PAD:手足の変化に気をつけて

PADの予防・治療方法

足の生活習慣病である、PADを予防しよう

PADの危険因子は、動脈硬化の原因となりやすい、喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症などです。ですから、PADを予防するには、これらの病気を予防または治療すること、禁煙を心がけることなどが大切です。
また、PADを重症化させないためにも危険因子はなるべく避けるようにしましょう。

PADの患者さんは、高血圧や糖尿病、高脂血症などにかかっていて、喫煙歴のある高齢の人に多いといわれます。
ですから、PADを予防するには、高血圧・糖尿病・高脂血症を予防または治療すること、禁煙を心がけることなどが大切です。
また、足の血行を良くするという意味から、ウォーキングなどの適度な運動を習慣づけるのも良いでしょう。

4つの治療方法

PADには大きく分けて、薬物療法、理学療法、血管内治療を含めた手術という4つの治療法があります。

PADの治療は、まず、動脈硬化の原因となりやすい病気である高血圧や糖尿病、高脂血症などがある場合は、その治療を徹底します。
それとともに病気の進行度や患者さんの状態にあわせて、抗血小板薬や血管拡張剤などの薬を使った治療のほか、人工血管や自分の静脈を用いてバイパスを作る手術や狭くなっている血管をバルーン(風船)やステント(金属の網状筒)をつかって広げる治療などが行われます。

間欠性跛行のある患者さんの場合は、少し歩いたのち、足が痛くなる前に歩くのをやめ、しばらく休んでからまた歩くという運動療法も効果的です。

薬物療法

まず、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、禁煙に努めることで、喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病、ストレス、肥満などの動脈硬化の危険因子をコントロールしていきます。
それで改善されない場合は、抗血小板薬などを使った薬物治療が行われます。

動脈硬化が進行している場合は、バイパスを作る手術や、狭くなっている血管をバルーン(風船)をつかって広げるカテーテル治療などが行われます。

薬物療法は最も基本的な治療法で、軽症から重症にいたるまで重症度と目的に応じて活用することになります〔表4〕。

〔表4〕重症度と使われる薬剤の例

重症度 目的 使われる薬剤
軽症(冷感、しびれ感など)
  • 虚血症状の改善
  • 心筋梗塞や狭心症などの将来の血管系合併症を予防
抗血小板薬
中等症(間欠性跛行) 抗血小板薬+血管拡張薬
経皮的血管形成術・ステント留置術の術後
  • 再発予防
抗血小板薬、抗凝固薬
重症(虚血性潰瘍例)
  • 保存的な治療
抗血小板薬、抗凝固薬、血管拡張薬

下の表〔表5〕は、PAD治療に使用される主な薬剤で、その作用は薬剤によって違います。

〔表5〕主な治療薬一覧

治療薬 主なはたらき
抗血小板薬
抗血小板薬関連薬
動脈の詰まりの原因となる血小板のはたらきを防ぐ作用があり、血液の流れをよくする。
抗凝固薬 血液が固まるのを予防して、血液の流れをよくする。
末梢血管拡張薬 血栓を作りにくくする作用と、血管を拡張して血液の流れをよくする作用をもつ。

理学療法(運動療法)

医師の監視下で、速歩や軽いジョギングなどの筋肉運動をすることにより、血流を迂回させる別の道(側副血行路(そくふくけっこうろ))を発達させ、足への血流を増加させる治療法です。間欠性跛行の改善に有用な方法です。保健適応が認められました。

バイパス手術(外科的手術療法)

狭くなったり詰まったりした動脈の先に血液が流れるように、人工血管や患者さん自身の血管を用いて血管をつなぎあわせ、詰まった場所を迂回する別の道(バイパス)を作ります〔図4〕。

血管内治療(バルーン、ステント留置術)

血管造影の手技を用いて、カテーテルと呼ばれる管で血管病変を治療する「血管内治療」が発達してきました。狭くなったり詰まった血管の部分に風船(バルーン)のついたカテーテルを入れて、風船を血管の中からふくらませて血管を拡げます。
風船だけで十分な効果が得られないときは同時にステントという金属の筒を血管に入れることがあります〔図5〕。
治療は約1~2時間で終了し、治療当日はベッド上での安静が必要ですが、翌日からは歩行できます。入院期間も数日と短いため、外科的手術に比べて患者さんの負担は非常に少ないと言えますが、適用できる範囲に制限があります。

〔図4〕バイパス手術
再建前(左)再建後(右)
写真提供:重松 宏
〔図5〕ステント留置術
ステント留置前(左)ステント(中央矢印)ステント留置後(右)
血管内治療の方法

細い管(カテーテル)を血管の中に通し、狭くなっている血管まで送り込みます。目的の位置に到達したら、バルーン(風船)を膨らませて、血管を広げます。血管が広がったら、ステントと呼ばれる金属製の網状の管を入れて固定し、再び血管が詰まるのを防ぎます。これが血管内治療です。
所要時間は30分程度で、傷口も小さくてすみ、患者さんの負担も少ないので、カテーテル治療は現在、外科的治療の主流になっています。

バルーンで血管の狭くなっている部分を広げ、その後ステントをバルーンに乗せたカテーテルを挿入します。

バルーンを膨らませてステントを広げます。

バルーンをしぼませてカテーテルを抜き、ステントを血管内に固定します。