとするものです。運動中や休憩時の冷却は、体温や筋温の過度な上昇を防ぎ、疲労感や暑さなどの主観的な感覚を和らげます。また活動後の冷却は、上昇した体温や筋温による疲労の軽減、筋損傷や炎症反応を抑えることができます。いつまでも体温上昇が続くと余分なエネルギーを消耗してしまうため、身体を冷却することで、リカバリー効率の向上につながります。

参考:日本スポーツ協会発行「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019 改訂)

出典:日本スポーツ協会発行「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019 改訂)

学校における指導のポイント
  • 直射日光の下で、長時間にわたる運動やスポーツ、作業をさせることを避ける
  • 屋外で運動やスポーツ、作業を行う時は、帽子をかぶらせ出来るだけ薄着をさせる
  • 屋内外に関わらず、長時間の練習者作業の際は、こまめに水分・塩分(ナトリウム)を補給し、適宜休憩を入れる
  • 常に健康観察を行い、児童生徒などの健康管理に留意する
  • 児童生徒などの運動技能や体力の実態、疲労の状態などを常に把握するように努める
  • 児童生徒などが心身に不調を感じたら申し出て休むように習慣づける

熱中症予防ガイドブックは以下のページからダウンロードいただけます。

シーン別の対策と対処法