齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.04名前を呼ぶのは、
言葉のない愛情表現。
呼べば呼ぶほど、好感度が増し、幸せが増えていく。

最近は、個人情報の問題があって、病院等でも待合室で名前を呼ばれることが少なくなったが、
「〇〇〇子さ~ん」と、自分のフルネームが呼ばれると、呼ばれることがわかっていてもドキッとする。自分の名前からは、特別な波動が伝わってくるものなのだ。言うならば電流のように一瞬で。だから人と人との関わりの中でも、とても重要な役割を持つのが、じつは名前。お互いの名前なのだ。

友人に、いつもいつもたくさん名前を呼んでくれる人がいる。「おはよう、〇〇ちゃん」「〇〇ちゃん、その服可愛いね」「お腹すいたね、〇〇ちゃん」「寒くない?〇〇ちゃん」「〇〇ちゃん また会おうね」という具合。その女性は、同性にも異性にも本当によくモテる。理由の1つは、紛れもなく相手の名前を軽やかにでも人懐っこく呼ぶことなのだ。

“人たらし”という言葉があるけれど、彼女はまさしく人たらし。名前を呼ばれるたびに、相手が自分の中に入ってくるような、独特な親近感をもたらすからこそ、それがそのまま好感度の高さにつながっていくのだろう。言いかえれば、お互いの波動が共鳴し合うから、相手にたちまち心を吸い寄せられてしまうのだ。

初対面ではなおさらだ。交換したばかりの名刺に書かれた名前を、もうずいぶん前から知っている友達のように親しげに何度も呼ぶ、そういう人は紛れもなく相手に強い印象を放ってくる。この人好き、思わずそう思ってしまうほど、強い好感を与えてくる。そして、とても自然に相手にとって忘れがたき存在になっているのだ。
つまり仕事においても、すぐに相手の名前を覚えて、すぐにそれをコミュニケーションに使える人は、紛れもなく成功できる人。人付き合いの絶対のコツとも言える。

それはひとえに、自分の名前が呼ばれることによる、電流が流れるような快感。自分の名前には言霊が宿るからなのだ。呼ばれるたびに明かりがぽっと灯るような暖かさを感じるのもそのため。自分の名前には、心を温めるエネルギーが秘められているのである。

全く逆の作用もあって、例えば人が人を叱る時に「〇〇さん、あのね……」と開口一番、名前が呼ばれると、その内容がとりわけ重くズシンとのしかかって、叱られたことも、その教えもいつまでも忘れないもの。おそらく名前を呼ばれることによって、語られる内容が重く強く刻み込まれる仕組みになっているのだろう。

とすれば、赤ちゃんの時から家族が〇〇ちゃん、〇〇ちゃんと、いつも名前を呼びながら、大切なことを教えていたり、良いことをしたら褒めてあげていたりすることが、素直な良い子を育てる秘訣、そんなことも言えるのではないだろうか。

家族の中でも、お互いの名前をいかに愛情を持ってまろやかに呼び合えるのか、それだけで関係がまるで変わってくるはず。幸せな家族の証と言ってもいいほどに。

人の名前は、ただの名前じゃない。言葉のない、愛情表現だったりするくらい、大切なメッセージなのだ。毎日一緒の人から、初対面の人まで、出来るだけたくさん名前を呼びたい。心を込めて、丁寧に呼びたい。愛されるため、幸せのため。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『だから“躾のある人”は美しい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 セカンドステージ 63の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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