齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.07ハイブランドのバッグは、
幸せの手段に
なり得るのだろうか?

ハイブランドのバッグが欲しい……それはもう理屈抜き、一つの本能だという言い方がある。確かに、なぜ欲しいの?と聞かれても、なかなかズバリの答えが見つからない。だから「本能」という言葉にしてしまう方法はあるのだけれど、その奥に潜む理由は人それぞれ違うはず。そこで今、自分の場合はどうなのかを見つけてみたいのだ。バッグと幸せとの関係を知るために。

それというのも、“欲しくない人”に言わせれば、持っているだけで自慢になる、そういう見栄って、本当に幸せにつながるの?と、そこからして不可解なはずだから。
もちろん、ここには決定的な価値観の違いがあるわけで、お互いの気持ちなど理解できるはずがない。でもだからこそ、双方の見方を知ることで、バッグがもたらす真の幸せはどこにあるのか、本気で探ってみたいのだ。

まず、多くの人が口にするのは「自分へのご褒美」という位置付け。そういう言い方をすること自体に、ちょっとだけ後ろめたさが覗くのは、自分には背伸びの買い物という意識があるからだろう。ただそのくらい、理屈抜きに欲しいもの、本能の願いだから、“ご褒美”と称して、自分にそれを許してあげるという方程式。
従って、純粋にご褒美と思える人にとって、ブランドバッグは100%幸せの材料となる。所有できることが幸せ、そういう発想は、だから決して間違ってはいないのだけれど、ブランドバッグの落とし穴は、毎年毎年新作が出てしまうこと。“去年もの”、“おととしもの”となったら喜びも幸せも半減する。いやむしろ、高額の分だけ不幸感が増すのだろう。

毎年の新作を自分へのご褒美にできるのならば、何も言うことはないし、1年使ったら売ってしまうという選択もあるわけだが、ご褒美はやはり、長く持てる定番にするべきだ。
ちなみに今は、リースと言う手段もあるけれど、それはご褒美と言うよりは、やっぱり見栄。常に新作を買っているふりは、ちょっと虚しい。それより高額でも永遠の定番を手に入れて、大切に大切に使いこなしていくことに、本当の幸せが宿ると考えたいのだ。
それこそ、丁寧に保管することで、物への愛着がどんどん湧いていき、幸福感もみるみる増してくる。良いモノと人間の関係は、熟していくほど人を幸せにするものなのだから。

もう一つ、ハイブランドのバッグを幸せにつなげるテクニックは、出かけるのが憂鬱な日ほど、自慢のバッグをもっていくこと。
そもそもバッグは女性にとって、単なる持ち物ではなく、逆に自分をエスコートしてくれる大切な支え。考えてみてほしい。女性はバッグなしで手ぶらで外を歩くと、なんだか心もとなく、不安定な歩き方になりがち。バッグはまるでパートナーの腕のように、女性をリードしてくれていたのだ。

さらに言えば、大好きなバッグを持つと、それだけで出かけていくエネルギーが沸き上がるもの。ましてや一番自慢のご褒美バッグだったら、どんなに気が重くても、背中を押し、腕を引っ張るように、外に連れ出してくれるのだろう。それこそがブランドバッグの醍醐味なのだと私は思う。クローゼットに飾っておくのは、なんだか不健全だ。

ちなみに、ブランドバッグに興味がない人は、その分を他のモノや体験に費やすことに幸福感を覚えるのだろう。ノーブランドでも充分素敵なバッグを探すことに、喜びを見い出しながら。

どちらにせよ、バッグは女性にとって特別なもの。バッグなしでは上手に歩けないほど。であるならばバッグにしかもたらせない幸せもあるはず。自分なりの幸せの形を見つけて、バッグ選びに生かしたい。ハイブランドのバッグが、欲しい人も、別に欲しくない人も。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『だから“躾のある人”は美しい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 セカンドステージ 63の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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