栄養教養学部 / エネルギー源学科

脂質

脂質を多く含む食品

  • 油脂類
    オリーブオイル

    オリーブオイル

  • ごま油

    ごま油

  • アマニ油

    アマニ油

  • サラダ油

    サラダ油

  • バター

    バター

  • 肉類
    牛肉

    牛肉

  • 豚肉

    豚肉

エネルギーとして、
欠かせない
栄養素ですぞ

1日の摂取目標量:
30歳〜49歳
身体活動レベルふつう
1日の摂取推奨量:男性女性ともに
1日のエネルギー量の20~30%

※「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より
※一日に必要なエネルギー量は性別・年齢・身体活動量によって異なります
例)1日の活動量がデスクワーク中心の仕事をしていると仮定した場合、30〜49歳の女性の場合で推定エネルギー必要量は1日2050kcalです。
その25%は512.5kcal。脂質は1g=9kcalなので、512.5kcal÷9kcal= 56.9gが脂質の摂取目標量となります。

脂質の性質と働き

脂質は炭水化物、タンパク質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつであり、1gあたり約9kcalとタンパク質や糖質の約2倍のエネルギーをつくり出す、効率のよいエネルギー源です。また、細胞膜やホルモンの構成成分として重要な栄養素で、脂溶性ビタミンの吸収を助けたり、体温の保持、内臓の保護をする役割があります。
脂質を構成している「脂肪酸」は、肉や乳製品の脂など常温で固体の飽和脂肪酸と、植物や魚の油など常温で液体の不飽和脂肪酸に分けられます。
不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸があり、多価不飽和脂肪酸には体内で合成できないn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)、 n-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)があります。この二つは必須脂肪酸と呼ばれ、食事からの摂取が不可欠な栄養素です。

脂肪酸の種類

脂肪酸

飽和脂肪酸
常温で固形

バター、ラード、牛・豚の脂など

不飽和脂肪酸
常温で液状
一価不飽和脂肪酸
人体で合成できる
多価不飽和脂肪酸
(必須脂肪酸)
人体で合成できない
n-9系脂肪酸(オメガ9)
オレイン酸など

オリーブオイル、なたね油など

n-6系脂肪酸(オメガ6)
リノール酸など

ごま油、紅花油など

n-3系脂肪酸(オメガ3)
EPA・DHAなど

魚油(フィッシュオイル)など

血液サラサラ、
動脈硬化などの予防にも

脂肪酸の中でもn-3系脂肪酸はアレルギー疾患の予防に役立ち、血液をサラサラにして血栓を予防したり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を予防する働きが期待されています。さらに糖尿病、乳がん、大腸がん、肝がん、加齢黄斑変性症の予防や、最近では認知障害やうつ病に対しても予防効果を示す可能性があり注目されています。
「脂質」と聞くと、脂肪を連想して太りそう、体に悪そうだと敬遠されてしまいがちですが、質のよい油は生活習慣病の予防につながり、健康状態をよくすることに役立ちます。量より質を意識して、毎日の食事に魚、アマニ油を摂り入れるのがおすすめです。

摂取のポイント

n-3系脂肪酸、 n-6系脂肪酸は必須脂肪酸であるため、食事で摂り入れる必要があります。 DHA・EPAを多く含む旬の魚を食事に摂り入れるなど工夫してみましょう。
脂質は調理に使う油や調味料だけでなく食材自体にも含まれます。摂り過ぎが気になる場合は蒸す、煮るなどの調理法にすれば油の摂取を減らすことができます。また、摂り過ぎた脂質の吸収を抑える働きのある食物繊維を豊富に含む野菜や海藻、きのこ類を積極的に摂取するのもよいでしょう。

脂質の一種であるコレステロールは体に良くないイメージがあるかもしれませんが、細胞膜やホルモン、胆汁酸の生成に必要不可欠な物質です。しかし、コレステロール値が高くなりすぎると動脈硬化が進み、放置すると脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。
血液中のコレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがあります。増えすぎると動脈硬化を起こすため「悪玉コレステロール」といわれています。HDLコレステロールは余剰なコレステロールを回収し肝臓に戻す働きからコレステロールの掃除役とされ、「善玉コレステロール」といわれています。
脂質異常症にならないためにはLDLコレステロールを増やしすぎないよう、バランスのよい食事をすることが大切です。食物繊維や豆類など、コレステロール値を下げる食材を積極的に摂るよう心がけましょう。

摂取の注意点

摂取不足

現代の食生活では脂質は不足しにくいといわれています。しかし、不足すると、ホルモンバランスの乱れ、エネルギー不足、体力低下、皮膚炎、脳出血を引き起こす可能性があります。

過剰摂取

脂質はエネルギー量が多いため、摂り過ぎるとエネルギー過剰となり、肥満になるおそれがあります。また、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病、糖尿病、大腸がん、乳がん、前立腺がん、冠動脈疾患のリスクが増加します。調理に使う油に気を付けていても、食品中に含まれる脂質で摂りすぎてしまうことがあるので注意しましょう。

妊娠中、授乳中の方へ

非妊娠時と同様に、摂りすぎないように注意してください。必須脂肪酸であるn-3系脂肪酸は約1.9g、 n-6系脂肪酸は約9gを目安に摂取することを心がけてください。