こんにちは。
ランニングサポーターの久保です。
私は中学から実業団まで陸上競技を続けてきましたが、メインの大会はというと400mトラックで行われるレースでした。例えば、中学では3000m(当時ベスト9分19秒)、高校では5000m(当時ベスト14分17秒)、大学では10000m(当時ベスト29分08秒)、実業団では5000m(13分57秒)と10000m(28分40秒)
と、年齢を重ねるごとに走る距離が伸びていきます。この記録を伸ばすことが進学や進路へ大きく影響してきますし、ランナーとして認められるための指標となります。さらに年1回行われる最大のイベント "駅伝" を目標に最高のパフォーマンスができるよう日々トレーニングしてきました。トラックでスピード磨き、強い体を養い、駅伝で精神力と駆け引きを学びます。
駅伝という競技は1人がよい成績で走ったとしてもチームとして結果に結びつくとは限りません。レースの流れがとても大事です。もしチームメイトがブレーキをしたとしても、後続の走者が快走すれば流れが変わり、巻き返すことも可能です。次の走者に少しでも早くタスキを渡したい、次にも走る仲間が待っている、これまでタスキを繋いでくれた仲間の分までという大きな思いが走りを後押ししてくれるんです。1人で走るときよりプレッシャーが大きく伸し掛かりますが、それに打ち勝ってこそ1人では味わえない仲間との大きな喜びがあると言ってもいいでしょう。そんな駅伝から私はたくさんのことを学びました。
集中力、冷静さ、積極性、相手の力を借りて走るエコ走法、粘り力、責任感、勝負感、自分の体や他選手の状態を見極める力、爆発力、駆け引き…などなど。特にアンカーを走ることの多かった私は、自分のゴールがチームの順位になりますから責任重大です。よくテレビで、後ろから迫ってくるランナーに対して必死に逃げるランナーを見かけます。また大きな団子集団で残り1kmを過ぎても誰もラストスパートをかけないかと思いきや、残りわずかになったとき短距離走のようなスパート合戦で胸差で順位が決まったりもします。最後にこれだけ力が余っているのならもっと走れるのではないかと思いがちですが、アンカーはあくまでも順位なのです。実業団ほどのレベルになると選手同士の力は均衡していますから、レース中盤でスパートをかけようものならいいペースメーカーとして利用され、最後にスパートされて突き放されてしまいます。周りの選手の息づかいや疲れ度合いを常に観察し、いつスパートをかけられてもいいように位置取りを気にしながら力を溜めておかなければなりません。もちろん、順位を上げるべく前を追うことも大事です。集団がスローペースになると後方のランナーから追い付かれてしまうということもあります。そのときそのときの状況において的確な判断をしなければならないのが駅伝なのです。これまでチームが秒差で負け、悔しくていっぱい泣いたこともありました。逆にチーム一丸となって掴んだ勝利に嬉しさでいっぱい泣いたこともあります。それだけ駅伝には筋書きのないドラマが待っており、走るものも走らないものも、応援する人さえ心を熱くさせるんです。これらの経験は今でも個人のレースにおいてとても役立っています。
1人だと弱い自分が出てしまうことが多々ありますが、駅伝となると先にも後にも仲間が自分を信じて待っていますから、どんな状況であれ今自分がもてる100%の力を最後の最後まで、タスキを渡すまで出し切ろうと頑張ります。走り出してしまえば孤独だ、誰からも助けてもらえないという印象があるかもしれまんが、実は全く1人ではありません。仲間の思いが自分をゴールまで導くのです。これは一緒に走っているようなものです。これほどたくさんものランナーに必要な経験を短時間に得られることはあまりないでしょう。もし1人でなかなか練習ができなかったり伸び悩んでいる方がいたら、チームを組んで駅伝に出てみてはどうでしょう?メンバーに迷惑がかかるなんて思うかもしれません。しかし、閉ざしていた自分の扉を開き開花させるチャンスですよ。
この時期になると高校、大学、実業団の駅伝が本格化します。タスキを繋ぐだけでなく、思いを繋ぐ駅伝に注目してみてください。ひた向きに頑張る選手たちからたくさんのことをもらえるはずです。悔しさと喜びは表裏一体。その経験が選手たちを一回りもふた回りも成長させることでしょう。